こんにちは。Dataと小勝負です。社内資料では何度も「日経平均が1日で300円以上急落するであろう理由」を書いて来たので、特に驚いてはいませんが、改めて理由を考えてみます。


先週末の日本株の状況は、以下の通りです。

 23日の東京株式市場で日経平均株価が急落し、下げ幅は1143円と、昨年秋から始まった株高・円安局面で最大となりました。これまでの急速な株高をけん引して来た海外のファンドや短期売買の個人などが一斉に売りに回り、下げを増幅しました。案の定、売買動向が偏りがちな超高速・高頻度取引(HFT)やCTA(商品投資顧問業者)なども日本株売却を急増させ、株価急落を加速させました。アジアや欧州市場も軒並み(連れ)安とはなりましたが、米国株の下落率の低さが目立ちます。

 市場では中長期的な株高基調は崩れていないとの見方が多い一方で、当面は波乱が続くとの指摘もあります。少なくても今後は一層、個別銘柄や投資信託(投信)の優劣がはっきりして来るのは確かでしょう。日経平均の終値は前日比1,143円28銭(「いいよみには」や「いいよさんには」と読めます)(7.32%)安の1万4,483円98銭と、下げ幅は13年ぶりの大きさでした。トヨタ自動車が5%下げるなど東京証券取引所第1部では98%の銘柄が下落しました。昨年11月中旬から株高・円安が始まった「アベノミクス相場」は、初めて本格的な調整を迎えました。

今回の日本株急落の背景には、3つの大きな理由があります。

まずは中国景気の悪化です。5月24日(金)の朝方には、外国為替市場での円安・ドル高を受け日経平均が300円超上げる場面もありました。しかし10時40分過ぎに、5月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の50割れという景気悪化を示すニュースがあったのを機に、混乱が始まりました。株価指数先物に売り注文が相次ぎ、日経平均も下落。大阪証券取引所は午後2時すぎ、日経平均先物の取引を一時中断する「サーキットブレーカー」を発動しました。
実は、先月(2013年4月)の中国の「大ヒット商品」は、価格が急落した金です。金以外の商品の小売現場での販売状況は、依然として増加中ながらも減速中なのです。


次に、コンピューターによる自動売買が値動きを加速しました。

 東証では1秒間に何千回以上もの取引を繰り返す「HFT(高頻度取引)」と呼ばれる手法の比率が、半分近くにまで増加。さらに、商品投資顧問(CTA)と呼ばれるヘッジファンドも市場の騰落に追随した取引をします。こうした取引が膨らむと相場の流れが一方向に傾きやすくなるのが、近年の課題です。いちいち驚いていては身が持ちませんが、日経平均は取引終了にかけての15分間で実に400円近い急落です。

そして、「金利上昇リスク」の登場です。

米国長期国債の金利が一時2%まで上昇したことを受け、長期(日本国債)の金利が、5月23日(木)の朝に、1年2カ月ぶりに節目となる1%ちょうどにまで上昇(価格は下落)しました。「利払い増加による日本の政府と企業の資金繰り悪化による増税と景気悪化」を連想させる、気になる動きです。

実はこれは、これまでの円安・株高の流れが逆転するリスクでもあるのです。


 5月23日(木)の外為市場では、安全資産の円を買いドルを売る動きが優勢となり、夕刻に1ドル=100円台まで円高が進んだのです。日本株を買う海外投資家は通常、円安時に備えたヘッジの円売りをしておきます。保有する日本株の価値が上がるとヘッジ売りが増え、円安がさらに進む状況です。これまでは円安で日本株が買われると一段の円安になる(好)循環がありましたが、23日はこれが逆回転したとみられています。円高が株安を招く悪循環につながるリスクもあるのです。まだ成長戦略が本格的に動き出していない段階の「アベノミクス(日本経済復活大作戦)」にとって、円安株高はいわば生命線。それがまだ万全ではない状況なのです。

 昨年11月中旬から今月22日までに日経平均は8割上げ、4月の日銀の金融緩和発表後の1カ月半だけで2割強上昇。もともと株式市場では「前日までの上げは異常」と相場の過熱への警戒感が高まっていました。その中で悪材料が続き、投機気味の相場が軟化しました。当面の日経平均の下値のめどは1万4,000円以上との予測が、現時点では目立っています。幸い23日は日本株売買代金が5.8兆円と過去最高を記録しました。これは、日本株を買う動きも多かった事を、意味します。

 ちなみに、過去10年間の日経平均の平均値は1万1,700円。過去20年間の平均値は1万4,000円。過去30年間の平均値は1万6,300円です。株価が割安な時に多く買い、割高な時に少なく買う「ドルコスト平均法」で長期投資をすれば概ね報われるという事は、現在も通用しています。ただ当面は荒い値動きが続くとの見方も多いので、心構えと場合によっては銘柄等の見直しはしておきたいところです。

 なお、今回の日経平均急落は、重要な株式投資の判断指標である信用評価損益率から見ると、常識的な範囲内の出来事です。


 市場全体の動向を占う指標として信用評価損益率があります。信用買い残高の平均的な含み損益の状況を示します。含み益が出た場合は返済売りで利益が確定されやすいため、信用評価損益率はマイナスになるのが通常です。経験則では損益がマイナス5%より改善すると、利益確定売りが増えるため相場の天井が近いと判断されます。逆にマイナス20%程度になると相場の底入れが近いとみなされます。

なお、直近の信用評価損益率(東京・大阪・名古屋3市場)はプラス2.09%と異例の高水準にありました。日経平均が急落したはずです。

 5月24日(金)の米シカゴ市場では日経平均先物6月物(円建て)が大幅に続落し、前日比で495円安の1万4,305円で取引を終えました。同日の大阪証券取引所の日中取引の終値を、305円も下回りました。円高・ドル安の進行に加え、日本の株式相場が不安定な動きを続けていることを懸念する投資家の売りが相次ぎました。今週の日経平均は、米中の景気などで特に良いニュースがなければ、まだ弱含みが続くかも知れません。

今回は、以上になります。