ゲイ嫌いのいない街をさがして -2ページ目

メキシコ上陸

アメリカでのトランジットを終え、いよいよメキシコ上空。さすがに乗客には、ヒスパニック系の人々が多い。窓の外はすっかり暗く、しょぼいプラネタリウムのような心細い夜景が延々と続いている。

人々がそこに暮らしているサインでもある灯りたちは、ばらけて存在するのではなく、身を寄せあうようにところどころにかたまっている。黒い、暗黒の宇宙に、ところどころ頼りなげな星雲が浮かんでいるかのようだ。勝手気ままに生きていきたいと思っても所詮、人は一人では生きていけないことがわかる。こんなに暗く寂しい宇宙の中で、僕たちは精一杯の灯りをともし、身を寄せあって生きている。夜になればこんなに暗く寂しくなってしまう大地に、心細いコロニーを作って暮らしているに過ぎないのだ。

なんて、寂しい夜景を見てすっかりセンチな気持になっているうちに、飛行機はメキシコシティ上空に到着した。銀河の中に入り込んだように、無数のまたたく光に覆われた、巨大な夜の街である。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ゲート

イミグレーションを通過して荷物を受け取り、お土産屋さんがびっしりならぶ通路を歩いて、ゲートを出る。ゲートを出ると、すぐ隣にテキーラが飲めるショットバー。中南米なんだなぁと思いました。あやしいオジサンたちが「タクシー」「タクシー」と声をかけてくるのに首を振りつつ(うかつに乗るとぼったくられそう)、タクシーチケット・カウンターでチケットを買い、タクシー乗り場へ。タクシーといってもガテンな雰囲気の乗り合いバンなので、なんか、これから土木作業にでも行かされるカンジ。

バンに乗ると、聞こえてくる言葉は全部、スペイン語(あたりまえだが)。ちんぷんかんぷん。な~んにも、わからない。ホテルの名前は通じたみたいだが、果たしてたどり着けるのだろうか。
なんか、このまま南米にでも売り飛ばされそう。。。。
ずっと寝てないし、疲れているし、早くも時差ぼけ状態でぼんやりしながら、心の中でよわよわしい悲鳴を上げるワタクシなのでありました。

た~す~け~て~。

メキシコシティの青山(?)、ソナ・ロッサへ

乗り合いバンには7人ほどの客が乗っていて、乗客の宿泊ホテルを順々にまわっていったが、僕は最後までバンに残された。英語のわからない運転手のオニイサンと交わした会話は「ハポネサ(日本人)?」「シ(はい)」のみ。沈黙が続く。バンは延々と走っていて、オレンジの街頭が妖しく灯る人気のない街角を通ったりしていた。「お、犯されるぅ~」と思って、ちょっとウットリしてみたが、あほな空想をよそにバンはソナ・ロッサのホテル・マルコポーロに到着。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-マルコポーロ外観


マルコポーロは大きくはないけれど、小綺麗なホテルだった。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-マルコポーロ室内

アニキっぽいドアマン君(彼の名前はカルロス君といい、ハンサムというわけではないが、ラグビー体型でめちゃくちゃアニキっぽく、フレンドリーなセニョールでした)がやさしく案内してくれました。チェックインを済ませると、アニキなドアマン・カルロス君のアテンドで部屋へ。部屋は広く、綺麗で、設備もバッチリ。安いのに、ここまでやってくれるとはエライ!がっちり体型のカルロス君が部屋の隅々まで、やさしく、アニキっぽくスペイン語訛りの英語でフレンドリーに説明してくれる。

「シャワールームは、ここだよ。お湯の出し方がわかるかい?そう、そう、正解!旅慣れているんだね。エアコンのスイッチはここ、レバーを上にするとエアコンが入るんだ。温度は低くしすぎると寒いから、真ん中ぐらいにするといいと思うよ。TVはここ。ミニバーは、ここ。お酒は好き?ここにお菓子もあるけど、スニッカーズよりメキシコのチョコの方が僕は好きだな。僕の写真を撮るの?もちろんOKだよ。男前に撮ってくれよ。どれどれ、見せて。ウハハ、ちょっと暗かったかな。いいカメラだね。そうそう、ベッドは、キングサイズが希望だったよね。ほら、大きいベッドでしょ?僕のアパートにあるベッドの倍以上あるよ。」ってなカンジ。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-カルロス君

ううう、制服を着たアニキっぽいガッチリ君とベッドの前で会話をしていること自体、「やらしい~~ッ」というカンジなのに、お国柄かカルロス君はやたらと僕の肩とか腕とかに触ってくるので、ドッキドキにキンチョーしてしまう。メキシコに来た早々、恋愛体質ぶりもフルスロットルなワタクシなのでありました。

そんな僕の胸のうちを知る由もなく、カルロス君はチップを受け取ると「グラッシャス(ありがとう)」と爽やかに微笑んで、去っていった。くたくたに疲れていたはずのワタクシだったが、カルロス君のボディ・タッチたっぷりのアテンドのおかげで、元気いっぱい(まじで単純)。パパパッとシャワーを浴びて、メキシコシティのゲイシーン探索に繰り出すのでありました。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ドア
「邪魔しないでください」っつー表記は、どうなのさ。「ノックしないでください」でしょ、フツーは。いかにも「中でイイことヤッてまーす」みたいなカンジじゃーん!ま、面白いので何も言わなかったが。


【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-トイレ
トイレにもカワイイ演出が。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-フルーツ
ウェルカムフルーツは、リンゴと青リンゴ。

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ソナ・ロッサは東京でいえば青山や麻布にあたるところだと聞いていたが、青山や麻布だけじゃなくて歌舞伎町や池袋も間違いなく入っている街だった。マリアッチの生演奏が面白そうな洒落たレストランやブティックなどがあるエリアを抜けると、いきなり怪しげな歓楽街がある。ゲイバーも数軒あるらしいのだが、どこにあるのかサッパリわからない。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ソナ・ロッサ

「スパルカタス」というワールドワイドなゲイスポット・ガイドが日本でも買えるが、あんまりアテにはならない(ニチョの情報なんか見てみると、かなりいいかげん)ので、買わなかった。

でも僕は「歩いているだけで必ずゲイスポットにブチ当たる」という世にも希な才能に恵まれている(まさに生まれながらのゲイなのだ)ので、あんまり焦らない。

それにしても、11時も過ぎているというのに、ものすごい数の人・人・人である。さすが、世界一人口の多い超密集都市。
物売りもたくさんいるが、6才ぐらいの子供の物売りもいて「たばこ(1本づつのバラ売り)買って~」とせがんでくるので、ついつい買っては吸ってしまい、吸い過ぎで気持ち悪くなってしまう。


人混みの中に、ゲイのグループやカップルなども、けっこう目にする。
やっぱり、ゲイスポットは近いのだ。彼らにバーの場所を尋ねてもよかったのだけれど、まぁそぞろ歩きましょうと思って物見遊山していると、5分も歩かないうちにレインボーフラッグを掲げるバーを発見。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ゲイバー発見

やっぱり、僕には才能があるねぇ。
ありがとう、オレ!


首都・メキシコシティのゲイシーン探索

ソナ・ロッサはゲイタウンじゃないけれど、頻繁にゲイっぽい人を見かけるので、NYのクリストファーなんかを思い起こします。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-マッチョ兄
マッチョな組合員、にっこり

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-♀♀
路上でブチューの♀♀

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ゲイショップ
ゲイショップ発見

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-おまわりさん
かわいいおまわりさんがいました

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-流しのお兄さん
流しのお兄さんもかわいかった

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-銃装備
銃はフツーに目にします


首尾よくゲイバーを発見し、よろこび勇んで中に入ろうとすると、入り口にいる用心棒のような人に呼び止められ、なにか言われる。「パスポート見せろってぇの?やだなぁ~ン、未成年じゃないよゥ~ん。いくつに見えたの~ン?」と、舞い上がってしまう。「なにを、図々しい!」と憤慨なさる方もいらっしゃる(っていうか、ほとんど?)と思うが、一昨年前にNYのクラブに入ろうとしたら「IDを見せろ」と言われたんだもん。ほんとだもん。舞い上がったまま「パスポート?」と尋ねると英語で、「ノー!100ペソ(1100円ぐらい)払え(入場料みたいなもの?)!」と、「寝言は寝て言えアホ」ぐらいの勢いで言われてしまった。ちきしょう!

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ゲイバー1

中にはいると、そこは、まごうことなきゲイバー。
1Fがショットバーで、地下にはモロ出しマッチョGO GO BOYがパフォーマンスを繰り広げるクラブ・スペースになっている。さまざまなタイプ・年齢層のゲイたちが来ているが、総じてジム体型が多く、立ち居振る舞いがオトコっぽい(ものすご~くスリムなクネクネ・オネェさんもいることはいるが)。そんなハンサム君たちが、あっちでもこっちでも、熱い「ぶちゆ~~~~っ」をかましあっている。そりゃもう、ハンパじゃなく熱い「ぶちゅ~~~~っ」。お互いの口の中を舌でかき回しあっているのが、ほんのちょっと見ただけでもわかる。いまにも、その辺でヤリ始めちゃうんじゃないかと思うぐらいの激しさであった。

日本人は概ね好意的に受け入れられるみたいで、あっちこちからアイコンタクトが飛んできた。

イケるんじゃん!

俄然、表情にハリが出てくるワタクシ。
ウィンクしてくれる人アリ、「かわいいね」と話しかけてくれる人アリ、ぺたぺた触ってきてくれる人アリ、みんなアプローチがストレートかつ積極的。そりゃもう、ウハウハのワタクシでございました。すばらしい国!英語を話せる人も多いし。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ゲイバー2

調子に乗って、すぐ近くにある別の店へ。ここは、1Fがバーで2Fがダンスフロア。さっきの店と違って女性も入れるようだ。ウェイター君たちがみんな可愛くて、「ああ、ここがタイであればなぁ」と思ってしまう。

ぼんやり見とれていると、白人の男性が近づいてきて「日本人ですか?」と、英語で尋ねてきた。彼の名はKさん(もらったネームカードを見ると、マスコミ関係の仕事をしている人らしい)。2年前に、日本に来たことがあるんだって。ボーイフレンドがメキシコ人なので、年に5回は米フェニックス州からメキシコに来るとのこと。

僕の英語の発音をすごくほめてくれて(そんなにペラペラじゃないんだけど。。。ほとんどニチョに来る外人に教わったようなものだから)、All Aboutでの仕事のことをものすごく熱心に聞いてくるので、「オニイサン、アッシに気があるね」と内心ほくそ笑んでいたら、「僕は若くてスリムな人がタイプです」と言われた。このやろー、握りっぺでも嗅がしてやろうか。

Kさんから「あなたの東洋のホロスコープは?」と不意に聞かれたので、一瞬、目が点になってしまった。なんでもKさんは、東洋占星術に非常に興味があり、本を読みあさっているらしいのだ。
東洋占星術と言われて僕は、細木数子・六星占星術のことだと思い、「金星(ヴィーナス)」と答える。すると、「なに言ってんだ、コイツ」という顔になるKさん。ありゃりゃ、じゃ、高島易のことかなと思って「七赤金星」と言うと、「違う!違う!サルか、犬か、マウスか!ワイルド・ピッグか!」と超じれったそうに言われてしまった。

なんだ、干支占い?

「動物の種類は、同じアジアでも国によって違うんだよ」
と言うと、「わかってる、わかってる、ジャパニーズ・スタイルでいいから答えろ」と、Kさん。
「ウマ」と答えると、ウマ年生まれの性格について、細かく熱心に語りだした。
「同じ年に生まれた人がみんな同じ性格のわけネェだろ、あんたのクラスメイトだってお調子者もいりゃあ、暗い奴だっていただろうがよ。」とツッコミたくなったが、Kさんがあまりに真剣なので、言い出せなかった。

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-Kさん

そのうち、Kさんのボーイフレンド(なるほど、スリムで可愛いタイプ)もやってきて、三人で乾杯する。
「私はオアハカ州にある、ゲイ差別がまったくないフチタンという町に行きます。それが、今回の旅の目的です。フチタンについて、知っていることがありますか?」と尋ねてみたが、「え?フチタン?」「ゲイ差別がない?」「そんな町があるの?」「聞いたことがないな」と二人。

「今年のNYレズビアン&ゲイ・フィルム・フェスティバルでは、フチタンのドキュメントを見ることが出来たと聞きました。」と言うと、二人とも「へぇぇ」と感嘆する。フチタンのことは、メキシコの中でも知る人ぞ知るという感じなのかもしれない。。。
フチタンに着くまでに少しでも情報収集できるかもしれない(できれば地図を手に入れたかった)と思っていたが、どうやら無理そう。心細くなってくる、ワタクシでありました。

Kさん達と再会を祈りあい、記念写真を撮り、バイバイして店を出た。
20メートルほど歩くと、「セニョール!」と呼び止められる。振り向くと、いま呑んでいた店のウェイター君であった。「ちょっと、店まで戻ってきてくれないか」と、彼。なんだろうと思って彼につれられ引き返してみると、店長らしき中年の男がニヤニヤして僕を待っていた。
「オラ(やぁ)」と挨拶すると、店長らしき男はグシャッと顔が潰れるような微笑み方をして「あなたは1500ペソ(1万7千円ぐらい)払えば、男を選んでセックスすることができる」と英語で言った。

そういうことかい!


なぁんだというガッカリ感と、危ない目に遭うわけではないことがわかった安堵感が入り交じって、アハハハと笑ってしまった。買う気なんてなかったが、一応聞いてみる。
「すべてのウェイターの子から選べるの?」
「ウェイター以外からも、選べます。3Fで、みんな待っています。」
「ホテルに連れて帰るんですか?」
「いいえ、この店のバックルームでセックスします。」
「全部で1500ペソなの?」
「そうです」
「どんなことができるの?」
「相手によって、ちがいます。ハンドジョブ(しごく)だけの男もいるし、インサートできる男もいます。」
「どのくらいの時間?」
「あなたが終わりと言うまでだけど、だいたい1時間ぐらい」

どんな男の子がいるのか見てみたい気もしたが、買わないわけにはいかない状況になるのもいやだったので、「今日は疲れているから、明日くるよ(うそ)。」と言って、店を後にした。ウェイター君達はたしかに可愛かったけど、バックルームで手早くヤルってのが、そもそも性に合わない。可愛い男の子と仲良くするのは楽しいが、セックスだけだったら、やってもしょうがないのだ。それにしても、1万7千円だって!たかいねぇー!もしかすると、東京だってそんなにしないんじゃん?

【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です-ぢょし

なんだか、どっと疲れてしまい、ホテルに向かうワタクシ。
途中、女の子の集団から「ハポネサ(日本人)!」「ハポネサ!」とまとわりつかれる。コールガールとかではなく、遊び来た女の子たちらしい。
英語を全然話せない彼女達。「ノ・エンティエンド・エスパニョール(スペイン語はわからないんだ)」と何度も言っているのに、何度でもスペイン語で話しかけてくる。まいってしまい、写真を撮ってポータブル・プリンターでプリントしてあげた。きゃっきゃと喜ぶ彼女達に「アディオス(さよなら)」と笑顔で言って、小走りに歩き出す。
お願いだから、ついてこないでクレー。

ホテルに戻ると、カルロス君が「ウタ!楽しかったかい、アミーゴ?」と微笑んでくれた。「遅かったから、心配していたんだよ。あんまり酔っていないから、安心した。なにか、トラブルはなかった?」 なんて人なつこいアニキなのだろう。ワタクシ、すっかり目がハート状態。

「だいじょうぶ、すごく楽しかったよ」と舞い上がりながら答えてしまったけど、「具合が悪い」と言ったらやさしく介抱してくれたに違いない。ちくしょう、思いつかなかったぜ。部屋に戻ると、ベッドにダイブして爆睡するワタクシでありました。