生き物は生まれた瞬間から壊れていくもの。

人間は生まれた瞬間から壊れていくもの。

だから何かを結び付けては何かを作ろうとする。

だから誰かと結び合っては何かを作ろうとする。

壊れた分だけ。


そしていつしか、必ず、老いさらばえる。


当たり前のように出来ていたことが、

どうしても出来なくなる。

当たり前のように判っていたことが、、

どうしても判らなくなる。


ただ歩くだけなのに。躓き。転び。


だから年寄り。ボケている暇はない。

複雑で日々加速的進歩を余儀なくされる社会と、

戦わなくては。

だから年寄り。ボケている暇はない。

老朽し日々調和的死滅を余儀なくされる肉体と、

戦わなくては。


陽だまりで猫を眺める時間があるなら。

若者をはるかに凌ぐ鍛錬をその身に課し。


そうやって生きる年寄りにだけ、家族の温かい手は差し出されるべきだろう。


この社会を支え築いたのは偉大なる年寄りたち。

この悲劇と欺瞞に満ち溢れた社会を支え築いたのは年寄りたち。

今、社会を作り続ける社会人たちを教育したのは年寄りたち。

今、犯罪を犯し責任を転嫁し欲望のまま暴走する社会人を教育したのは年寄りたち。


定年という社会制度に乗って、全てからリタイアするのは早過ぎるぜ。

孫が可愛いと目を細めるなら。


年寄り。ボケている暇などない。

就労の為のしがらみから抜け出した今こそ、

声高に言えることがありはしないか。

年寄り。ボケている暇などない。

自分の為の人生が始まったなど、

自分たちが作り上げ継続してきた社会を黙殺する理由にはならない。


戦わなくては。

逃げずに。

戦わなくては。

逃げるな。


もしかしたら、やがて脳が壊れるのは、

そうして生き抜いた老戦士への、

遺伝子のはなむけなのかもしれない。

壊れた不自由な体で生きることを緩和する、


遺伝子のはなむけなのかもしれない。


だからその時まで。

ボケている暇はない。

自ら老人を名乗る必要もない。

ボケている暇はない。


愛と責任感と情と意識があるなら。


戦わなくては。