シネトークSPECIAL●てるおとたくおがスピルバーグ映画をぶっちゃける!<PART4> | ぶっちゃけシネマ人生一直線!❁

シネトークSPECIAL●てるおとたくおがスピルバーグ映画をぶっちゃける!<PART4>

てるおたくお
ぶっちゃけシネトーク
SPECIAL
スピルバーグ映画
なんだかんだ言っても面白い!

PART4




ブルーレイ&シネマ一直線 愛のドラマは平凡、山火事アクションはピカイチ(笑)
オールウェイズ ★★☆
1989年/ユニバーサル映画


たくお 「『ジョーと呼ばれた男』をリメイクしたスピ初のラブ・ストーリーがコレ。リチャード・ドレイファスの12年ぶりのスピルバーグ映画、挽年のオードリー・ヘプバーンの出演と色々と話題になった」


てるお 「スピが10年も温めていた企画なんだって? 俺は同じ年に公開された『ゴースト/ニューヨークの幻』のほうが圧倒的に面白いかったけど


たくお 「うん、スピ映画にしては凡作だったな。僕も劇場で観たけど山火事のシーンぐらいしか記憶にない(笑)


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「ハンターとドレイファスの演技に救われてるやね。女性はラブ・ストーリーを楽しむけど、男は山火事のシーンに“燃える”という不思議な映画(笑)


たくお 「幽霊となったピート(ドレイファス)が恋人ドリンダ(ホリー・ハンター)を守る話・・・・・だと思ってたけどそうじゃなくて、死んでも彼女に未練があるからストーカーしてるだけで全然守ってない(笑)


てるお 「『ゴースト』のパトリック・スウェイジみたいに“愛する人を守る”感があまりない」


たくお 「ドリンダに新しい恋人ができて1人で嫉妬してるだけで、天使のオードリーに叱られてやっと目が覚める(笑)」


てるお 「なんだろう、スピが男女の愛の機微を描くと、どうも平坦すぎるというか甘っちょろいというか、ほとんど共感させられる部分がないんだよね。観ててイライラ~ッ(笑)


たくお 「決定的に問題なのは、死で分断された2人の切ない気持ちがほとんど伝わってこなかったこと。観ているこっちがキュンとこないんだよ」


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「恋人を失った女性が抜け殻のようになってしまう“ショック感”は、ハンターよりもデミ・ムーアのほうが名演だと思ったね。ピートは幽霊になっても死んだことにさほどショックを受けてないし、キャラ的にほとんど変わってないのがあまり面白くない」


たくお 「『ゴースト』のウーピー・ゴールドバーグのような2人をサポートする第3のキャラがいないので、話がいまひとつ盛り上がらないよね」


てるお 「ドリンダに好意を寄せる若い訓練士のテッドはただの2枚目だし、ピートの友人役アルを演じたジョン・グッドマンは好印象なんだけど、話を面白くするに至るほどのキャラでもない」


たくお 「名曲“煙が目にしみる”とかの使い方は良かったけどね。映画を観てあの曲を気に入ってサントラ買ったよ。ジョン・ウィリアムスの音楽もいつもより控え目だけどイイ音楽だわ


てるお 「スピは小道具の使い方がうまい。例えば冒頭で無茶な飛び方をするピートにハラハラさせられるドリンダが、持ってたスプーンをいつの間にかグニャグニャにしてしまうところとか」


たくお 「オイルでベトベトになったアルの葉巻にテッドが火を点けると全部燃えちゃうとか、小道具を使った面白い表現はピカイチなんだけど」


てるお 「スピは愛のドラマよりも山火事の消火シーンにかなり力を入れてる。てか、このシーンが撮りたくて本作をやったんじゃないのか?と思ったほど(笑)


たくお 「相変わらずスピの飛行機愛が炸裂してるよね」


てるお 「山火事の視覚効果を手掛けたILMは、翌年に公開した『バックドラフト』の“予行練習”だったんだろうな」


たくお 「本当の山火事で撮ってるようにしか思えないシーンは迫力。もちろん実際に燃やしてるわけではなく、出火・消火をコントロールできる木々を作り、それを植えていった。自然の木は全く燃やしてないというからすごい」


ブルーレイ&シネマ一直線


てるお 「セリフで印象的だったのは、ドリンダがピートから一度も『愛している』と聞いてないところ。彼女が去る時、ピートは大声で叫んでいるんだけどエンジン音でかき消されてしまう」


たくお 「『ゴースト』でも同じようなシーンがあったな。スウェイジは『愛している』じゃなくて『同じく』しか言わず、デミはそれを寂しがる。そのセリフの使い方は2人の関係を印象付けるのに効果的だった」


てるお 「ただ、本作のそのシーンでは『I Know you do,Dorinda,and you Know I do』(俺も同じ気持ちだ)と『アイ・ラブ・ユー』を一言も言ってないのに、肝心のDVDの字幕は『おれも愛しているよ』とおバカな字幕になってる。それなのにラストで『“愛してる”と言うべきだった』と矛盾した字幕が出てくる。あり得ないよ


たくお 「それはナイよな(笑)」


ブルーレイ&シネマ一直線


てるお 「てか、このDVDヒドい。レターボックスのビスタサイズ収録でしかも字幕が2行になると黒帯から1行だけハミでるというクソ仕様。テレビのズームムードが使えないんだよ」


たくお 「ブルーレイ化を待ちましょう」


●ここスピ!=ダイナミックな山火事アクション
●ここダメ!=感情にほとんど訴えてこない甘っちょろいメロドラマ




ブルーレイ&シネマ一直線

ピーターパンは飛べても観てるボクらは飛べなかった
フック 
★★★
1991年/トライスター映画


てるお 「まあなんというか、オッサンのロビン・ウィリアムスに緑のタイツを履かせて空を飛ばせるのはかなりの“冒険”だったと思うけど(笑)


たくお 「当時のロビンは人気絶頂期で、この頃の役は子供心あふれる温かみのあるキャラが多かった。『ジャック』なんてまんま子供を演じてたしね」


てるお 「スピ映画にしては珍しくスターを多く使った作品で、ホフマン・フックも好演してたけど、ジュリア・ロバーツのティンカーベルは最後までダメだったなあ。ずっと浮いてる(笑)。映画がキャラ負けしてるんだよ


たくお 「スピ映画の主人公は俳優ではなく、サメであり、異星人であり、アクションである。スピ初の豪華スター競演映画なんだけど、いささかスターを使いこなせてないよね」


てるお 「しかも製作費は8000万ドルという巨費で、コストカットを心がけるスピにしては珍しく“浪費”している」


たくお 「CGじゃないネバーランドとか海賊船は観てるだけでも楽しいものがあったけどね


てるお 「そうか? どうもセット臭さが出ちゃっててファンタジーの世界を満喫するにはちょっとキツかったけどな。海賊船はあんなデカいのに全く動かないし(笑)」


ブルーレイ&シネマ一直線


たくお 「原作が『ピーターパン』だから仕方ないんだけど、子供向け作品をスピが手掛けるとたまに彼の悪い幼稚性が露骨に出ちゃうときがある。ま、それが良いという人もいるんだけど」


てるお 「これまで大人の鑑賞にも耐えられるマンガ映画で人々を魅了してきたスピだけど、本作はやっぱり子供向けでしか映らなかった。童心を忘れないファンタジーとしては大いに評価できる。俺も一応童心を失ってない大人のつもりなのだが(笑)、さすがにコレはちょっと・・・・だった」


たくお 「『タンタン』を観て真っ先に思ったのは『フック』だった。子供向けアドベンチャーものを大人用(もしくは一般大衆用)に改良するスピの巧みなテクが今ひとつ発揮できなった作品。そういう意味ではこの2作の位置づけはかなり近いところにある」


てるお 「スピの幼稚性が顕著に出ているのは子供たちが夕食を投げ合う場面。空っぽの食器が想像することでごちそうが並ぶ場面は楽しいけど、子供たちが騒ぎだすあたりから眉間にシワが寄ってしまう(笑)」


たくお 「確かに子供って食べ物をおもちゃにするところがあるけど、あれは食べ物というよりカラフルな泥のぶっかけあいにしか見えなかったが・・・。料理も全然美味しそうに見えなかったし(笑)」


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「大人がいつしか失った童心を取り戻していくストーリーは悪くないし、父親不在のテーマもスピ映画らしい。ただそれがいつものカタルシスとして昇華してるかと言われたら微妙


たくお 「映画を通してスピが『子供映画は僕の永遠のテーマだ』と何気に訴えてるようにも思える」


てるお 「スピ映画の醍醐味でもある<劇中で燃える場面>は、ピーターパンが自分を思い出して空高く飛ぶシーンと、ピーターパンとフックのチャンバラぐらいかな


たくお 「スピに飛翔シーンをやらせたらやっぱりピカイチやね」


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「ただクライマックスで一番燃えなきゃいけないのに、大の大人たちが子どもと一緒にチャンバラごっこしているだけにしか映ってないので、どうも燃えつきてくれない」


たくお 「アクション演出がごった煮な感じで散漫な印象なんだよ。もっと締まったチャンバラで魅せてほしかった


ブルーレイ&シネマ一直線


てるお 「なんかジョン・ウィリアムスの音楽だけがずっと鳴り続けて、映像が音楽に負けしてる(笑)」


たくお 「サントラは相変わらずいいんだけどねー」


てるお 「この映画を改めて観てもさほど楽しめなかったということは、“飛べなくなったピーターパン”と同じなのかな。もし本作を10歳の時に観てたら、もっと違う印象を受けていたかも、と思う時がある


たくお 「幼い時に観た映画が面白かったら、大人になっても面白いままなんだよね」


てるお 「自分に子供ができたら10歳の時に見せてやりたい。スピが“妖精を信じる”子供のために作った映画なのだから


たくお 「僕は妖精はいると信じてるけど(笑)」


●ここスピ!=父と子のドラマ/空飛ぶピーターパン/巨大海賊船の豪華なセット
●ここダメ!=話が子供向け/妖精は信じるけどジュリアの妖精は受け入れ難い(笑)/チャンバラシーンが散漫




ブルーレイ&シネマ一直線

恐竜をなかなか出さない“じらし”演出が素晴らしい
ジュラシック・パーク ★★★★★
1993年/ユニバーサル映画


てるお 「『オールウェイズ』『フック』の失敗でスピルバーグ神話にヒビが入り始めた時に現われたのがこの6本目の<神>映画」


たくお 「それまでオプティカルな視覚効果や特殊効果を使ってきたスピが、初めてCG技術に目覚めた記念碑的作品でもある」


てるお 「93年はスピの転換期ともいえる重要な年。エンタメ映画監督の頂点に再び君臨するばかりでなく、『シンドラーのリスト』でドラマ監督としての名声を得ることになる


たくお 「ホントすごいよ。両極端なジャンル作品を発表し、片や歴史的ヒット作、片やオスカー総ナメの映画史に残る名作を1年で撮り上げた監督なんて今までにいなかった


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「本当に同じ監督が撮った作品なのか?と思ったよ」


たくお 「扱っているテーマは全く違えど『シンドラーのリスト』と共通しているのは、全編に漂う緊迫感と“人類の愚かさ”や“人間にとっての恐怖”を描いている点」


てるお 「『ジュラシック』はテーマパーク的なスリルがある。これまでに見たことのないリアルな恐竜への期待度がめっちゃ高くて、それこそワクワクしながら劇場の前に並んだものだった」


ブルーレイ&シネマ一直線


たくお 「シネコン第1号のワーナーマイカル海老名で観たんだけど、初のTHX&DTSはハンパやない迫力だった。あの衝撃は忘れられなかったなあ」


てるお 「体の芯から貫く恐竜大音響に圧倒されたよ。俺、心臓バクバクいってたもん(笑)」


たくお 「その恐竜も『ジョーズ』と同様、なかなか姿を見せず“じらし”の演出がうまかった。それがかえって緊迫感と期待感を煽ってくれる


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「アランたちがヘリで島に向かうシーンが一番ワクワクした。劇中の登場人物と同じで、観客も“早く見たい!”という欲求にかられるんだよ」


たくお 「T-レックスが出てくるまでの1時間余、随所に観客を退屈させない工夫を凝らし、エピソードを描いているのもスピらしい演出


てるお 「まず子供嫌いのアランのキャラを説明し、島到着後、恐竜がなぜ復活できたのかをアニメで分かりやすく説明(このシーンは秀逸)、ラプターの凶暴さを姿を見せずに描写、ブラキオサウルス、トリケラトプスを出し、胚を持ちだすネドリーまで、意外と描かれているエピソードが多いことに気づく」


たくお 「昨今の“出し惜しみせずに見せすぎる”つまらないモンスター映画は、本作のような“見せない面白さ”を見習うべき」


てるお 「ま、まだリアル恐竜映画がなかった当時だから通用した演出だけどね。今、恐竜映画で出し惜しみしてたら『もっと恐竜出せよ!』と絶対文句言ってると思うよ、俺みたいなやつが(笑)


たくお 「初めてCG恐竜=ブラキオサウルスが出てきた時は感動モンだった。CGは18年前とはいえ今観てもそんなに遜色のない出来。大スクリーンに耐えられるだけのクオリティはあった」


ブルーレイ&シネマ一直線


てるお 「あの恐竜の出来を観てルーカスが『スター・ウォーズ』新3部作を決めたほどだしな」


たくお 「ビビらせの演出もベタなんだけどお約束どおりの展開を裏切ってくれない。『ジョーズ』を思わせるショック演出がいい」


てるお 「特にラプターの襲撃シーンは秀逸。サミュエル・L・ジャクソンの腕がローラ・ダーンの肩にポン・・・・彼女、ホッとする・・・・食いちぎられた腕だけ、キャーッ!!(笑)」


たくお 「子供嫌いのアランがいつしか子供を守る<父親的存在>として描かれているのもいい


てるお 「恐竜とは関係のないアクション、車の二度落ちシーンや電流フェンスくぐりでもハラハラさせる演出がうまいよね


たくお 「あのへんはインディ・ジョーンズ入ってたよな」


てるお 「子役アリアナ・リチャーズ、ジョゼフ・マゼロも魅力的で、相変わらずスピの<子役千里眼>はイイものを持ってる


ブルーレイ&シネマ一直線

たくお 「この2人は続編にもメインキャストで出てほしかった」


てるお 「世界中が熱狂した1作目だったけど、期待された2作目は・・・・・」


たくお 「それはまた後ほど(笑)」


●ここスピ!=じらし演出が秀逸/生きてるような恐竜たち=特にT-レックスとラプター/T-レックスの初登場シーン/車落ちと電流フェンスのアクション演出/子役2人の扱いの巧さ
●ここダメ!=ほとんどないけど、パークのシステムダウンの原因があのおデブちゃんだったというのがどーもねえ(笑)


【関連記事】
BDレビュー『ジュラシック・パーク』




ブルーレイ&シネマ一直線 凄まじい映像力を持った最高傑作
シンドラーのリスト ★★★★★
1993年/ユニバーサル映画


てるお 「スピが真の映像作家であることを証明した力作。妥協を一切許さないこの完成度が素晴らしい


たくお 「何がすごいかってスピが82年に本作の映画化権を入手しておきながら10年間も寝かせていたこと。まだ当時の自分の演出力ではこの映画を撮れないと分かっていたスピは、原作者のトマス・キニーリー『必ず良い作品にするから待っててほしい』と言ったそうな」


てるお 「でもユニバーサルは当初スピの監督に反対してて、マーティン・スコセッシかロマン・ポランスキーらを考えていた。しかしスピは『ジュラシック・パーク』も撮るという条件でスタジオを説得した


たくお 「しかもギャラは興収でスタジオが利益を出した分だけの契約で、監督料ナシで製作を引き受けたというスピ。ここまでくるともう執念だな」


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「スピ映画最長となる3時間15分、全編モノクロ、しかも題材は陰惨なホロコースト。宇宙人や冒険野郎は出てこない。公開前は誰もが失敗作となると叩かれてたけど、そんな根拠のないどうでもいい批判にめげるスピではなかった」


たくお 「3時間以上なのに中だるみがないのがスゴいよ。その圧倒的な演出力と映像力は便意すら寄せつけない(笑)。張り詰めた緊張感は『ジュラシック・パーク』と通じる部分があるけど、こちらは全編モノクロだからか映像的吸引力はハンパなくすごい」


てるお 「色が付いているかどうか分かりにくいボンヤリした淡い色調なんだけど、赤い服の女の子と蝋燭のパートカラー演出も抜群の効果を出してる


ブルーレイ&シネマ一直線

たくお 「スピは本作から撮影監督のヤヌス・カミンスキーと組んでるけど、ハンディカメラを多用したリアリティなドキュメンタリー・タッチな映像はこれまでのスピ映画の印象をガラリと変えた


てるお 「コントラストの強い映像がまた強烈な印象を残す。光を巧みに使った演出は特筆もんだよ


ブルーレイ&シネマ一直線

たくお 「1カット1カットにこだわりがあるのがよく分かるね」


てるお 「人物の会話シーンなどドラマで見せる部分はカチッとした構図で撮ってる。カミンスキーの映像スタイルって本作や『プライベート・ライアン』では劇的な効果を生んでるけど、『マイノリティ・リポート』では別のヤツに撮らせたほうが良かったんじゃね?と思ったけどね(笑)」


たくお 「スピもカミンスキーに任せっきりじゃなくて、作品によってアレン・ダヴィオーとディーン・カンディで使い分けたらいいのに」


てるお 「スピはホロコーストの恐怖を描きたかったわけじゃなく、シンドラーの英雄譚にしたかった


たくお 「3時間15分でホロコーストの全容、真実を描ききるのは無理。その史実背景で描かれる1人の男の物語に過ぎない


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てるお 「ホロコースト映画だったら他に『SHOAH ショア』とか優れた秀作がいくらでもある。『SHOAH ショア』のクロード・ランズマン監督は本作を『ホロコーストを伝説化しただけの映画』と批判していた」


たくお 「そういえばおすぎも公開時、かなり酷評してたよね。『そこまでしてオスカーが欲しいのか、スピルバーグ!』って(笑)」


てるお 「俺はアノ人を映画評論家とは思ってないので、誉めようがケチらそうが知ったこっちゃない」


たくお 「(笑)」


てるお 「本作は目を覆いたくなるような暴力描写が多い。スピの残虐性・暴力性はいつも批判されることが多いんだけど、本作にいたっては過剰な暴力描写が重厚なドラマを生む相乗効果を果たしていると思う


たくお 「別にスピだって好き好んで虐殺シーンを撮ってるわけじゃではない。中途半端に描いてしまうと生ぬるいものになってしまうことが分かっていたので、虐殺描写にこだわった」


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てるお 「ホラー映画の殺人シーンは“マンガ”なのでどうってことないが、本作の殺害場面はまるでドキュメンタリー映像を観ているかのような衝撃と生理的嫌悪感に襲われる。しかしこの映画で描かれた“真実”に目を背けては、本作の本質となる部分は見えてこない


たくお 「生を完全否定されたユダヤ人が次々と息絶えていく描写はおぞましい。ゲットー解体で問答無用に殺されていく市民、冷酷なゲートに射殺される囚人、全裸にされてまだ働ける者とそうでない者をまるでゴミのように分別されていくユダヤ人たち・・・・。」


てるお 「一番印象的だったのが山のように積み上げられた死体を焼却し、その灰が空から降り注ぐ場面。そこで赤い服の少女が変わり果てた姿で映し出されるシーンは胸を貫かれたような気分だった


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たくお 「ガス室のシャワーシーンの恐怖演出も秀逸。劇場で観た時、電気が消えて女性たちの悲鳴が響き渡る描写は全身の毛が逆なでするぐらい怖かった」


てるお 「スピは連日の過酷な撮影に心身ともに疲れ果てていたようで、『フック』で仕事をしたロビン・ウィリアムスに『僕を笑わせてくれ』と電話したエピソードは有名だよね」


たくお 「そりゃどんな監督だってあんな陰惨なシーンの撮影を続けているとゲンナリしちゃうよ」


てるお 「そんな残虐シーンの対となる救出場面ではドラマ的面白さがグンと増す


たくお 「シンドラーがワイロを渡して一人ずつ工場に招き入れ、私財を投じて1100人を助け出すクライマックスはついつい身を乗り出して観てしまう」


てるお 「初めはシンドラーになかなか心を開かなかったシュターンが涙しながらワインで乾杯するシーンでボロ泣き(笑)」


たくお 「シンドラーがユダヤ人を救えなかったことに泣き崩れる場面は少々あざといシーンかもしれない。あの場面はフィクションかもしれないが、でも映画的カタルシスに満ちている。やはり涙なしでは観られない


ブルーレイ&シネマ一直線


てるお 「生前、シンドラー夫人は公開後、『主人の話は映画では必要以上に美談に仕立てあげられている』と批判したことは有名だよね」


たくお 「『シンドラーは博愛精神をもった男ではなくユダヤ人を低賃金で雇っただけの偽善者』とまで言われていたけど、私財を投げ打ってまで1100人のユダヤ人を救った事実は変わらない」


てるお 「果たして“偽善者”が破産してまであれだけのユダヤ人を助けるだろうか。そう考えたら映画で描かれていることは多少は脚色されているものの、ほぼ史実通りだと思う


たくお 「シンドラーを演じたリーアム・ニーソンの名演は言うまでもないけど、ベン・キングズレーも抑えた演技で抜群の存在感を放っている。キングズレーがオスカーノミネートされてないのが不思議なぐらい


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「初めは対照的に描かれてた2人が徐々に距離を縮め、ユダヤ人救出作戦に奔走する姿に目頭が熱くなる」


たくお 「サディストなSS将校を演じたレイフ・ファインズはまさにキャスティングの勝利。作品をグッと引き締める彼の冷徹な空気感がいい


ブルーレイ&シネマ一直線

てるお 「スピは自分の名前を最大限に利用して、ホロコーストやオスカー・シンドラーという人物の存在を、歴史の教科書程度の知識しかなかった人にも広めた。このことがこの映画の最大の功績だと思う」


たくお 「まさしくそう。ユダヤ人の血が流れるスピだからこそ撮れた作品だと思う


●ここスピ!=すべてにおいての演出/徹底した残虐・暴力描写/俳優陣すべてが魅力的/露骨に泣かせる感動演出/ジョン・ウィリアムスの泣かせる音楽
●ここダメ!=ない。あえて言うならドイツ人、ユダヤ人が英語を喋ってる(笑)。こればっかりはどーしようもない