都心でのお泊まり会合に出向くのに
「まあ、ここに立ち寄ってからでも間に合うな…」と出かけたのがお江戸両国亭というところ。
以前、講談を聴きに行ったお江戸上野広小路亭の姉妹店でありますね。
ここで今回の試みは琵琶の弾き語りを生で聴いてやろうといわけでありました。
琵琶と言いますと、盲目の奏者が「平家物語」を語る…
くらいなふうにしかイメージできないくらいに予備知識は無しなのですが、
この日は「錦心流琵琶演奏会」ということで、薩摩琵琶の系譜に連なるものだそうですよ。
いったい他に何琵琶があるのかも知らないのですけれど、
古来ある薩摩琵琶を明治になって洗練させた(?)のが錦心流なのだとか。
ちなみにですが、薩摩琵琶という元来ローカルな存在が
全国区になった、というか東京でも流行りをみせた背景は、
明治維新の立役者に薩摩藩士が多く、それが東京に出てきた…てなことも関係があるらしいっす。
とまれ、そんなこんなの錦心流薩摩琵琶を聴いてみたわけですが、
何せ入場無料の演奏会とあって、お稽古をしている人たちの発表会も兼ねていたのかも。
計七人の出演者の、順番が進むに従って「ふむふむ」という演奏になっていったなと
初めて聴く者にも思えたものですから。
最初の方と最後の方で何が違うといって、ひとつに発声、ひとつに琵琶演奏のテクニック、
そして何より語りと楽音とで作り出される流れのとぎれなさでしょうか。
手習いはじめの方であったとは思いませんが、
語りのところは語りを気に掛け、琵琶のところは演奏を気に掛けするものですから、
語り、琵琶、語り、琵琶…と、部分部分が孤立してしまいがち。
本来は語りにかぶさって「べべん!」となるようなところが、
何とも惜しいことになってしまうのでありますよ。
最後の方の演者になると、その辺はよぉく押さえられていて「ふむふむ」となるわけですが、
ここで思うのは「弾き語り」の難しさでありますね。
浪曲 も浄瑠璃 も、語りと音曲の担当が別ですから、そうした点でも
琵琶の弾き語りはより古い芸能の形態なのだろうと思った次第でありますよ。
さて、曲目(というのかな…)ですけれど、題材として取り上げられていたのは、
やはり定番と言っていいのか、「平家物語」から平敦盛、那須与一、
古いところで渡辺綱の羅生門鬼退治、幕末ものでは井伊直弼 に白虎隊、
戦国では秀吉に水攻めにされた備中高松城の話と、基本的には古典、歴史もの。
ですが「こういうのもあるのか…」と思いましたのは「吹雪の敵」とのタイトルで、
何と!新田次郎の小説で有名になった(以上に映画化でというべきか)
「八甲田山 死の彷徨」を琵琶で弾き語ってしまうもの。
もっとも、各々の持ち時間は15分ほどでしたので、全てはほんの一部分であったわけですが。
で、これだけ歴史がらみの話が語られるとなれば、個人的には興味津々のはずでして、
「面白かったでしょ?」と聞かれれば、「そりゃあもう!」と答えたいところながら、実際は…。
先にも触れました、語りと演奏の絡みの部分がうまくいってるか…てなところがどうにも気になり、
ストーリーがすとんと入ってこなかったものですから。
ま、要するに聴く側の修業が足らんということになりましょうなあ。


