それは恐怖。
ある日突然、訪れる。
例外なく。
それは呪縛。
ある晩ふと、覚醒する。
なぜ。なぜ。なぜ。
理由など。誰が知る。
なぜ。なぜ。なぜ。
原因ならば、こじつけられる。
けれどもそれが、何になるのか。
恐怖の名を。呪縛の名を。
フェチズム。
体を支配する衝動。
日々を支配する熱情。
誰も逃れること叶わない。
ひどく生臭い渇望が突き上げ。
涎がだらだら。
足首がいいのか。うなじがいいのか。
背中がいいのか。臀部がいいのか。
しばかれ罵倒されたいか。踏みつけ悪態をつきたいか。
同性に絡みつきたいか。異性になりかわりたいか。
ゴムで包み込まれたいか。排泄物にまみれたいか。
巨体に組み敷かれたいか。高齢者に生唾を呑むか。
無理矢理征服したいか。骸をかき抱きたいか。
異種族になぶられたいか。覗き見以外では昂ぶれないか。
小柄に惹かれるのか。従順というイメージに惹かれるのか。
同世代へのコンプレックスか。少年少女期へのコンプレックスか。
未発達な性への興味か。処女性への希少価値か。
無垢な笑顔に癒されるのか。無垢な体に触れたいのか。
それは恐怖。
ある日突然、表面化する。
それは呪縛。
ある日ふと、噴出する。
そして自分の正体に気付く。
余りに醜怪な正体に気付く。
そして辛く長く続く戦いが始まる。
余りに残酷な終わりのない戦いが始まる。
時にそれは決して満たしてはならない欲望が敵。
時にそれは決して許されない望めない性癖が敵。
耐え。堪え。踏み越えるな。
脳髄の奥に閉じ込め、解き放つな。
欲望は怪物。
変異を続け、人を飲み込む。
脳髄の奥に縛りつけ、飼いならせ。
欲望という怪物。
膨張し続け、理性を喰らう。
けれども。
負けるな。
人を傷つけて満たす怪物の胃袋に。
怪物の欲求に。
負けるな。