何でも話せるあいつは親友。
深い話ができるあいつは親友。
一緒にいて一番楽しいあいつは親友。
決して裏切らないあいつは親友。
何でも話せる親友同士が相手の顔色を伺いながら、
互いの恋人について笑い合っていた。
あからさまな愛想笑い。
あからさまな取り繕い。
深い話は話題を選ぶ。
人生や恋愛。仕事や家族。それならば合格。
自然環境や教育問題。戦争や外交。そんなものはいらない。
なぜなら、自動車が好きだから、排ガス問題など語られても気分が悪いだけ。
俺は自然大好きなアウトドア派だと笑う友とそういう話をした。
自動車はやはり可能な限り乗らない方がいいんだよねと。
俺は自然大好きなアウトドア派だと笑う彼が友ではなくなった。
四輪駆動車で山や海を駆け抜けるのが彼の生きがいだったから。
俺は恋人の為なら何だってしてやれるんだと笑う友とそういう話をした。
クリスマスのイルミネーションとか過剰包装とか資源問題考えたらやめた方がいいよねと。
俺は恋人の為なら何だってできるんだと笑う彼が友ではなくなった。
恋人の未来を守る為よりも恋人を喜ばせることの方が大事だったから。
俺は家族の為なら命だって捨てられるんだと笑う友とそういう話をした。
ゴルフやスキーは森林伐採を促進するし、できればゴルフ場とかも閉鎖して植林した方がいいよねと。
俺は家族の為なら命を賭けられるんだと笑う彼が友ではなくなった。
我が子の未来を憂うよりも接待や仲間との旅行の方が大事なのかな。
そういう話をするとお前はどうなんだと聞き返す。
頑張ってはいるけれど、なかなか正しく生活するのは難しいねと答えると。
ほらお前だって人のこと言えないじゃんと論点をずらして勝ち誇る。
勝ち負けじゃあなくてどうしたらいいんだろうねという話なのに。
そういう話をするとしょせん一般市民は無力だと聞き流す。
無力だからこそ考えることくらいは一生懸命した方がいいよねと答えると。
どうせどうにもならないことを頑張ってもしょうがないじゃんと聞き流す。
そして明日の遊びの計画や、人生のささやかな幸福の為の哲学を語ることに夢中。
そういう話をなるべくせずに、話題を選んで深い話をするのが友。
嫌がる話題をなるべく避けて、上手く会話を繋げるのが友。
じゃあ、友なんていらねぇよ。
そんな風に嘯きたくなる。
一緒に楽しく過ごすことにそういう話はいらないというなら。
そういう話は大好きだといいながら嫌な顔をするのは裏切りだろうと。
まだ巡り会っていないだけだ。
そう言い聞かせて人と会い、付き合い、そして奈落。
まだ巡り会っていないだけだ。
そう言い聞かせて人と話し、信じ、そして。
それでも。
繰り返しながら。
その時がくることを。
祈り。