一九七七年 夏
三三、スキップ・デー
ベースボール・シーズンも終わり、夏休みも近づいていた。十二年生のシニアたちにとっては、高校生活も後わずかだ。そんなある日、授業開始のベルぎりぎりに微分・積分の教室に駆け込むと、教室にはジュディー・ホートンとチャックしかいなかった。私はチャックに「今日はDデーだったね」と言うと、彼は「イヤップ」と言って笑った。その日、シニアのクラス全員は学校に姿を現さなかった。これはシニアに与えられている特権で、一日だけ先生たちに内緒で学校をサボることが許されていた。その日は、シニア全員が登校しない。シニアたちは、先生に内緒でその日を設定するので、驚く先生もいるようだ。この日を『シニア・スキップ・デー』と呼ぶらしい。私もマーサリやラブーに、いつスキップするのか尋ねたが、教えてくれなかった。『シニア・スキップ・デー』がいつなのか興味があるのは先生たちで、先生たちもシニアたちにいろいろ探りを入れるらしい。私はこの『シニア・スキップ・デー』というのは、画期的なイベントだと思った。
私がロッカーから次の授業の教科書を出していると、我がジュニア・クラスの会長、ヴァル・カーシュが話しかけてきた。彼女はベースボール・シーズンが終わって寂しいでしょうと、私に質問した。私はその質問には答えず、彼女に提案した。『ジュニア・スキップ・デー』も作ろうと。私は横にいたチャックにも同意を求めた。チャックも私の提案に賛同し、調子に乗りやすいタイプのヴァルも検討してみようと言った。
ヴァルの行動力に驚いた。あのロッカー前の会話から一週間の間に提案書をまとめて、校長のヤーノ神父に提出したらしい。結局、『シニア・スキップ・デー』のように、内緒で日を設定することはできず、数人の先生も同行することとなったが、クラス全員でカンカキー・リバー・ステート・パークにフィールド・トリップに行くという名目で、学校をサボることが許された。また、ランチのバーベキューには学校から補助金も出ることになった。ヴァル様様だ。
つづく・・・
ヴァル。以前にも、制服が一番似合う女の子だと紹介しました。彼女は美人で、頭も良い。彼女の行動力もすごいが、今思うと、それを許した学校はすごい!
注意: 『十六歳のアメリカ』は、私の体験を基に書いていますが、フィクションです。