宇山恵子さんのブログ

米国テキサス大学オースティン校と米国国立衛生研究所(NIH)は、新型コロナウイルス(COVID-19)の表面にあり、ヒトの細胞などへの侵入・感染に使う突起(スパイク)のタンパク質の3D立体構造を明らかにし、2020年2月19日『Science』に掲載されました。
 
この研究で新型コロナウイルスは、2002年~2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じ感染経路で感染(ヒトのアンジオテンシン変換酵素2:ACE2に結合)することが判明。
 
さらに新型コロナウイルスはSARSよりも感染力が高いことがこの研究で指摘されています。
 
今回の研究成果によって、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の分子構造が明らかになり、ワクチンや抗ウイルス薬の開発が進む重要なステップとなりました。

 

さらに研究者は、 この研究で解明した分子構造を「プローブ(ターゲットを探し出す物質)」として使用して、新規コロナウイルスに感染し、正常に回復した患者から自然に産生された抗体を探し出して分離する研究を進めるそうです。

 

この抗体は、すぐにコロナウイルス感染症の治療に役立つ可能性があります。例えばワクチンでは獲得した免疫が効力を発揮するまでの時間が必要になるため抗体を用いることで、感染率の高い地域での医療従事者を保護することが可能です。

 

この研究は、クライオEM(低温電子顕微鏡:細胞などを低温(凍結)状態で「固定化」して解析する手法)を用いたもので、テキサス大学オースティン校では、以前からSARS-CoVやMERS-CoVを含む他のコロナウイルスの研究に長期間を費やし、膨大な研究データや研究のノウハウを蓄積していたそうです。

 

中国から新型コロナウイルスのゲノム配列を受け取ってわずか2週間でスパイクタンパク質の構造を解析し、論文を作成して『Science』に投稿、12日間のピアレビュー期間を経て、2月19日に掲載されたということです。

 

【出典】

Daniel Wrapp, Nianshuang Wang, Kizzmekia S. Corbett, Jory A. Goldsmith, Ching-Lin Hsieh, Olubukola Abiona, Barney S. Graham, Jason S. McLellan. Cryo-EM structure of the 2019-nCoV spike in the prefusion conformation. Science  19 Feb 2020

https://science.sciencemag.org/content/early/2020/02/19/science.abb2507

 

 

 

https://ameblo.jp/uyamonika/entry-12577394670.html