シネトーク99『ALWAYS 三丁目の夕日'64』●ベタでもいいじゃない。今の日本に必要な良作 | ぶっちゃけシネマ人生一直線!❁

シネトーク99『ALWAYS 三丁目の夕日'64』●ベタでもいいじゃない。今の日本に必要な良作

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映画が元気のミナモト!
てるおたくお

ぶっちゃけシネトーク

●今日のてるたくのちょい気になることシネ言

「映画1000円デーに限って雨の日が多い」




シネトーク99
『ALWAYS 三丁目の夕日'64』




監督・脚本:山崎貴 脚本:古沢良太
出演:吉岡秀隆/堤真一/小雪/堀北真希/薬師丸ひろ子/須賀健太/もたいまさこ/三浦友和/森山未來/大森南朋/高畑淳子/米倉斉加年/小清水一揮/染谷将太


2011年日本・東宝映画/142分/シネスコサイズ/3D/東宝配給(2012年1月21日公開)



●作品解説
高度成長期の東京の下町で暮らす人々の心温まる
人情模様をつづるヒット・シリーズ第3弾。
前作から5年後、東京オリンピックが開催される昭和39年を舞台に、

三丁目の人々の悲喜こもごもをシリーズ初の3Dで描く。




※ネタバレしてます! ご注意ください




ブルーレイ&シネマ一直線 前2作あっての3作目であることが分かる見事な着地


てるお 「良い映画だとは思うんだけど、正直なところ、このシリーズってあんまり好きじゃないんだよね」


たくお 「僕もお涙頂戴を狙いすぎた家族ドラマにあまりノレないタイプで、そもそも山崎貴映画が苦手(笑)。コレが<国民的映画>としてもてはやされてることに戸惑いも覚えた


てるお 「人物造形やストーリー、演出とどれもがベタで直球な<泣かせ系日本映画>にはアレルギー反応が出ちゃう俺は、劇場に行くまでの足が重たかった・・・・(笑)」


たくお 「1作目は普通に面白かったと思ったんだけど、2作目は金持ちは悪みたいな偽善的な描き方に違和感を覚えた茶川が『お金よりも大切なものがある!』と怒鳴り散らす場面とか、そういう気恥ずかしいセリフを言わせてるシーンがもうダメだったね」


てるお 「今作でも『お金や地位よりも大切なもの』を何気に描いているけど、果たして今の日本人でその理論を振りかざされて共感できる人がどれほどいるんだろうか


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たくお 「人とのつながりが大切だったその時代の良さ、お金以上の価値観という視点は嫌いじゃない。ただ、夢を壊すようなことを言うけどさ、お金がないと幸せにも限界があるわけで」


てるお 「特に今の日本は、お金がないと幸せを実感できないような社会になりつつある。一向に改善されない不況、震災の傷跡、低迷する就職内定率、少子化、無能総理の無計画増税政策、崩壊しまくりの年金制度、東電の詐欺的電気料金値上げ・・・・。そりゃこんなにウンザリするようなニュースばかり流れてたら誰だってイヤになるし、希望だって持てなくなる」


たくお 「『立ち上がれニッポン!』と謳ってるCMが流れてもさ、破綻寸前の今の日本社会に目を向けるとなかなかそういう気にはなれない。悲観的な考えを抱く人が多くなった今だからこそ、人々の心のスキマを埋めてくれるこういう映画が必要だと思う


てるお 「国民が一丸となって東京オリンピックを盛り上げているシーンを観て、俺がまだ生まれてない時代の話なのに、なぜか『あの頃は良かったなあ』としみじみ思うわけよ。心のスキマを埋めてくれるような感じでさ」


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たくお 「『おもひでぽろぽろ』とか、60年代というノスタルジーな時代を象徴的に描いた作品にどこか惹かれるんだよね


てるお 「僕らは2人とも70年代の生まれだけど、まだ60年代の名残りがあった。なので、その時代を知らない話なのに妙に懐かしく感じるのはそういう部分もあるのかもしれない」


たくお 「婆ちゃんの家にあったカラーテレビ、あんな感じだったなあ。ナショナル製でチャンネルをガチャガチャ回すやつ。みんながテレビでオリンピックを応援する場面なんか、今どん底状態のパナソニックの人は涙なくして観れないのでは。『あの頃は良かったなあ』って(笑)」 ※劇中に出てくるテレビはパナソニック前身のナショナル製


てるお 「前作ってかなりダークサイドな話だった。それこそ『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』みたいな。茶川は詐欺に遭い、ヒロミは踊り子になって、鈴木はフォースのように戦友の幽霊と出会う(笑)」


たくお 「シリーズのテーマでもある“人とのつながり”が1作目に比べて希薄になってる感じだったし、スッキリしないというかモヤモヤが残ったままで残尿感の高い続編だった」


てるお 「それぞれのエピソードに脈略がないうえに強引に話を収めてるから魅入るところがなかった。<家族の絆>のテーマをむりくりに入れた話にもあまり共感できなかったし、そもそも続編を作る意味があったのか、さえ思ったよ


たくお 「一番良かったのはオープニングのCGゴジラの襲撃シーン。もっとちゃんと作れば、日本だってマトモなゴジラ映画できるだろと思ったね」


てるお 「で、今回の'64を観て感じたのは、前2作あっての3作目なんだと思った。『スター・ウォーズ EP3』のために『EP1』と『EP2』を我慢して観てきたみたいな(笑)。当初から3部作として想定していたような見事な着地を見せてくれる


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たくお 「各エピソードも前作よりまとまってるし、話の展開にもそんなに不自然さを感じなかったね


てるお 「緩急足らずのくどい演出や、ベタすぎてちょっと恥ずかしくなる会話の応酬、鈍いストーリー展開は相変わらずだけど、ま、それも含めてこのシリーズの魅力なんだろうけど」


たくお 「中だるみはあったけど、作品全体に漂う温かい空気感は嫌いじゃない


てるお 「『ALWAYS』アレルギーの人は相変わらずけちょんけちょんにダメ出ししてるし、今回は原作にはない映画オリジナルの話だから賛否もある。好き嫌いが極端に分かれるシリーズでもあるわな」


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たくお 「僕はあまり期待してなかっただけに意外と好意的に観られた。シリーズ最高の出来と言ってもいい


てるお 「多少強引な展開はやっぱりあるけど、前作よりかは完成度は高い。不覚にもちょっと泣いてしまったよ


たくお 「えー!? <泣かせ系日本映画>アレルギーの君が泣いたの!? 一体何があったんだ(笑)」


てるお 「最近、プライベートでちょっと凹むことがあってさ。精神的に落ち込んでる時にこういう映画を観ると、自然と温かい涙が溢れてくるもんなんだよ


たくお 「えらく発言が丸くなったな。というか腑抜けになったというか・・・・(笑)」


てるお 「なんだとー。でも素直に泣けるってステキやん(笑)」


たくお 「ま、シリーズで一番“涙腺直撃”回数は多かったけどね


てるお 「今回は前作から5年後の話でいくつものエピソードが同時進行していくんだけど、実際に俳優も1作目から5つ歳をとってるので、キャラクターの成長劇としても感傷に浸れる作りになっている


たくお 「鈴木家では六ちゃんの初恋と嫁入り、茶川家では竜之介のスランプ、ヒロミの妊娠、父親との死別、淳之介の進路などが展開していくわけだけど、茶川家のエピソードはちょっと多すぎないか?


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てるお 「確かに。父親とのエピソードは唐突というか、付け足し感は否めないね。竜之介と父親の話と、竜之介と淳之介の父子関係をリンクさせているのは分かるんだけど、もうちょっとうまい絡ませ方があったと思う」


たくお 「そうなんだよ。なんだかエピソードのブツ切れも気になった。しかも父親とのエピソードは2回に分けて描いているから、まどろこしさもあった。あそこは1回で描けばいい話なのに」


てるお 「淳之介を家から追い出すシーンもクドい。『勘違いするなよ、作家を目指したことを後悔させてやる』と涙ながらに突き放す竜之介の覚悟とかは涙腺を緩めるんだけど、演出のクドさが気になって泣けなかった。あそこはもうちょっと短くてもいい」


たくお 「てか、竜之介が淳之介を追いかける展開は1作目とカブってるじゃん。アングルも全く同じだし」


てるお 「あそこは1作目との対比効果を狙ってわざとやってると思うよ。オープニングの紙飛行機や、夕焼けの東京タワーで終わるエンディング・カットとか、色々と1作目を踏襲してて今回で完結を匂わせる作りになっている


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たくお 「ただ、前2作に出てきた淳之介の父親(小日向文世)が今回完全スルーされてたのはどうなんだ?」


てるお 「いや、父親のエピソードはもういらないでしょ。前2作であれだけ同じことを繰り返して描いてたから十分だし」


たくお 「淳之介の新たな人生の出発点なのに、父親が全く出てこないのもちょっと腑に落ちないなあ」


てるお 「淳之介の独り立ちという意味ではこの展開で良かったと思ったけどね」


たくお 「あと細かいところで気になったのは、竜之介の作家としての生活水準が今ひとつ見えてこない。家を2階建てにしても、相変わらず小汚い恰好してるし(笑)」


てるお 「それなりに稼いでいたんだろうけど、スランプ後は増築の月賦払いも相当苦しいはず。子供が生まれてさらに大変なのに、淳之介の大学費用もどうするつもりだったんだろ?」


たくお 「副業の駄菓子屋とヒロミのわずかな収入だけではかなりキツイはずなんだけどね」


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てるお 「てか、今回の竜之介ってすごくイヤなヤツに見えるんだけど。父親が危篤になっても知らんぷりだし、自分勝手だし、ファンレターを捏造するし・・・・。ダークサイドまっしぐらやん! これで身重のヒロミを死なせたらダース・ベイダー化確実だったのに(笑)」


たくお 「僕もイライラした(笑)。あとさ、竜之介を苦しめてた売れっ子作家の正体がなんと淳之介だったという展開はどうなの? 同じ屋根の下で暮らしてて今まで気がつかんかったんかい!と、ツッコミをしたくなったのは僕だけではあるまい


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てるお 「あの意表を突いた展開は、オビ=ワンを裏切るアナキンみたいな関係で面白かったけど」


たくお 「そうやってなんでも『SW』と結び付けるなよ(笑)」


てるお 「でも今回は『ALWAYS 三丁目の夕日 エピソード3:茶川の復讐』ともいえるぐらいに茶川家に比重が置かれてるね」


たくお 「鈴木家では六ちゃんの恋愛&嫁入りエピソードが中心となって展開していく。森山未來はここでも“モテキ”」


てるお 「六ちゃんと菊地のスピード婚は高嶋政伸・美元夫妻もビックリだな。2、3回デートしてプロポーズ(笑)


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たくお 「階段を3段ぐらい飛ばした感じで一気に縁談。昭和の出会い婚は恐るべき早さ!」


てるお 「うちのおかんですら2年の交際を経てやっと結婚を決めたんだぞ(笑)」


たくお 「娘が嫁入りするというのに実の両親が全く出てこないのも気になった」


てるお 「縁談のシーンで一平の『実の親じゃないお父さんらが結婚を許すのはおかしくない?』はナイスツッコミと思ったね」


たくお 「六ちゃんの幼なじみの中山武雄の出番が少なかったのもちょっと残念だったな。彼女の結婚に反対しにひと暴れするのかと思ったけど」


てるお 「やっぱり、結婚までのひと悶着担当はやっぱり則文でしょ。今回はついに鬼に変身しちゃうし(笑)


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たくお 「劇場ではあのスーパースローの乱闘シーンが一番ウケてた。菊地が挨拶に行く場面で『僕は大丈夫ですよ!』と言った次の瞬間、豪快にフッ飛ばされていく展開はお約束なんだけど、やっぱり笑ってしまった」


てるお 「あのシーンの撮影って俳優がわざとゆっくりな演技をしてるんだよね。通常のカメラだと最大10倍のハイスピード撮影ができるけど、3Dカメラでは最大2.5倍までしか撮れないから俳優の演技でごまかすしかなかった」


たくお 「そのメイキング映像が観たいな。本編より笑えそう(笑)」


てるお 「今回の則文はシリーズで最も<笑わせ役>に走ってた。ちょっとウザいんだけど、きちんと笑わせてくれるから憎めない


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たくお 「僕の後ろの席で見てたおばちゃん軍団が則文のシーンでことあるごとに大笑いしてくるから、それに釣られて笑っちゃうんだよ。なんか吉本新喜劇を観てる感じだった(笑)」


てるお 「今作では観客の反応が露骨に分かりやすい。笑うとこで笑い、泣きどころでは鼻をすする音が場内に響いている(笑)


たくお 「観客が三丁目の住人たちと同化してるのがよく分かる。そういう意味では前2作よりもキャラに感情移入しやすかったね


てるお 「あざといというか奥が深くないというか、山崎監督の演出は相変わらずだけど、今回はシラける部分があまりなかったのがいい」


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たくお 「僕が一番好きだったのは、みんなが鈴木家のカラーテレビでオリンピック中継を観ている最中、ヒロミが産気づく場面。人と人とのつながりを認識させるああいうシーンは素直にいいと思う


てるお 「ほっこりな気分になるわな」


たくお 「今回はシリーズ初の3Dということで、撮影時からリアル3Dカメラで撮られてるんだけど・・・・」


てるお 「オープニングの東京タワーは『オオーッ!』と思ったし、飛んでるトンボも効果あったし、オニ則文の3D感も悪くないんだけど、それ以外がイマイチパッとしない


たくお 「そうだね、正直、3Dでなくてもよかった」


てるお 「監督は『観客が1964年の日本に入り込むような奥行きのある3Dを意識した』とこだわったようだけど、『アバター』みたいにその世界に入り込むような演出ができてないので効果はもうひとつ。全編じゃなくてさ『部分3D』にすれば良かったんだよ


たくお 「3Dだとやっぱり画面が暗くなるし、色の純度もかなり落ちてしまってる。話に集中したいなら2Dがオススメ


てるお 「そもそも下町のアナログな人情話と最先端の3Dが噛み合ってない違和感があったんだよね」


たくお 「違和感といえば、1作目からそうなんだけどセット撮影のシーンとCGシーンの質感の差も気になる


てるお 「スタジオのセットは当時を事細かく再現して良く出来ているんだろうけど、見せ方の問題なのか、セット臭さがそのまま残っちゃってる。でもCGの街並みになると途端にリアルになり、そのバランスの悪さがあった。もっと映像にグレインを加えるとか、セット臭を消す方法なんてナンボでもあるのに」


たくお 「あとさ、改めて予告編を観たけどかなりネタバレしてるよね。ほとんどダイジェスト・シーン集だし、予告編でほとんど内容が分かっちゃう


てるお 「『ロボジー』といい、最近の邦画の予告編って作り方がヘタっぴ。見せすぎるきらいがある。観客に鑑賞欲を掻き立てる部分を見せつつも、本当にオイシイ場面は公開まで取っておかないと


たくお 「同感。せめて六ちゃんのウエディング・ドレス姿は公開まで解禁してほしくなかった。映画を観ててもさ、どっちみち結婚するんでしょ?と、ちょっと冷めてる自分がいるんだよね。ポスターでもネタバレしてたけど(笑)」


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てるお 「なんだかんだ言っても、今回はキレイに話が回収されて完結編としても満足度は高かった


たくお 「完結編じゃないでしょ? 監督は『70年の大阪万博を描きたいけど、その前にもう1本作れたらいいね』と続編の構想を明らかにしている


てるお 「え? まだやるんだ。無理して続けることないと思うんだけどなあ」


たくお 「もし続編を作るにしても、ただその時代をなぞったノスタルジーに浸るだけの映画じゃなくてさ、自信を失って元気をなくした今の日本を奮い立たせるような作品を目指してほしい


てるお 「そういう姿勢で臨む続編だったらまた観てみたい気もする」



●ココGOOD!=ベタで直球な感動シーン/キャラクターに感情移入できるストーリー展開/六ちゃんの愛らしさがUP/則文のコメディ演技/東京タワーと鬼の則文3D効果
●ココBOMB!=でもベタすぎて直球すぎる感動シーン/茶川家のエピソードが多すぎる/竜之介がイヤなヤツになっている/3D効果が一部シーンだけ/見せすぎた予告編





●『ALWAYS 三丁目の夕日'64』満足度料金

てるお  1100円

たくお  1200円



『ALWAYS 三丁目の夕日'64』 ★★★☆




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