いやはや、全くの勘違いで思いもよらぬ映画を見ることに。
このところ歴史的な側面でいささか重めの感想を抱くものに接することが多かっただけに、
軽い気分で見られるアクション映画を見るつもりでいたのですけれど、
どうやらジャッキー・チェンが出るのは「シャンハイ・ナイト」だったようで。
見たのは「ラスト・シャンハイ」というタイトルでありました。


ラスト・シャンハイ [DVD]

見始めてすぐに「これは…」と予想を覆す暗い雰囲気。後から覗いたAmazonの内容紹介に

「上海マフィアの一代記を描く…ノワール映画」とあるのも「なるほど」と思えるもので、

すぐさま間違いには気付いたものの、結局全部見てしまったのですね。
それだけめっけもの感があったというべきでありましょうか。


これまた後から覗いたレビューでは、評価の良し悪しが両極端に二分しているような。
高評価の方は偏に「ノワール」として上々の出来と受け止めているようです


昔、東映ヤクザ映画が人気だった(といって見たことありませんが)ことがありましたが、
いわゆる「ノワール」といった方向で見る方々は、かつてのヤクザ映画で
高倉健や菅原文太に男の生き様が見て「かっこええ」と同じ感じだったりするのかも。
もちろん当時よりは映像的に現代風にスタイリッシュになっているとしても、
本質的な受け止め方として。


それと反対に低い評価の方は(背景に第二次上海事変が置かれたこともあましょう)、

反日感情を煽る点が無視できないといった受け止め方であるようなのですね。


個人的には反日の印象よりもむしろ、清朝末から中華民国樹立直後の

混沌とした中国国内が浮かび上がるように思えるところです。


それぞれに自らの側の権益を拡大せんがため、あるいは保持せんがため

徒党を組んではばらばらに動いており、自らに利すると考えれば

相手が日本軍であっても利用する(利用されている?)といったところは
日本軍に付け入る隙を大いに与えてしまったのではなかろうかと。
(もちろんそのことが日本側を肯定する材料には全くなりませんが)


まあ、そのような時代背景の中にあって、
戦火に引き裂かれる恋人どうし…てな登場人物がありますと
ロマンティックな悲恋の物語でおしまい?とも思うところですけれど、

先に触れたような当時の中国の内実が凝縮する場所として「魔都」とも言われた上海を

舞台に描くことでスケールの大きさを出しているように思えるところです。


つまり、先の高評価・低評価のいずれにも与することなく見たわけでして、
結果的には歴史に虚構を加えたストーリーも、また映像、そして音楽の面も含めて
よく出来た映画であるような気がしたのでありますよ。


そうした印象だっただけに、先の評価のどちかに振れて見てしまっては
見方としてはもったいないのではと思ってしまうところでありました。


そうそう、またタイトルのことですが、「ラスト・シャンハイ」という邦題は「どうかいねぇ…?」と。
カタカナ書きですとさも英語タイトルのまんまかと思うとさにあらず。
英語タイトルは「The Last Tycoon」なので、そのままカタカナ書きにしては

別の(ハリウッド)映画と同じなってしまう。


で、それを避けて原題の「大上海」と足して2で割って出来たのが「ラスト・シャンハイ」かも。
つまり「ラスト・シャンハイ」というタイトルには何の意味もないのですよね(よくあることですが)。


原題の「大上海」とは、主人公が裏社会を仕切る際に

その象徴として聳えている「Grand Shanghai」というビルのことであるようですから、

「グランド・シャンハイ」の方がまだしも…と思ったところで気付いてみれば、

「上海グランド」なるまた別の映画がありますなあ。


結局、どういうタイトルが良いのかまでは提示できないでいますが、
ただ少なくとも「ラスト・シャンハイ」には(こじつけて解釈すればできないことはないにせよ)
およそこの映画の看板としては適当なものになっていないようで、
その点でも損をしているかなとは思ったのでありますよ。


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