源氏絵巻縁起
いづれの御代に、と申しておきましょう。
そんな遠い昔、今では絵巻物で想像するしかありませんから、
それは美しい御代にと申しておくのです。
第一帖「桐壺」
前世からそう定まっていたかのように、
桐壺の更衣は玉のように清らかで美しい皇子を産んだ。
帝は待ち遠しい思いで、出産のため里に下がっていた桐壺の更衣を急ぎ内裏へ参上させる。
帝の寵愛を一身に受ける桐壺の更衣と、すくすくと成長してゆく若君であったが、
そのことを快く思わない者があった。
帝の後継者の第一皇子、朱雀院の母親で右大臣の娘、
弘徽殿の女御である。
桐壺は北の方の必死の懇願で里下がりを許されたが身体は衰弱し、
言葉を交わすこともままならなかった。
言葉を交わすこともままならなかった。