今回の旅程はお天気によって動きを変えられるよう想定していましたけれど、
単純に考えれば興津
泊まりというのが自然かとは思っていたのですね。
されど、興津の様子はこれまであれこれ書いたところで想像していただけるであろうとおり、
かつては旅籠が軒を連ねた宿場町ではあっても、今では人は通り過ぎるばかり、
事前に検索した限りでは宿があるんだか、ないんだか…とはっきりしない。
ま、実際に歩いてみれば割烹旅館があったにはあったですが、
このタイプはひとりでは往々にして泊まりにくい(あるいは泊まれない)。
こうしたことから、今回は(だいたい清水着はもう夕刻ですし)
清水に特段の目的があるわけでないのですが、ホテルを取りやすいというだけの理由で
清水へと足を運んだ…と、こういう次第でありました。
部屋でひと休みをして、さて晩飯という段になって、
実は今回は全く迷うことなく向かった場所があるのですよ。
しばらく前にTVの旅番組だったかで見かけた河岸の市・まぐろ館、
ここに行くために清水に来たわけではありませんが、
清水に来たんだったら行ってみようと。
由比の桜えび
ほどの予備知識はなかったですが、
どうやら清水港は冷凍まぐろの水揚げ量が国内全体のほぼ半分で、
日本一なのだそうですね。
そうしたことから港に近い海っぺりに建った「河岸の市」という施設に
「まぐろ館」なる飲食店街があり、中にはまぐろてんこ盛りの丼ものがあったりする…と、
この部分をTVで紹介していたわけです。
静岡の観光関連サイトによりますと、
あの餃子消費量の日本一が宇都宮なのか浜松なのかみたいな
総務省調査の項目にまぐろが入っているのか、こんなふうに書かれています。
静岡市民1世帯(2人以上)当たりのマグロの年間購入金額・購入量は、全国の都道府県庁所在地の中で第1位。
全国平均と比べるとおよそ2倍のマグロを静岡市民は食べていることになるそうな。
こうしたまぐろ好き市民がいることもあって、
TVにも登場したてんこ盛りのまぐろ丼が出現するのかもですが、
とまれこの日本一のまぐろも含めて、せっかくだから魚を食いに行こう!
と出掛けたまぐろ館でありました。
清水駅前の賑わいはもっぱら西口、つまり海とは反対側でして、
こちらには東京でも見かけるような居酒屋がそこここあって、
食べるだけなら店に事欠くことはないながら、
河岸の市は反対側の東口、海の側ですが、東西格差と言うのは適当でないにしても、
ネオンまたたく西口(変な意味ではないですが)に対して東口に灯りの少ないこと、少ないこと。
それでもずいぶん人通りが多いなと思うと、何やらイベントがあるのか、
みなマリナート(要するに市の文化会館)に吸い込まれていってしまい、
さらに海側に向かっていく人など皆無といっていい状況。
そんな灯りの乏しい一画に、河岸の市・まぐろ館はありましたですよ。
入口こそ灯りが乏しいのでこんな写りですが、さすがに中は明るい…。
と、それにしても店がたくさんあるのに、通路には人っ子一人見当たらず、
店はほとんど開いていない。
18時を過ぎてこの様子というのは、
まぐろ大好きな地元の人が来るようなところではないのか…。
まあ、気を取り直してですね、
手近な開いている(空いている、ではないです。何せがら空きですから)店に入りましたですが、
どうやらTVで取り上げていたメニューはここには無いようので別の店なのでしょう。
で、選んだのは「漁師めし」と名のついた海鮮丼ですな。
いろんな魚があれこれ乗っていて、見目も麗しいではありませんか。
ちゃあんとまぐろもあるし、生しらすがそそりますですね。
ですが、昼間たんと歩いてきてそのあがりの夕食ですから、
生ビールの一杯もひっかけてとなるともうひと品くらいは欲しいところ。
そこで、頼んだのがこの太刀魚の天ぷらであります。
これは旨かったですなぁ。揚げたてであったか、衣がカリッとなかはふんわり。
これを食べさせに今度両親を連れてくるかと思ってしまいましたですよ。
ところで先に引いた統計調査では、まぐろのうちにツナ缶は入るんでしょうか。
と言いますのも、清水港がまぐろ水揚げ日本一になったことには
このツナ缶が関係しているそうな。
何でもまぐろの油漬缶詰(いわゆるツナ缶)発祥の地は清水とのことで、
1929年(昭和4年)に県の水産試験場で開発されたですが、
当初はもっぱらアメリカへの輸出用だったらしい。
商業的な生産は清水食品という会社が始めたとのことですが、
そう言えば前に清水でフェルケール博物館(水口屋ギャラリー の本館)を訪ねたとき、
その裏手に昔の缶詰会社の建物が残されているのを見ましたけれど、
これが清水食品だったのですなあ。
てっきり「はごろもフーズ」(やはり清水の企業)だとばかり思い込んでました。
ブランディング・ネームと思しき「SSK」(清水食品会社でしょうか)と言った方が
「ああ、そういう缶詰、見たことある!」となりますが、SSKが「ホワイトツナ」を名付ける以前に
はごろもフーズが「シーチキン」という名前を広めてしまった感がありますから、
先発ながら清水食品SSKの「ホワイトツナ」はちと分が悪いことになっているかも。
…ということで、おなかいっぱいの余談に、清水の缶詰のお話でありました。