大前研一ニュースの視点~

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奨学金は普通に銀行から借りるようにすべき
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日本学生支援機構が実施する貸与型奨学金について、
文部科学省が保証制度の見直しに着手することが分かりました。

 

長期の延滞が増加し、制度を圧迫している現状を踏まえ、
奨学金を借りるすべての学生から借入額に応じて
一定額を保証料として徴収する検討に入ったもので、
これにより制度は安定する一方、学生の負担は増える見通しです。

 

まず私が思うのは、奨学金の対象を大学と考えるのであれば
義務教育ではないのですから、本来は国が支援する必要はない、ということです。

 

必要な人は銀行から普通にお金を借りれば良いのです。

 

そして、大学に通うことに価値があり、その価値が
上がったことで給与も高くなり、その分で返済ができるという
認識を持つことが大事だと思います。

 

そうなれば、銀行側としても貸出先がなくて困っていますから、
受け入れてくれるはずです。

 

公的な奨学金だと思うから返済が甘くなるのであって、
銀行であれば取り立ても行うでしょうから
返済率も改善するでしょう。

 

公的な就職先であれば返済を免除するなどの条件も
私は不要だと思います。

 

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異業種間の転職は、給与・キャリアの向上にも良い
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日経新聞は15日、「転職市場 デジタル革命、越境転職促す」
と題する記事を掲載しました。

2017年度に同じ業種の中で転職した人は、
2009年に比べて2.07倍だった一方、異業種への転職は
2.98倍にのぼったと紹介。

IoTやAIなどデジタル技術で事業を変革する動きが
各業種で広がり、データの取得や分析を行うエンジニアの
需要が高まっていることが要因で35歳を超えると就職先が
見つかりにくくなる年齢の壁も崩れ始めているとのことです

これは非常に健全で良い傾向だと思います

 

エンジニアの人がサービス業や銀行などの異業種に転職すれば、そういう人材が不足していますから、大いに活躍が期待できますし給与も上がり、キャリアも広がっていくと思います。

 

一方、サービス業などの業界にいた人がエンジニア業界に
転職しても、実際のサービスとして実現する内容などを
エンジニアに明確に伝えられるようになるので、
これも意味があると思います。

 

これまでの転職というと同業種間が多かったのですが、
このような異業種間の転職は非常に効果的だと思います。

 

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稚拙なAI融資から始まる日本/モラトリアム法は日本が抱え込んだ爆弾
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3メガ銀行と地銀など18社はベンチャー企業と新会社を
設立し、人工知能(AI)を駆使した中小企業向け融資に
参入する共通のデータ基盤をつくる見通しだと紹介。

 

日々の決済情報を審査に使えるよう解析するシステムを
開発する方針で、これによりAI融資で先行する
アマゾンやリクルートなど異業種組みに追いつきたい考えです。

 

中国のアントフィナンシャルに比べると
ほとんど幼稚園のレベルですが、それでもこういうことから
始めていかなければ金融業界も生き残れない、
ということでしょう。

 

とても「銀行の巻き返し」とまでは言えませんが、
今後に期待したいところです。

 

日経新聞は15日、「地銀波乱 モラトリアム法 負の遺産」
と題する記事を掲載しました。

 

リーマン危機後の2009年12月、民主党政権が中小企業の
借金返済を猶予するよう銀行に求めた

中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の施行から
10年が経過したと紹介。

 

しかし、その後の稼ぐ力が回復せず、経営破綻に追い込まれる
企業が続出し地銀の不良債権処理損額は
2018年4-9月期に8年ぶりの高水準に達したとのことです。

 

2009年亀井静香元金融相がゴリ押しで主導したのが、
この中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)でした。

 

それまでは貸付先の企業の経営状況が悪ければ、
「破綻懸念先」への融資になり一定割合の貸倒引当金を
計上する必要がありました。

 

しかし、モラトリアム法を施行した貸出先については
「正常先」と見なして良いということで、貸倒引当金を
計上する必要もなくなり銀行の経営もずいぶんと楽になりました。

そして、企業も銀行から返済に追い立てられることがなくなりました。

しかし、40万社にのぼるモラトリアム法の対象企業のほとんどは
経営改善せず、まともに復活したところはほとんどありません

 

こうなってくると銀行にも他人事ではありません。

 

今後、金利が上昇してくると不良債権を抱えて
大きな赤字を計上する銀行が増え、さらに取り立てできずに
倒産する銀行も出てくると思います。

これは日本が抱え込んだ大きな爆弾です

 

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※この記事は1月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています