やおら両親のところへ出向いてPCをいじってきたわけですが、

当座はなんとか・・・というところで落ち着かせて戻ってまいりました。

状況の不安定さは引き続きてな感じですので、近いうちにも一度行かねばなるまいかと。


ということで、書きそびれてしまったことをちと遡って。

先週の金曜の晩に出かけたコンサートのことですから、まあ許容範囲でしょうか。

1月7日に行こうとしていた読響演奏会を風邪っぴきで出控えたものですから、

遅まきながらの、2014年の生音聴き初めだったもので。


聴いてきたのは、ベルリン・フィル八重奏団。

実に実に素晴らしい演奏でありましたですよ。


ベルリン・フィル八重奏団演奏会@杉並公会堂


ベルリン・フィルのメンバーで構成された8人衆でありますけれど、

楽器編成は弦5部(Vnのみ2で第一、第二ですね)にクラリネット、ファゴット、ホルンという変則形で、

全員揃って演奏する曲は極端に限られるだろうと余計な心配が頭を過ぎったり。


ですが、これはシューベルトの八重奏曲ヘ長調D.803の求める編成でなのでして、

だいたいからしてこの団体はシューベルトの八重奏曲を演奏するために集った…と言いますから

心配するだけ大きなお世話、プレイヤーが入れ替わりながら結成から80年以上も維持されている

となれば、ひとえにシューベルトのこの作品がいかに魅力的であるかということもなりますですね。


ですから、全員での演奏はシューベルトができればそれでいいわけで、

それより小さいユニットの曲は奏者の顔ぶれを代えつつあれやこれやが演奏できるところから、

今回のプログラムは次のようなものでありました。

  • R.シュトラウス/ハーゼンエール編曲/もう一人のティル・オイレンシュピーゲル
  • モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調K.581
  • シューベルト/八重奏曲ヘ長調D.803

弦楽や管楽のアンサンブルがよく小品を連ねたプログラムを組むことがありますが、

もちろんそれはそれで楽しいものですけれど、これを見る限り

あたかもオーケストラ・コンサートのプログラミングのようだなと思ったですよ。


まずはツカみのいい小さめの曲でスタートして、

(本来の管弦楽版のティルは15分くらいかかりますけれど、この編曲版では約8分)

お次に独奏楽器をフィーチャーしたコンチェルトが続き、

(ここでのモーツァルトは協奏曲ではありませんが、クラリネットをフィーチャーしてるのは間違いない)

最後にはどぉ~んと大曲が来るというパターン(シューベルトのこの曲は1時間ほどかかる)。


そんなふうに思いながら、聴き始めてみますと話はプログラミングの点だけではなくして、

「こりゃ、研ぎ澄まされたオーケストラだぁ」と思わずにはいられんように。

限られた人数で、限られた音色ながら、実に豊かに、何とも多彩に鳴っておりました。


1曲目のティルはヴァイオリン、コントラバス、クラリネット、ホルン、ファゴットという変則な5重奏ながら、この曲で目立ちまくるホルン、クラリネットが「ああ、ティルだ」と思わせてくれる一方、

大オーケストラと遜色のない厚みを見せる一方で、少人数であるが故にティルの悪戯がかえって

小気味いいものになっていたように思うのですね。

もっと演奏される機会があってもいいように思う曲でありました。


続くモーツァルトのクラリネット五重奏ですが、こちらは弦楽四重奏にクラリネットが入った5人。

ティルでのE♭クラの金切り声とは打って変わって、柔らかく温もりのある、

そして冬場に適度は加湿器の効いた空間に身を置いたような湿度感のあるクラリネットは

曰く言いがたい心地よさを与えてくれるのですね。


ともするとウィーンの典雅として語られるところもある曲のように思いますが、

それとは違って(やはりベルリン・フィルだから?奏者の国籍も多様だし)名曲はどうあっても名曲!

といったふうでありました。


こう来て、最後のシューベルトに期待するなという方がおかしいわけでして、

楽団のおはこにはそれだけの意気込みで臨んでおられたような。

1時間に及ぶ全曲を誰もが(チェロを除いてですが)立ったままで演奏していたという。


スタンド・プレイは意味合いとして目立ちたがりみたいにも使いますけれど、

やはり体全体を使って表現する自由度が座っているときよりも格段に増しますから、

それが音楽のイキイキ感にも繋がろうかと。


そうした意気込みの余りか、曲の途中で第一ヴァイオリンの樫本大進さんの弦がぷつん!と。

楽章の終わり間際でしたので曲が中断することはなかったですが、

「気合、入っとんなぁ」と思ったものです(ヴァイオリンの楽器のことはよく分からんですが・・・)。


あいにくとチケット入手が遅れた関係で、ステージ後ろの、奏者の背中を見ながら聴く席で

ホルンの朝顔が向く延長線上にいたものですから、拍打ちに回ってもやたらにホルンが聴こえる…

てなことはありましたですが、満足度の高さではそうお目にかかれない演奏会でありました。


このアンサンブルでベートーヴェンの七重奏曲なんかも聴いてみたいですなぁ。

お一人、セカンド・ヴァイオリンの方に出番がないのは申し訳ないとしても・・・。