ご存知、超大物コメディアンの明石家さんまなのだが、彼は10代の頃サッカーをやっていたこともあり、芸能界屈指のサッカーフリークとして有名である。しかし、明石家さんまの言動を細かく検証していくと、どうもそれを鵜呑みにできない部分が出てくるのだ。
まず、日本テレビ『恋のから騒ぎ』でのとある発言。大沢あかねの『こっちがジーコ、こっちがフィーゴ、そしてここがベッケンバウアー』というギャグが話題にあがったとき、明石家さんまはふとこういったのだ。
「俺が若い頃のスター選手や。ジーコ、ベッケンバウアーってね」
しかし、この発言はおかしい。なぜならジーコは1980年代を代表する選手であり、ベッケンバウアーは1970年を代表する選手だからである。
『ジーコ、ベッケンバウアーってね』といういい方では、まるでジーコとベッケンバウアーが同じ時代に活躍した選手のようではないか。ジーコとベッケンバウアーは年代はおろか国籍もプレイしたリーグもちがうし、ワールドカップなどで当たったこともないというのに……。
また、たとえば今から20年後、ひとりのおっさんが若い人たちに向かってこのようなことをいったとしたらどうだろうか。
「俺が若い頃の人気アイドルだ。モー娘、おニャン子ってね」
……なんかへんではないだろうか?モーニング娘が活躍したのは2000年代で、おニャン子クラブが活躍したのは1980年代のことだ。順番がちがうはずである。
ジーコとベッケンバウアー━━もしもサッカーに詳しい人だったら、少なくとも活躍した年代が先の選手であるベッケンバウアーの名前から口にしていただろう。
また、とあるスポーツ番組でのサッカーコーナーでのことである。ゲストの人がマイベストイレブンを発表したのだが、その中にサッカーの神様ペレの名前が入っていないことに明石家さんまは疑問を感じたらしく、『この中にペレの名前が入っていないのが……』という言葉をもらした。
しかし、マイベストイレブンの中にペレの名前が入っていなかったのなら、『ペレは別格の選手であり、ベストイレブンにくわえるのには抵抗があるという理由ではずされているのだろう』といったことはちょっとしたサッカーファンなら容易に想像がつくはずである。『なんでペレの名前が入っていないんですか?』などという質問は口にしないだろう。
そしてきわめつけが『踊る!さんま御殿!!』でのとあるリアクションである。
その回はゲスト有名人が素人の友人をつれてくるというもので、ブレイク前の上地雄輔が友人の男性をつれてきていたのだ。そしてその男性はサッカーをやっていたらしく、なんと高校時代あの中村俊輔と戦ったことがあるらしいのである。
中村俊輔である。世界の中村俊輔である。日本人のみならず、世界中のサッカーファンがその名を知っているアジアの奇跡、中村俊輔である。その中村俊輔と高校時代戦ったことがある人がすぐ眼前にいるのだ。サッカーファンとしてこれほどの僥倖が果たしてありえようか?
そして私は明石家さんまが中村俊輔の話題をどのように広げていくか期待したのだが、明石家さんまは特に強い反応も示さず、中村俊輔の話題には触れずに別の話題に移ってしまったのである……。
挙句の果てに明石家さんまは、こんな言葉を発したこともある。
「日本のあまりサッカーを知らない人たちも、今日の試合は満足したでしょう」
……なんてことをいっていながら、彼は試合が放送されていた間、サッカーに造詣が深い印象を与えるようなコメントは一切口にしていなかった。
“あまりサッカーを知らない日本人”とは、自分自身のことではないのか……?
おそらく『俺はサッカーに詳しいんだ』といったことを頻繁にいっていればカッコイイ印象を与えられるであろうという魂胆なのだと思われるが、あまりサッカーを知らない分際で無二のサッカーフリーク面をする輩は、真にサッカーを愛する者たちには非常に不愉快な存在なのだ。明石家さんまにはもう二度とサッカーフリーク然とした言動をとるのをやめてもらいたい。
……しかし、明石家さんまはコメディアンとしては大ファンなので、『たいしてサッカーを知りもしないくせに知ったかぶりの言動をとって世のサッカーファンのみなさんに不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした』と謝罪さえしてくれればいい。そして再び日本国民の顔を笑顔にする大活躍をしてもらいたい。