染料植物園はその名のとおりに染料となる各種の植物を植えてあるわけですね。
「草木染め」という言葉がありますけれど、古来の染物はかなり草木に頼っていたでしょうから、
わざわざ「草木染め」とことわるまでもなかったのではと思ってしまいます。
園内をざあっとひと回りする中で、一見したところでは単なる野山の散歩道かと思うところながら、
ほとんどの植物には種類の名前と、その植物からどんな色合いを作り出せるかの説明が。
例えばこのクワの木であれば、こんな具合です。
説明文の中にある「衣服令」というのは
「大宝律令」の諸々の定めの中の服装に関することであるそうな。
その「衣服令」に「くわそめ」という言葉が出てくるというのですから、
古くからある染料なのですなあ。
しかし、桑による色となれば実がつぶれたときの暗紫色(つまりはどどめ色)を思い出しますが、
ここで使うのは幹や根、葉の方で、黄色や鶯色が生み出されるのだそうでありますよ。
ナンテンも赤かと思えば、やはり黄色や薄茶、鶯色。
クロチクもまた黄色や鶯色、枇杷色と同系色ですが、いろんな素材を使っていたのですなあ。
そんな中にあって青系を出すにはやはりこれですな。
もはや冬枯れ的な状態に見えますけれど、「アイ」でありますよ。
原産地はインドシナ南部だそうですが、
日本には飛鳥時代以前に中国経由で入ってきたそうですから、
ほとんど日本のものと意識されていたでしょうね。
そこで「あおによし」てな言い方と関係があるのではと妄想が始まるわけですが、
ここでの「あお」は「青土」由来の顔料なのだそうですよ。
とまあ、染物に特段の興味があるでもないのに一回りしてみれば、それなりに興味深いというか。
ただ時季を選んで訪ねた方がよさそうですねえ。
というところで、今度は染料植物園の入口脇から枝分かれしている遊歩道を辿って
高崎のランドマークたる白衣大観音を目指すことに。
木道を進むことしばし後にやおら赤く塗られた大きな吊り橋に出くわします。
「ひびきばし」と名付けられたこの橋は観音山丘陵の分かれた尾根筋を繋いで、
染料植物園と白衣大観音を結ぶショートカットになっているようでありますね。
いささか高所恐怖症気味ながら、恐れ多くも橋の半ばで下を覗いてみれば、
いやあ、これは結構な高さがありますなあ。
谷底からは28.5m、ちょうど10階建てマンションの屋上から見下ろしているようなものでしょうか。
と、渡り終えてすぐさまの坂道を登り、途中から振り返れば橋の全体像が見えますけれど、
なかなかに立派な面持ちではなかろうかと。
登り詰めて尾根道に合流すると、道標に従って左へ。
さすれば白衣大観音はもう目と鼻の先…という、束の間の山道歩きなのでありました。