国民的お笑いコンビ、爆笑問題。
1990年代はとんねるず、ダウンタウン、ウンナンが3強といった存在であり、その中でもダウンタウンの松本人志はずば抜けた異彩を放つ不世出の天才コメディアンとして一時代を築いた。当時の私も松本王朝が永久に続かのような感情に支配されていたのだが、2000年代に入ってからその価値観に異変が起きてしまった。異変を起こしたのが爆笑問題であり、今や最も好きなコメディアンは松本人志ではなく爆笑問題の太田光となっている。
とにかく太田光の出ているテレビ番組というのは笑い休む暇がない。最初の1秒から最後の1秒まで爆笑がコンスタントに続くのである。太田光の飛び抜けた才能には尊敬や感動を通り越して恐怖さえ覚える。
たとえば、普通の外見の普通の人がいたとする。そしてその人を題材に笑いをとれといわれたら、並みのコメディアンだったらたいしたギャグは思いつかないだろう。たとえ思いついたとしても質が低い上、数もせいぜい2,3個だと思われる。しかし太田光の場合、たとえ笑いの題材がなんの特徴もない普通の外見の普通の人であっても、質の高いギャグを瞬時に20個ほどは思いつけるだろう。だからこそ最初の1秒から最後の1秒まで爆笑ギャグを連発することが可能なのである。これが太田光の傑出したところであり、私の中のナンバーワンコメディアンに君臨する所以なのだ。
ところで、世の中にはそんな太田光の卓絶した笑いを楽しむことができない人たちがいる。なんととある掲示板に『名前を爆笑問題から冷笑問題か失笑問題に変えたら?』といった中傷のコメントが書き込まれているらしいのだ。
『名前を爆笑問題から冷笑問題か失笑問題に変えたら?』━━このコメントを書き込んだタイプの反爆笑問題の人間は、おそらくひとりやふたりではなく全国にかなりの数いるのだろう。松本人志の別格の笑いを理解できない人が山ほどいるように。
しかし、である。爆笑問題は名実ともにトップに君臨するお笑いコンビであり、実際数々の賞にも輝いたりしている。もしも爆笑問題などという大きく出た名前にもかかわらずまったくおもしろくなかったのなら、『名前を冷笑問題に変えたら?』といった意見も筋が通るし理解できる。しかし爆笑問題は多くの賞に輝いているだけでなく、その実力もまぎれもない本物だ。それだというのに、なぜ『冷笑問題に変えたら?』などという罵倒が口から出るのだろうか?
『反爆笑問題の連中はお笑いに興味がないのでは?』と思われる人がいるかもしれないが、お笑いに興味のない人間が爆笑問題の番組を見たりはしないだろう。お笑いに興味があるからこそ爆笑問題の番組を見ているのであり、爆笑問題のことを“つまらない”と感じているのである。それに『名前を爆笑問題から冷笑問題に変えたら?』という発言は、普段ほかのコメディアンに爆笑させてもらっているがゆえの発言だ。爆笑問題以外のほかのコメディアンに楽しませてもらっているからこそ『名前を爆笑問題から冷笑問題に変えたら?』、つまり『おまえらは全然おもしろくないんだ』と罵倒しているのである。
では、反爆笑問題の連中は、いったいどんなコメディアンのファンなのだろうか?
爆笑問題は技巧的なタイプの漫才コンビである。そんな爆笑問題がつまらないと感じるということは、島田伸助やダウンタウンといったタイプのコメディアンも好きではないのだろう。
また、爆笑問題は“爆チュー問題のクリスマスライヴ”といったストレートでわかりやすい笑いのコントもやっている。それでも爆笑問題のことをつまらないと感じているということは、とんねるずや志村けんなども好きではないのだろう。
漫才もコントもきらい。残るはものまねと落語くらいだが、太田光はものまねも器用にこなすし、また立川談志から天才の太鼓判を押されてもいる。よって落語ファンの中にも爆笑問題ファンはきっと多くいるのだろう。
そうなってくると反爆笑問題の連中は、本当にどんなジャンルのどんなコメディアンのファンだというのか?仮にものまねファンだとして、おもに漫才やコントをおこなう爆笑問題に向かって『おまえらは全然おもしろくない』と罵倒するのはまったく筋が通っていない。
たとえばボキャ天時代、爆笑問題と人気を2分したネプチューン。私はネプチューンのギャグで笑ったことは1度もない。それはネプチューンがつまらないからではなく、単にネプチューンの笑いが私の好みではないだけだ。それと同じように、ものまねか落語のファンと思われる反爆笑問題の連中も、おもに漫才やコントをおこなう爆笑問題の笑いが好みではないだけであり、正真正銘の傑出した実力を誇る爆笑問題を『おまえらは全然おもしろくない』とけなすのは筋が微塵も通っていないのである。
……が、はっきりいって、今まで書いてきたことは私の単なる考えすぎで、反爆笑問題の連中はただ単純に爆笑問題のスピーディーで知的技巧的な笑いにおつむがついていけていないだけなのだろう。『反爆笑問題の連中はものまねか落語のどちらかのファンなのだろう』という推測もナンセンスなものであり、爆笑問題に向かって『名前を爆笑問題から冷笑問題に変えたら?』と罵倒する連中はくり返すように、ただ単に爆笑問題の高度な笑いを理解できるだけの知能がないというだけなのである。
お笑い界の頂点に君臨する爆笑問題に向かって『名前を爆笑問題から冷笑問題に変えたら?』と罵倒する連中。彼らは爆笑問題に『自分たちがおもしろくないことに1日でも早く気づけ』というメッセージを送る前に、自分たちが脳味噌の限りなく小さい低能人間であることに1日でも早く気づくべきだろう。
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