目覚し鉄拳野郎 ~ クリスマス編 ~
世の中は12月。そう、街はクリスマス一色に染まる。
そんな中、この世の終わりが来るような表情を浮かべて街を歩く男は決して少なくない。
「ああ…、今年も寂しいクリスマスか…。街のカップルが羨ましいよなぁ…」
そうぼやく彼も、その一人である。
「はぁ…俺って寂しい男だよなぁ…。去年も一昨年も一人だったし、だからクリスマスって嫌いだよ…」
更に彼はとぼとぼと歩く。
だが!
「…それでいいのか?」
「は?」
後ろから何者かに声を掛けられ、振り向いた瞬間彼が見たものは、一人の男の姿だった。ぼさぼさに伸ばした髪に巻かれたボロボロの赤鉢巻。冬だと言うのに黒のタンクトップと深緑色のアーミーパンツ。そして無駄に燃えているその瞳!
その男は突如拳を握り締めた!
「目を覚ませっ!!」
唸る男の鉄拳!!
その拳が彼の顔面を捉えた!!!
殴られた瞬間、彼の脳裏に男の魂のメッセージが流れ始めた!
(…これは…! この男の拳を通じて彼の魂の叫びが伝わってくる…!!)
『男の価値は、彼女とクリスマスを過ごしたかどうかで決まるものではないっ!!』
派手に吹き飛ばされながら、彼は叫んでいた。
「あ…ありがとうございましたあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!」
男は彼の感謝の言葉を聞き終えると、踵を返し、その場を去った。
目覚めた彼の瞳は何故か燃えていた。
「ならば…この一人のクリスマス…子供たちを喜ばせる為に奉げようかぁっ!!」
起き上がった彼は、サンタクローズの衣装を求めに足を進め始めた。
もはや、嘆いていた彼は死に、使命に燃える彼の姿がそこにあった!
嘆く彼を鉄拳で目覚めさせたその男!
彼の名前は『前岳 進(まえだけ すすむ)』!
人は彼を…『目覚し鉄拳野郎』と呼ぶ!!
だが良い子は真似をするなっ!!
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クリスマスを題材に書くつもりが、なんだか訳の解らないキャラクターを生んでしまいました(自爆)