旅のガイドブックを見ながら、「ああ、ドイツ語、忘れてんなぁ…」と。
こうしたことを書きますと「この夏はドイツ行きだね」とネタばらししているようなもんですが、
考えてみるに北欧に行こうが、オランダに行こうが、スイスに行こうが、そもドイツに行こうが、
結局のところ、旅してまわるくらいの話であれば、行く先々ではみなさん英語に堪能でらっしゃる。
元のところで印欧語族という根っこの共通点がじわりとあって、
何とかなってしまっているのですかねえ。
その点、語族が違うからという言い訳に寄りかかるわけでもないですが、
日本人の場合は長い年月を英語学習に費やしても、なかなかものにならないケースがあるような。
かくいう自分もその一人ではありますが…。
では、やっぱり印欧語族でもあるインドではどうなのかと思うと、
これは語族が云々というばかりのことでなく、大英帝国に組み敷かれていたということもあって、
英語の使い手はままいるということになるのでしょうかね。例えば、香港みたいに。
といっても、必要性やらステイタス?みたいなことも含めて、みんながみんな英語ではないと思いますが、
英語が使えないということがどう受け止められるかという点で、日本とは違う文化というか、
違う環境なんだなと思ったのが、「マダム・イン・ニューヨーク」という映画でありました。
例によって「マダム・イン・ニューヨーク」ってタイトルはどうよ?!と思うところでして、
原題は「English Vinglish」というもの。
意味が取れずに「Vinglish」をあれこれ検索したですが、
どうやら意味がある言葉ではないらしく、音的に「Einglish」にひっかけた語呂だけのことのような。
日本語で「何とかかんとか」という場合の「かんとか」に当たるという記述がありましたけれど、
なるほどね…と思いましたですよ。
とまれ、内容としては「英語学習狂想曲」とでも言ったらいいところでもあろうかと。
インドのとある「マダム」(カタカナで表記すると、独特のニュアンスを纏う語でもあろうか…)は
英語が苦手のごようす。
それまで生きてきた中で、おそらくはその必要性もなく、
また英語を学習するという状況で育ったわけでもないのでしょう。
ですが、旦那の方は仕事柄、英語を使い、娘もどうやら学校ではもっぱら英語で学んでおり、
小さな息子も周囲の環境からか、自然に英語に接している。
そんな中で、娘が母親に知られないような話をする場合には英語を使うといった、
ある種、母親をばかにしてかかっているようなところもあるのですね。
そうした「マダム」のところへ、
ニューヨークに住む姉から娘(主人公にとっては姪ですが)の結婚式の
手伝いに来てほしいと連絡が。
家族は後から来ることになって、単身先乗りでニューヨークに行くことになった「マダム」は
飛行機の中でも入国審査でも、英語が分からず、困惑の連続。
端折っていえば、街中でたまたま見かけた「4週間英語教室」の看板に釣られ、
姉たちにも家族にも内緒で通うことを決意。
英語を母語としない人たちが教室で展開するのは
あたかもTVドラマの「へなちょこ英会話スクール」と全くおんなじ。
ここだけ取り出したら、全くもってコメディー以外のなにものでもないわけですが、
こうした似たものどうし的な交流は言葉の通じない社会では心のよりどころともなりましょうし、
だからこそ何となく英語も少しずつできるようになるわけで、
そうなると世界の見え方が変わってくるのですよね。
このあたりは自己啓発的な要素になるわけですが、
こうなると今までの自分の殻を打ち破って…みたいなことになったりするのがよくあるものの、
最終的な主人公も落ち着きどころは全く違う。
そのままニューヨークに残って自立した生活を指向するてな描き方もあるんでしょうけれど、
ここでは英語という「武器」でもって挑むのは、家族の中での立ち位置の確認。
姪の結婚式でのスピーチを英語でこなす中で、
家族どうし互いに「敬意」を持つことの意味を語りかけるのでありますよ。
まあ、突っ込みたいところも満載だったりするところですけれど、
そうしたことを取りあえず措いておかせる程度に、
よく仕上がったストーリーになっているとは言ってもいいですかね。
(もしかすると、自分との重ね方でいろいろな思いを抱く女性はおられようかと思いますが)
印象的だったのは、行きの飛行機で「マダム」の隣に乗り合わせた
親切ながらいささか奇矯な?おじいさんが
英語ができない状態でやってきた初めてのニューヨークに降り立ったとき、
「『初めて』は1回しかない。楽しんで」的な言葉をかけていました。
言葉ができないことも、分からないこともたくさんで
おそらくはたくさんの失敗を重ねるかもですが、とにかく「初めて」は1回しかない。
まあ、そうしたつもりで、この夏はドイツでの初めての土地に向かうとしますかね。