吉田えり投手との再会 | まだまだ続く独り言

まだまだ続く独り言

在米スポーツライターの雑記帳

まだまだ続く独り言-えりちゃん

今週はオースルター戦のため月、火曜日と完全オフ。つい数時間前までコンピュータも開かずにのんびりさせてもらいました。明日からシーズン後半戦に向け、心身ともに取材態勢を整えたいと思います。

ところで先週は久々に独立リーグでプレーする吉田えり投手の取材に回ることができました。2年前は彼女が在籍していたチコで先発する度に取材していましたが、昨年はサンディエゴで行われていたサマーリーグに参戦していた時に一度様子を覗きに行っただけでした。久々に実戦登板を取材することができました。

すでに結果はご存知のように4回はワンアウトも奪えずに途中交代し、3回0/3を投げ、2安打5失点、6四死球で敗戦投手になりました。結果だけ見れば2年前の時のチコの時とあまり変わっていないように見えますが、内容は2年前とは全然違い、彼女の投球にすごい成長の跡を実感することができました。

2年前は一度ナックルの制球が乱れると、えりちゃんはマウンドの上で完全にテンパってしまい、その表情から何から完全に我を見失っているのが明らかでした。もちろんピッチング自体もどうやって投げていいのかもわからない状態で、打者の背中側にボールがいったり、もうストライクが入るような状態ではありませんでした。

しかし今回は制球を乱しながらも、とにかくマウンド上で修正しようとする冷静な姿がそこにありました。しかもナックル自体も判定はボールながら、ほとんどベース付近に集まっており、時には球審のボールの判定にベンチから見守った味方選手たちから不満の声が挙がるほどの際どかったのも何球もありました。

実は打たれた2安打にしても、強い打球が直射日光と重なりショートが取り切れなかったものと、もう1つはショート前でイレギュラーしセンター前に転がった打球で、まともに打たれた打球は1球もありませんでした。えりちゃんのナックルは間違いなく相手打者を翻弄していました。

それを裏づけるように、今シーズンの彼女の被打率は2割1分1厘です。これはチーム内で2位タイの成績で、相手打者を抑えるという点では十分すぎる数字だと思います。えりちゃんが開幕から3連勝したのも、決してまぐれではないというのをわかってもらえるかと思います。


ただし開幕からローテーションを守りながら(監督はえりちゃんの体力面を考慮しながら週一での起用を続けています)投げ続けるのは彼女にとって初めての経験です。ここに来て登板間のコンディショニング、体調管理の仕方に試行錯誤しているようです。これも彼女にとって投手としての経験不足からくる課題の1つです。

今後さらに成長していくには、こうした経験を通して次々に出てくる課題を1つ1つ克服していかねばなりません。ですがえりちゃんにはまだまだ可能性があると感じた出来事もありました。

今回の先発では、監督が投手交代を告げにマウンドに向かったとき、えりちゃんが心の底から悔しそうな表情を見せたのです。後で確認したところ、「ナックルを修正できなくて悔しかった」のだそうです。2年前は自分を見失うと、マウンドに投げることに恐怖さえ感じていた彼女がです。この瞬間、彼女はもっと成長できるなと自分なりに確信しました。

これまでえりちゃんが独立リーグでプレーしてこられたのは女子選手だという要素が多少なりとも加味されていたのは否めませんが、その一方で着実にこのレベルでも通じる投手になりつつあるのも間違いのない事実です。

ですが、今後さらに成長し、もっと上を目指すことになっていくと今度は女子選手であることがネックになってくるでしょう。もしメジャーやNPBのチームと契約してもらえるようになるには、えりちゃんが独立リーグで誰の目から見ても凄い成績を残し、この選手と契約しないのはおかしいだろうと誰もが思ってくれるような投手にならなければ最後の壁は打ち破れないと思います。

とりあえずえりちゃんはまだ20歳。これからも彼女の負けん気とやる気を見守りたいと思います。

最後にもう一つ。かつてgooブログで何度もえりちゃんを取り上げてきました。その時に読者から「“えりちゃん”なんて呼び方をする記者のいうことは信じられない」的なコメントを頂きました。

もちろん仕事上で記事を書くときはそんな表現は絶対に使いませんが、このブログはあくまで私的な考えを述べているものです。というよりむしろ、世間一般にまだえりちゃんのナックルが正当評価されていないように感じる部分が多く、彼女に肩入れ、応援したいという意味で、“えりちゃん”を使用しています。

それでも以前のブログでもそうだったのですが、多少記者の要素も残すべく、最初に名前が出てくるときは“吉田えり投手”にしてあります。気づいていた読者もいてくれたのでは?

今日はこの辺で…。