2007年12月5日(水)の記事を転載

讃美歌312番「いつくしみ深き」

①いつくしみ深き 友もなるイエスは 罪咎 憂いを とり去りたもう 心の嘆きを 包まず述べて などかは下ろさぬ 負える重荷を
②いつくしみ深き 友もなるイエスは われらの弱気を 知りて憐れむ 悩みかなしみに 沈めるときも 祈りにこたえて 慰めたまわん
③いつくしみ深き 友もなるイエスは かわらぬ愛もて 導きたもう 世の友われらを 棄て去るときも 祈りにこたえて 労りたまわん

讃美歌312番「いつくしみ深き」は、世界中で最も愛されている讃美歌の一つだが、日本人にも馴染みの深い歌である。
明治43年、教科統合中学唱歌(二)「星の界(よ)」として紹介された。
また、この曲は結婚式の定番讃美歌としてよく歌われる。
しかし、実は原詩は、星や結婚式とは全く無縁であり、むしろ、愛する者を失い、悲しみのどん底にある者を慰める歌として歌われるのがふさわしいのだ。

「いつくしみ深き」の作詞家ジョゼフ・スクライヴィンは、1819年にアイルランドの裕福な家庭に生まれたが、その人生はまさに波乱万丈であった。
なんと結婚式の前日、婚約者が溺死してしまう悲劇に見舞われる。
しかし、耐え難い悲しみの中で実の兄弟よりも頼もしい友を主イエスのうちに見出し、新しい人生に向かって踏み出す希望を与えられた。
彼は25歳の時、故国を離れ、カナダに教師として赴任。
彼はそこで生活困窮者を救済する働きをする中で、41歳の時に婚約者を今度は突如結核で失ってしまう。
さらに、追い討ちをかけるように故国の母が重病にかかった知らせを受ける。
臨終に間に合わないと思った彼は、同じく消沈している母を慰めるために一通の手紙を書いた。
それがこの「いつくしみ深き」の歌詞である。
普通の人であれば、落胆と孤独にさいなまれ、神を呪いかねない程の試練に出会った彼だが、身内よりも頼もしい友は主イエスであり、どんなに悲しくつらい時でも心の底から慰め、引き上げてくださる方であることをよく知っていた。

讃美歌312番「いつくしみ深き」(何と素晴らしい友)の直訳を紹介する。
①何と素晴らしい友でしょうか。主イエスが私たちのすべての罪と悩みを負ってくださるとは!何という特権でしょうか。すべてを神に祈ることができるのは!しかし、何としばしば私たちは平安を受けそこない、無駄に心を痛めるのでしょうか。すべてのことを神に告げる祈りをしないからです。
②試練や誘惑に出会っていますか?困難がありますか?失望してはいけません。主に祈りなさい。こんなに真実な友があるでしょうか。私たちのすべての悲しみを感じてくださるという方が?主イエスは私たちの弱さを全部ご存知です。主に祈りなさい。
③重荷に疲れ、心労に弱っていますか?尊い主は、私たちの隠れ場です。主に祈りなさい。友に軽蔑され、捨てられていますか?主に祈りなさい。主はその御腕にあなたを抱き、あなたを守ってくださいます。そこにあなたは慰めを見出すでしょう。

聖書も「イエス・キリストがすばらしい友」であるとを語る
人がその友のためにいのちを捨てるという、これよりも大きな愛はだれも持っていません。
(ヨハ15:13)

しかし私たちがまだ罪人であったとき、キリストが私たちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます。
(ローマ5:8)

すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。
わたしがあなたがたを休ませてあげます。
(マタ11:28)

私たちの大祭司は、私たちの弱さに同情できない方ではありません。
罪は犯されませんでしたが、すべての点で、私たちと同じように、試みに会われたのです。
(ヘブ4:15)

わたしは、あなたがたに平安を残します。
わたしは、あなたがたにわたしの平安を与えます。
わたしがあなたがたに与えるのは、世が与えるのとは違います。
あなたがたは心を騒がしてはなりません。恐れてはなりません
(ヨハ14:27)

あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試みるために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。
(黙3:10)

・・・見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。
(マタ28:20)

夫たちよ。キリストが教会を愛し、教会のためにご自身をささげられたように、あなたがたも、自分の妻を愛しなさい。
(エペ5:25)
教会はキリストの花嫁と呼ばれている(ヨハ3:29;Ⅱコリ11:2)
黙示録19章には、「小羊の婚宴」と呼ばれる、キリストと教会の天国における結婚式の様子が記されている。
讃美歌312番は、いつくしみ深いイエスを愛する教会が歌うラブソングと言える。