フランクフルトからハンブルク行きの夜行列車 に乗ったというところからの続きであります。


その夜も列車のコンパートメントを独り占めしてしっかり寝て行ったわけですけれど、
終着駅のハンブルクに到着しても、どうにもまだ眠気が取りきれない。


ホテルは着いた場所場所でその場で探すという旅ですから、
予約してあるホテルのロビーでひと休みして…などということもできようはずはない。

と言うことでとった行動はと言えば、別の列車に乗り込んでもう少し寝て行くという作戦。


当時はハンブルクにどうしても訪ねたいところがあるということでもなかったからでしょうね。

改めて乗り込んだ列車はこれまで乗って来た方向へと逆戻りして南へ向かっておりましたが、
ほどなくもやっとすっきりしたなぁという気分で降り立ったのがブレーメンでありました。

降りるに当たっては「あ、この地名、知ってる!」と。


お気付きのとおり知っている理由は「ブレーメンの音楽隊」によるのでありまして、
街中にはちゃぁんと音楽隊の像がありましたし、その他にも豚の親子とかそんな像が
何気なく置いてある町でしたですね。


そうは言ってもあんまり知られてないかもですが、
ハンブルクやリューベック同様にハンザ同盟の一翼を担う商業都市であったブレーメン。
音楽隊の話から想像する田舎ふうな雰囲気とはかなり異なって、大きな町でありましたよ。


で、ここに立ち寄ったからにはと土産物に

音楽隊の像のシルエットがプリントされたハンカチを何枚か買い求め、
たぶんそのうちの一枚はたぶん探せばどこかしらから出てくるのではないかと思われますねえ。


ここらで旅の終わりがだんだんと近づいて来ていることを意識し始め、
思いつくままに土産の調達なども始めたわけですが、

自分用として「グリム童話集」を買って帰ろうと本屋に入り込んだときのことです。


ブレーメンにたまたま降り立ったからこその思い付きですから
「童話集」に該当するドイツ語が分からない…この買物にはいささか難儀をしたものでありました。


何しろ「Grimm」と言ってるんですが、どうにも通じてないようす。
「R」のところを巻き舌の「R」にしてみたり、のどひこの「R」にしてみたりと
一応の努力をしたですが、結果を空しくするばかり。


「ブレーメンの音楽隊」ではロバ、イヌ、ネコ、オンドリが一斉に歌い出すと、
これを聴いた盗賊たちが何事ぞ?!と、その奇妙な音に驚いて逃げ出してしまう…
てな場面があったかと思いますけれど、もしかすると本屋さんにしてみれば、
ブレーメンの音楽隊の歌声同様に、意味不明のドイツ語紛いに聴こえていたかもしれんなぁと。


それでも何とか大学での第二外国語が拠り所という拙いドイツ語を繰り出して、たぶんですが、
「für Kinder(子供向け)」といった辺りで気付いてもらったんではなかったかなと。


取り出してきてもらった本には「Kinder und Haus Märchen」というタイトルとともに

いかにもおとぎ話ってぽく子供向けの色鮮やかな絵が表紙を飾っていたのですね。

(この頃まで、メルヘンといえば「メルヘンだねぇ、ポエムだねぇ」みたいな意味だとばかり…)


ようやっとブレーメンらしい買物ができたところで、次はどこへ行こうかと思案のひと時。
トーマスクック・タイムテーブルの地図を見ながら、北上すればハンブルクですが、

またとって返す気分でもない。


南下をすればフランクフルト方向へ戻ってしまいますけれど、
ここで気付いたのが「あ!ライン川を素通りしてた!」ということ。


先にフランクフルトからハンブルクへと向かった夜行列車は

ライン川沿いを夜中にひた走りで寝ている間にライン川を過ぎてしまったわけでありますね。


…ということで、また列車に乗り込んでたどり着いた先、
ライン川沿いの町々のお話へと続いてまいります。(つづく)