脳。日々死んでいく脳。

脳。人類もれなく壊れていく脳。


だから人には定年がある。

もはや職場では足手まといだから。

個々の能力や必要性など鑑みられない。

もやは職場の足手まといなのだから。


一括して退職。


ついに訪れたその日の朝、少し寂しげな横顔。

小さく見える背中で家族に見送られて、

最後の出勤。

何の。

何の疑問も持たずに。


まだやれるんじゃあないのか。

そんなに劣ってはいないだろう。


そういうことじゃあない。そんなことじゃあ、ないんだ。


脳。一刻としぼんでいく脳。

脳。例外なくダメになる脳。


だから人は定年に追われるのだろう。

もやは秒ごとに加速し複雑化していく社会の一線では、

使い物にならないという判断の下、

十把一絡げに辞めさせられるのだろう。


なのに何故。


市だ。県だ。国だ。社会の根幹を成す部位だ。

人で言おう。脳だ。日本社会を制御する脳だ。

そこが何故。

老人に占拠されている。


まだやれるからか。

そんなに劣っていないからか。

専門職だからなのか。

そういうしきたりだからなのか。


脳のひからびかけた者たちがこの社会の、

脳であるという恐怖。

脳のくずおれかけた者たちがこの生活の、

脳に居座るという不穏。


悪性腫瘍は早期切除。

それが正解なのだろうけれども。

悪性患部は早期切除。

それを唱えた者こそが切除される。


いつもより小さく見える背中を涙ながらに見送る家族を、

守りたいなら笑顔で答えている場合じゃあない。


脳に巣食う悪性老害腫を焼き払え。

全身に転移した慢性天下り腫を放置するな。


利権特権、奴らの紙オムツ代のために、

我が子の未来を差し出す侍なんかになるんじゃあない。

俗欲顕示欲、奴らの心の豊かさのために、

恋人の明日を差し出す侍になんかなるんじゃあない。


脳。人の全てを支配する脳。ひからびた奴らには渡せない。

脳。人の未来を描き出す脳。くずおれかけた奴らから取り戻せ。