引っ越しが無事完了しとりあえずトイレに行こうと立ち上がったが、はて、ふと足が止まる。

入居したシェアハウスは各個室が用意されているが、水回りはフロア共同のため10人以上でシェアしていることになる。
まだ誰とも話していないこの状況で、もし誰かとバッタリ会ったらどうしよう・・・・
第一印象が最重要項目の1つであるこの世界で、初対面がトイレ。
「あっトイレの人だ」とか言われるようになったら立ち直れない。
初めましては僕にとっては譲れない重要な儀式なのだ。
今後トイレで偶然すれ違う可能性は十分にあるが、それは面識あればこそ許されることだと思う。

だが時間と膀胱は有限なので仕方がない。
えいやで自室のドアを開けようとした時、廊下で足音が聞こえたためそっとドアノブを戻す。
部屋の中をうろうろしながら音が聞こえなくなるまで待ってドアを開けようとした時、再び廊下から足跡が聞こえてまたうろうろ。
何故かドキドキしてきた。

腹を決めドアを開けてトイレに行くと、住人と会うことなくミッションを達成できた。
時計を見ると30分が経過していた。