GTX660-DC2T-2GD5
メーカー:
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
メーカー想定売価:3万円前後(※2012年9月13日現在,発売日未定)  日本時間2012年9月13日22:00,NVIDIAは,Kepler世代のデスクトップPC向けGPU新製品「GeForce GTX 660」(以下,GTX 660)および「GeForce GTX 650」(以下,GTX 650)を同時発表した。製品型番からも分かるとおり,いずれも,先日登場した「」(以下,GTX 660 Ti)の下位に位置づけられる製品となる。

 GeForce GTX 600シリーズの最下位モデルとされるのレビューは後日あらためて行うことにして,本稿では,GTX 660がどういったスペックの製品で,市場においてどう位置づけられるべきか,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)から入手した搭載カード「GTX660-DC2T-2GD5」を通じて見ていきたいと思う。

GPUコアは960 CUDA Core仕様の「GK106」メモリ周りはGTX 660 Tiとまったく同じ
GTX 660のタグライン(≒キャッチコピー)は「The Weapon of Choice for Gamers」(ゲーマーが選ぶべき武器) GTX 660 GPU(=GK106)。ダイ上の刻印は「GK106-400-A1」だ。デジタルノギスを用いたダイサイズ実測値は16.46(W)×13.62(D)mmだったが,公称のダイサイズは214mm2なので,実際の各辺はもう少し短いと思われる でお伝えしたとおり,GTX 660 Tiは,「」などと同じく,「GK104」コアを採用し,一部機能を制限してきた製品だった。「660」というミドルハイクラス“中の上”的な雰囲気を持った型番でありつつも,実際には“上の下”だったわけである,リネージュ2 RMT

 それに対して今回発表されたGTX 660は,Kepler世代の新しいGPUコア「GK106」を採用するのが大きな特徴だ。「」(や,今回同時発表されたGTX 650)で採用される「GK107」コアと,GK104コアの間に置かれるという意味では,Kepler世代における真のミドルクラスGPUコアを採用してきたともいえるだろう。

 そんなGK106だが,KeplerアーキテクチャのGPUということで,基本構造はGK104と同じだ。192基のCUDA Coreが,L1キャッシュやテクスチャユニット,ジオメトリエンジンたる「PolyMorph Engine 2.0」などと一緒に「Streaming Multiprocessor eXtreme」(以下,SMX)を構成している点は完全に共通である。
NVIDIAが示しているGTX 660のリファレンススペック。念のため付記しておくと,とはまったく異なる  では何が違うのか。それは下に示したブロック図を見てもらうのが手っ取り早いだろう。下のブロック図はNVIDIAが「GK106のフルスペック」として公開しているものだが,“ミニGPU”として扱われる「Graphics Processing Cluster」がGK104の4基からGK106では3基となり,さらにGPCを構成するSMXの数が合計5基になっているのだ。
 GTX 660はGK106のフルスペックなので,CUDA Core数は192×5で960基。SMXあたり16基のテクスチャユニットが搭載されるため,テクスチャユニットの総数は80基という計算にもなる。
GK106のブロック図
 一方,L2キャッシュ容量が384KBである点や,8基1セットのROPパーティションを3基用意する点,64bitメモリコントローラを3基搭載して192bitメモリインタフェースを実現する点,メモリクロックが6008MHz相当(実クロック1502MHz)で,メモリバス帯域幅が144.19GB/sとなる点は,GTX 660 Tiと完全に同じ。なので,GK104かGK106かというGPUコアの違いを無視すれば,GTX 660は「GTX 660 TiからSMXを2基削減したモデル」と言うこともできるだろう。

 組み合わせられるグラフィックスメモリ容量もGTX 660 Tiと同じく最大2GBだが,192bitインタフェースで2GBという構成に疑問を持つ人もいるだろう。
 この点だが,レビュワーズガイドによると,3基あるメモリコントローラを,


と役割分担することで,2Gbit品のメモリチップ8枚による合計容量2GBを実現しているという。

GTX660-DC2T-2GD5は,Samsung Electronics製のGDDR5チップ「K4G20325FD-FC03」(6Gbps品)を搭載していた。これは「」のリファレンスカードに搭載されていたものと同じだ  3基のメモリコントローラはグラフィックスメモリを容量512MB×3のブロックに分けてフレームバッファ用として用いる。そして,残る512MBは,必要に応じて別途,1.のメモリコントローラから64bit(=16bit×4)アクセスさせることで,容量2GBを使い切るうえでのレイテンシを最小化しているのだそうだ(※競争上の理由から,これ以上の解説は行われていない)。
 GTX 660とGTX 660 Tiでは,192bitメモリインタフェースを採用するため,Keplerアーキテクチャの弱点であるメモリ周りの弱さが上位モデルよりも顕在化しやすい。そのため,こういったアクロバティックな手段によって搭載できるグラフィックスメモリ容量を増やしつつ,少しでも性能低下を防ごうとしているということなのだと思われる。
PCI Express補助電源コネクタは6ピン×1仕様だ  気になるTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は140W。GPU Boostに用いられる「想定される消費電力」の値である「Power Target」は,少なくともGTX660-DC2T-2GD5だと上限が110%となっている。GTX 660の場合,PCI Express補助電源コネクタは6ピン×1なので,仮にPower Targetの110%という設定値が電源仕様上の制約によるものだとすると,Power Targetの100%は136Wということになるだろう。

 そんなGTX 660の主なスペックを,従来製品や競合製品と比較したものが表1だ。GTX 660の動作クロックはコア980MHz,ブースト1033MHzで,いずれもGTX 660 Tiより高い。

 ちなみに,25?000万トランジスタを214mm2というダイサイズに埋め込んできたGK106は,35儱去楗螗弗攻郡?94mm2に詰め込んだGK104と比べると,トランジスタ数,ダイサイズとも約73%となる。その規模感からすると,おそらくGK106コアは6基のSMXを搭載しており,歩留まり向上(≒コスト低減)のためにフルスペックを5基ということにしているのではなかろうか。


GTX 660 Tiから短くなったカード長PCI Express補助電源コネクタは1基に
GTX660-DC2T-2GD5の出力インタフェースはDual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×1,DisplayPort×1,HDMI×1。リファレンスどおりである  ここで,入手したGTX660-DC2T-2GD5をチェックしておこう。
 本製品はASUS独自のGPUクーラー「DirectCU II」を搭載した製品で,「TOP」や「DC2T」といった略称でよく呼ばれる,オリジナル基板採用のクロックアップモデルだ。
 動作クロックはコア1072MHz,ブースト1137MHz,メモリ6108MHz相当(実クロックとなっており,リファレンスクロックと比較すると,順に約9%,約10%,約2%引き上げられた計算になる。
GTX660-DC2T-2GD5は大型のDirectCU IIクーラーを搭載
GTX660 Ti-DC2T-2GD5と並べてみたところ。カードの全長は若干短いが,基板長はむしろ長くなった  カード長は実測約257mm(※突起部除く)で,同じDirectCU IIクーラーを搭載したASUS製GTX 660 Tiカード「」の同266mmと比べると,若干短い。ただ,2連ファン&2スロット仕様のGPUクーラーが基板後方へはみ出ているのはGTX660 Ti-DC2T-2GD5から変わらずだ。また,基板自体の長さはどういうことか,GTX660 Ti-DC2T-2GD5の同232mmから同250mmへと,18mmも長くなってしまった。
 ちなみにNVIDIAのリファレンスだとGTX 660のカード長は9.5インチ(約241.3mm)なので,GTX660-DC2T-2GD5は基板長もカード長もそれより長いことになる。
DirectCU IIクーラーを取り外したところ DirectCU IIクーラーをカバー部とフィン部に分解したところ さて,GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点で保証は受けられなくなる。その点をお断りしたうえで今回は評価のためにGPUクーラーを取り外してみるが,銅(CU)が直接(Direct)GPUに密接するというクーラーの名称どおり,3本の銅製ヒートパイプがGPUに触れる格好となっているのが分かる。ヒートパイプで放熱フィン部へ運ばれた熱は,80mm角相当のファン2基で冷却される仕組みだ。

 一方の基板側は,基板長が長いためか,GTX660 Ti-DC2T-2GD5と比べてずいぶんすっきりした印象だが,それでも電源部はASUS独自のデジタルVRMコントローラ「DIGI+ VRM」によるデジタル制御で,また,フェーズ数も見る限り6+1と,GPUの位置づけを考えればなかなか豪華なものになっている。
基板にはカードのたわみを防ぐためと思われる細長い金属パーツが取り付けられていた(左)。右は基板全体だ。前出のメモリチップは表面に4枚,裏面に4枚搭載されており,表面からはメモリ周りもシンプルに見える メインの電源部(左)。三洋電機製の導電性高分子タンタル固体コンデンサ「POSCAP」や,物理的に振動しないため,いわゆるコイル鳴きを防ぐことができ,発熱も抑えられるというコイル「Super Alloy Choke」,低発熱を謳うMOSFET「Super Alloy MOS」などからなる。POSCAPはカード裏面,GPUの裏側部にも取り付けられていた(中央)。右は6+1の「+1」側。1フェーズだが,規模は大きい印象だ……と,GTX660 Ti-DC2T-2GD5の紹介に使った文章をまるまるコピーして使っても説明が成り立つデザインになっている。もちろん部品の配置は異なるが

HD 7850をはじめGTX 580などとの比較も実施ドライバにはレビュー用の「306.02」を利用
GTX660 Ti-DC2T-2GD5
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メーカー想定売価:3万7000円前後(※2012年9月13日現在,発売は9月以降予定)  テスト環境の構築に入ろう。
 今回,比較対象には,直接の上位モデルとなるGTX 660 Tiのほか,Fermi世代のミドルクラスGPUとなる「」(以下,GTX 560 Ti),そしてその上位モデル「」(以下,GTX 570)と「」(以下,GTX 580)を用意。さらに,NVIDIAがGTX 660の競合製品と位置づける「」(以下,HD 7850)と,その上位モデル「」(以下,HD 7870)との比較も行うことにした。

 ただ,前述したとおり,今回入手したGTX 660搭載カードは,メーカーレベルのクロックアップモデルだ。テストは,カードとしての定格動作時とは別に,EVGA製のオーバークロックツール「Precision X」(Version 3.0.3)から動作クロックをリファレンス相当まで落とした状態でも行っているが,ここで注意してほしいのは,とおり,クロックアップモデルの場合,大型クーラーや,メーカーレベルの電圧設定変更などにより,自動クロックアップ機能「GPU Boost」の伸び率(や消費電力)が,リファレンスより高くなる可能性があることである。
GPU Boostの挙動を追ったところ。上がASUS GTX 660,下がGTX 660のものとなる  以下本稿では,GTX660-DC2T-2GD5の定格動作を「ASUS GTX 660」,GTX660-DC2T-2GD5の動作クロックをリファレンス相当にまで下げた状態を「GTX 660」と書いて区別するが,後者のGPU Boostクロックと消費電力がリファレンスデザインを採用したカードと完全に同じとまでは言えない。この点は踏まえておいてもらえれば幸いだ。
 ちなみに今回のテストだと,ASUS GTX 660は1175MHzまで,GTX 660だと1084MHzまで,GPU Boostにより動作クロックが上がったのを確認できている。

 また,クロックアップモデルという話で続けると,GTX 660 Tiカードとして用意したGTX660 Ti-DC2T-2GD5,そしてHD 7870搭載カード「HD7870-DC2-2GD5」はやはりクロックアップモデルなので,同様にPrecision Xから動作クロックをリファレンス相当にまで落としている。
 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

 GeForceのテストに用いたグラフィックスドライバは,全世界のレビュワー向けに配布された「GeForce 306.02 Driver」。バージョンはと同じだが,GTX 660の対応が追加されている。
 ちなみにでGTX 660のテストを開始した後になって,より新しい「GeForce 306.23 Driver」もレビュワー向けには用意されたのだが,NVIDIAいわく「306.23は,306.02でOpenCLが動作しない問題があり,それを修正したもの。問題点の修正以外に違いはない」とのことだったので,今回は306.02で統一することにした次第だ。
 一方,Radeon用にはテスト開始時点の最新版「」を用いている。

 テスト方法は準拠。ミドルクラスのGPUが主役ということもあり,解像度は1600×900ドットと1920×1080ドットの2つを選択している。
 また,これは毎度おなじみだが,テストに用いたCPU「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」の自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テストによって効果に差が生じることを防ぐため,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効に設定している。

GTX 660 Ti比で8割強の3D性能GTX 580といい勝負を演じる
 テスト結果を順に見て行こう。グラフ1は「3DMark 11」(Version 1.0.3)の「Performance」と「Extreme」,両プリセットの総合スコアをまとめたものである。
 GTX 660のスコアはGTX 660 Tiの83?85%程度だが,NVIDIAが価格帯的に競合すると位置づけるHD 7850に対しては22?34%程度高く,HD 7870よりも2?8%高い。また,Fermi世代のミドルクラスGPUとして高い人気を集めたGTX 560 Tiと比べて43?48%程度高いスコアを示し,GTX 580とほぼ同レベルというのも見逃せないところだ。

 また,ASUS GTX 660はGTX 660からスコアが5?6%程度伸びており,メーカーレベルのクロックアップ効果を確認できる。

※グラフ画像をクリックすると,Performanceプリセットのスコア基準で並び替えたグラフを表示します
 「S.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)の公式ベンチマークアプリケーションに用意された4つのテストシークエンスから,最も描画負荷の低い「Day」のスコアを抽出したものがグラフ2,3だ。
 ここでGTX 660のスコアは対GTX 660 Tiで89?94%程度と,3DMark 11と比べて差が若干縮まった。一方,GTX 580とほぼ同程度のスコアという点は変わっていない。

※グラフ画像をクリックすると,解像度1920×1080ドットのスコア基準で並び替えたグラフを表示します。以下,グラフ15まで同
 同じくSTALKER CoPの公式ベンチマークアプリケーションから,最も描画負荷の高い「SunShafts」シークエンスの結果をまとめたものがグラフ4,5となる。
 GTX 660 Tiのテストで,筆者は192bitメモリインタフェースが原因となるメモリ周りの弱さを指摘したが,今回は解像度を一段下げたため,GTX 660やGTX 660 Tiのスコアが大きく下がったりはしていない。1920×1080ドットまでなら,極めて描画負荷の高い局面でも,ハイエンドGPUとかなりいい勝負ができると言えそうだ。


 グラフ6,7は「Battlefield 3」(以下,BF3)のテスト結果となる。
 ここでもGTX 660とGTX 660 Ti,GTX 580の力関係はSTALKER CoPとほぼ同じ。あえていえばGTX 580のほうがGTX 660より安定的に高いスコアを示しているが,その差は最大でも約4%だ。
 一方,BF3でスコアを伸ばせないRadeon HD 7800勢とのスコア差は,アラド戦記 RMT,対HD 7870で最大約28%,対HD 7850で最大約53%に開いている。


 一方,シェーダプロセッサの性能とテクスチャ処理性能がスコアを左右しやすい「Call of Duty 4 Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だと,GTX 660は,GTX 660 Tiよりテクスチャユニット数が32基も少なく,GeForce GTX 500シリーズのようなシェーダクロックの設定もないことが影響してか,スコアはあまり振るわない印象だ(グラフ8,9)。
 GTX 660 Tiの80?85%程度,GTX 580の92?99%程度に留まり,DirectX 9アプリケーションに強いRadeon HD 7800シリーズとの比較でも分が悪いのは見逃せないところである。とくに対HD 7870で81?98%程度というのはインパクトが大きい。


 グラフ10,11は「The Elder Scrolls V Skyrim」(以下,Skyrim)のテスト結果だ。
 Skyrimのテストにあたっては公式の高解像度テクスチャパックを導入しているため。グラフィックスメモリ負荷は極めて高くなっているのだが,こうなると,192bitメモリインタフェースを持つGTX 660はGTX 580に対して83?86%程度,HD 7870に対して83?84%程度と,いずれも小さくない差をつけられる。

 もっとも,標準設定ではトップクラスのスコアを示すものの,Ultra設定では“第2グループ”へ落ちてくるGTX 660 Tiと比べると,どのテスト条件でも第2グループに踏み留まっているGTX 660のほうが,安定しているとは言えるかもしれない。第2グループのスコア差が大きくないだけに,ASUS GTX 660が悪くない位置に付けている点も押さえてはおくべきだろう。


 GPU性能だけでなくGPGPU性能も見るため,3D性能特化型GPUアーキテクチャたるKeplerには不利となる「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)の結果を見ていこう。Civ 5でもSkyrimと同様,GTX 660のスコアはぱっとしない(グラフ12,13)。HD 7870に対して86?97%というのは,やはり見逃せないところだ。
 もっとも,GTX 570より2?8%程度,GTX 560 Tiより23?30%程度高いスコアを示せているのも,また確かではある。


 3DMark 11のテスト結果を踏襲しつつ,Radeonに最適化されているため,Radeonで高いスコアが出やすい傾向にある「DiRT 3」の結果がグラフ14,15だ。GTX 660のスコアは対GTX 660 Tiで80?88%程度と,ややギャップが大きいものの,GTX 580とはほぼ同じ。HD 7870には4?5%程度置いて行かれる一方で,HD 7850に対しては20%以上高いスコアを示している。



消費電力はGTX 660 Tiから最大20W強低下Fermi世代には格の違いを見せつける
 TDPが140Wで,典型的な3Dアプリケーション実行時の消費電力が115Wというスペックから,GTX 660の低消費電力ぶりには期待が持てるが,実際はどうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,システム全体での消費電力を比較してみよう。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定したうえで,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定。そのうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。その結果がグラフ16だ。

 アイドル時のスコアは,GTX 660とGTX 660 Tiで変わらず。HD 7870やHD 7850よりは若干ながら高め,という結果になった。なお,アイドル時について続けると,無操作状態が長く続いたとき,グラフィックスカードのディスプレイ出力が無効化されるように設定しておいた場合,Radeon HD 7800シリーズでは「AMD ZeroCore Power Technology」によってグラフィックスカードの消費電力が大きく下がる。実際,今回のテストでもHD 7870搭載システムが76W,HD 7850搭載システムが79Wまで下がったので,アイドル時の低消費電力ぶりはRadeonに一日の長があるということなのだろう。

 一方,アプリケーション実行時だと,GTX 660の消費電力は271?292Wの間に収まった。DC2Tモデルのグラフィックスカードで動作クロックをリファレンス相当に落としたという意味で,GTX 660とGTX 660 Tiのテスト条件は共通だが,ここでスコア差は7?22W。GTX 660 TiのTDPは150Wなので,概ねスペックどおりの消費電力低減があったと述べてよさそうである。
 HD 7850と比べると9?34Wも高いのは明らかなマイナスポイント序盤で指摘したとおり,GTX 660カードとしてASUS製のDC2Tモデルを用いたので,GTX 660は若干不利だが,それを差し引いても違いは小さくないといえるものの,一方でGTX 580と比べると83?101Wも低い。GTX 580とほぼ同等の性能を,100W低い消費電力で実現できているのは評価していいと思われる。GTX 560 Tiと比べて23?37W低い点も見逃せないところだ。

※そのまま掲載すると縦方向のサイズが大きくなりすぎるため,簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると完全版を表示します
 3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.4)でGPU温度を取得した結果がグラフ17だ。テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いている。

 GPU温度の取得法はカードによって異なり,また,搭載するクーラーも異なるため,横並びの比較には適さない。なので,結果は参考程度に見てもらいたいが,それでも,GTX660-DC2T-2GD5に搭載されたDirectCU IIクーラーが,ASUS GTX 660とGTX 660のGPU温度を高負荷時で70℃以下に抑えているあたりからは,十分な冷却能力があると言うことも可能だろう。

 気になる動作音だが,毎度毎度筆者の主観であることを断ったうえで述べると,「静音性が高い」と手放しで喜べるほどではないものの,ケースに組み込めば気にならない程度には収まっていた。


旧世代ミドルクラスGPUからのアップグレードパスとして有望。価格はもう一声欲しいところか
 以上,GTX 660の特性を見てきたが,GTX 580並みの性能を,約100W低い消費電力で実現できている点はインパクトが大きい。電力食いと揶揄されることも多かったFermi世代に対して,消費電力の低減を実現したKepler世代の特徴が,このGTX 660でも大きく表れている印象だ。

NVIDIAはGTX 660の性能が9800 GTよりも最大で4.3倍高いと謳っている  ちなみにNVIDIAはこのGTX 660を,2010年7月に発表された「GeForce GTX 460」(以下,GTX 460)や,2008年7月に発表された(というか「GeForce 8800 GT」からリネームされた)「GeForce 9800 GT」(以下,9800 GT)といった,旧世代のミドル?ミドルハイクラスGPUを使い続けているユーザーに向けた,最適なアップグレードパスとして位置づけている。
 そこで,テストシステムは変えないまま,のから「3DMark06」(Build 1.2.0)をピックアップし,ざっと実行してみることにした。その結果がグラフ18だ。

 当たり前といえばそれまでかもしれないが,GTX 660は,GTX 460から最大で約38%,9800 GTからは最大で約178%高いスコアを示した。GTX 660だと補助電源コネクタが6ピン×1なので,乗り換えにあたって電源ユニットにあまり気を遣わなくていいのは魅力といえそうである。


GTX660-DC2T-2GD5の製品ボックス。GTX660-DC2T-2GD5のメーカー想定売価は3万円前後(※2012年9月13日現在)とされている。オリジナル基板採用のクロックアップモデルなのでやむを得ないところではあるが,さすがにちょっと高い  北米市場におけるGTX 660搭載カードの価格は229ドル(約1万8000円)。HD 7870は同249ドル,HD 7850はグラフィックスメモリ容量2GB版が同209ドルなので,NVIDIAとしては「HD 7870より安価なのに性能は同等以上で,HD 7850よりはほぼ確実に速い」というメッセージを伝えたいのだろう。
 あとは,搭載カードの国内価格がそのメッセージに則ったものになるかどうかだ。リファレンスクロックモデルで話をすると,HD 7870カードは2万5000?2万9000円程度,グラフィックスメモリ2GB版HD 7850カードは1万9000?2万3000円程度(※いずれも2012年9月13日現在)。なので,競合製品とのバランスを考えるに,GTX 660は,リファレンスクロック採用モデルが2万円台前半くらいからスタートすれば,ほぼ妥当ということになると思われる。

 GTX 660の性能と消費電力は確かに,NVIDIAの謳う「ゲーマーが選ぶべき武器」たりうるだろう。ただ,真の意味でミドルクラスの新たな定番になれるかどうかは,リファレンスクロックモデルの国内店頭売価が,年末商戦に向けて,229ドルという北米市場価格に近づいていくかどうかにかかっているのではなかろうか。
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