赤き竜の慟哭 (2)
これまでのあらすじ
異世界にて、パーティー結成!
メンツは
小学生(迷子)
小学生(迷子)
戦士(迷子)
いきなりラスボス戦!?
それは百年前に遡る。
村の北にある森に、一組の夫婦が居を構えた。
夫は人間。妻は、レッドドラゴン。
夫はまだ十六の少年だった。
妻の年齢は不明だったが、人の姿をしていたときは夫と同じか少し若いくらいの、やはり少年の姿をしていた。
「オスだったのか?」
セツナが口を挟んだ。村長の父である長老が首を横に振った。その姿は少年そのものであった。
「どちらでもないと聞いている。彼らは村に危害を加えるでもなく、仲睦まじく穏やかに暮らしていた……」
彼らが村に馴染むのに、そう時間はかからなかった。
夫は元々人間で、心根の優しい少年だった。妻は意地っ張りなところがあったが気が弱く、自分がドラゴンであることを忘れているかのように振舞っていた。何より、人の姿をしている限り、ドラゴンはドラゴンとしての能力を使えない。
危険はないだろう。
村人たちが彼らを受け入れたのはそうした判断の上であった。
それに、打算もあった。
それまで時折村を襲っていた周辺のモンスターたちが、ドラゴンの気配を恐れて現れなくなったのだ。
ならば精々用心棒として役に立ってもらおう。村人たちの意見はまとまった。
しかしある時から突然、二人は村に姿を見せなくなった。
ほぼ同時に、赤い竜があたりの空を飛行するようになり、森からは恐ろしい咆哮が響いてくる。そして以前のように、モンスターが村を襲う。
森に近づけなくなった村人たちは、口々に噂した。
ドラゴンが本性を現して、夫を食い殺したのだと。
村人たちは森のドラゴンを恐れながら、それでも百年間、モンスターをなんとか撃退しながら耐えていた。
状況に変化があったのは、つい数ヶ月前のことである。
それまでとは比べ物にならない強さのモンスターが村の周りに現れるようになったのだ。
死者は既に十を超えている。
ドラゴンがモンスターを呼び寄せて村を襲わせているに違いない。
これ以上、犠牲を出すわけにはいかない――
「で、職業冒険者にドラゴン退治を任せようってわけだな」
セツナは頷き、ほんの数秒考えて、
「いいぜ、引き受けよう。ただし、成功するとは限らない。こっちも命あっての物種だ。報酬の半分は先にもらう。残りは首尾良くドラゴンを倒してからでいい。で、額はこんなもんでどうだ」
セツナが示した額が多いのか少ないのかは、芹と希生にはわからなかったが、かくして、ドラゴン退治の依頼は成立したのである。
つづく。