なかなか酒にこだわる両親連れで青梅の方へ行ったとなれば、

酒蔵にでも立ち寄ってとなるところですが、
あたりでいちばん有名なのは「澤乃井」を出している小澤酒造ではなかろうかと。


ですが、青梅エリアでは最も知られた観光ポイントのひとつでもあることから

混雑は必至と思われ、まあ、母親は一度行ったことがあるということでしたので、

同じ澤乃井絡みでも少々毛色の異なるところを訪ねることにしたのでありました。


訪ねた先は「澤乃井 櫛かんざし美術館」。

真ん中に見える大きなエンブレムは、そのつもりで見れば「櫛」であると知れましょう。


澤乃井 櫛かんざし美術館


両親が、というより母親が一緒ではなく、一人で出かけていたとしたら
まずここに立ち寄るとは思ってもみないことであったろうと思いますが、
覗いて見たら見たで、それなりに興味深いといいますか。


まずもって日本の伝統的な工芸技術の粋を窺い知ることができようかと。
愛でることそのもののために作られるのではなくして、
基本的には実用品であり、使いながらにして「ほほう!」と他人に思わしめ、
使う側も自ら満足度が高まるといった品々は何も櫛や簪に限ることなく、
あらゆる用途のものに見られるところでありますね。


そんなようなことも考え合わせつつ、浮世絵の美人画などに目を向けてみれば、
これまではほとんど目を留めていなかったことながら、
描き込まれた櫛や簪、笄といったものが人物の個性の一端を語ってもいるのでしょうし。


折りしもEテレ「趣味どきっ!」で火曜日に放送中の「旅したい!おいしい浮世絵」では
浮世絵に描き込まれた食べ物を、すし、うなぎ、天ぷら、そばとクローズアップしてきてますが、
これまたあんまり気にかけていなかった食べ物をヒントに
絵を読み解いてみるというのも楽しからずや。
同様に櫛や簪、笄をヒントにして見てみれば…ということになるわけですね。


ところで、改めて面白いものだなと思いましたのは櫛の使い途でありまして。
日本最古の櫛と思しきものは、佐賀県の遺跡から発掘された
約7000年前のものだそうですが、

その頃の縄文人が櫛を何のために使っていたかと考えれば、

そりゃあ髪を梳かすためでありましょうなあ。


その後も櫛の使い方の基本形は髪を梳くことではなかったかと。

これが(男性も髷を結うわけですが)取り分け女性の髪形の結い方に装飾性が加わっていって、
髪そのものに装身具を付加するようになった。

整髪具であった櫛が装身具にもなって、

その装飾性が競われるようになったのが江戸期でありましょう。


ですので笄はもとより簪も

櫛と同様に(というかそれ以上に)装飾性の勝負ポイントのように思われますから、
櫛に比べて登場するのはかなり遅いのではと考えたわけです…が、
どうやらそうとも言えないようで。
「千葉や茨城など各地の縄文遺跡から、カンザシが出土してい」るのだとなれば…。


ですが、いったいどんなふうに使われたのかと考えてしまうところですけれど、
想像するに長くなった髪をくるくるとまとめて一本差し、
頭頂部や後頭部でおだんごを作るみたいにしていたのかもしれませんですね。


で、細く尖らせたのと反対側の先には彫刻が施されたりという細工がなされていたとなると、
ここでもまた縄文人侮りがたしでありますなあ。


とまあ、思いがけずも訪ねることになった櫛かんざし美術館、
思いの外あれこれと想像を働かせることになりましたですが、
万一同行者がじっくり展示を見ている途中で「ふぁあ~」となった場合には、
館外の景色を眺めてのんびりというのはいかがでしょうか。
御岳渓谷を見下ろすなかなかの景観を楽しめる場所でもありましたですよ。


櫛かんざし美術館から眺める御岳渓谷

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