ところで「時の科学館 」にはすぐ近くに姉妹館がありまして、
その名も「諏訪湖オルゴール博物館 奏鳴館」という施設。


いわゆるオルゴール博物館は行楽地には結構あるし、その類か…と思いかけたところ、
どうやらオルゴール発祥の地はスイスであるらしく、東洋のスイスたる諏訪は
精密機械工業の一環としてオルゴール作りでも有名なのだそうでありますよ。
寡聞にして知らず…でして、後付けですがWikipediaを見てみるとこんな記載がありました。

第二次世界大戦後、オルゴールの大規模な生産地はスイスから日本へ移った。株式会社三協精機製作所(現日本電産サンキョー株式会社)がオルゴールの製造を始め、小さなキーホルダーから大きいモデルまでのさまざまなオルゴールを供給した。自動化された工場による製造方法を築き、ついにスイスをしのぎ世界最大のメーカーとして市場の80%以上を占めるまでに至った。…(中略)…スイス、日本では今も高品質のオルゴール・ムーブメントが作られているが、安価なオルゴールの大規模な生産は中国に移動した。

とまあ、そういうことであれば
「そこらのオルゴール博物館とは一線を画すものであるやも知れぬ」とも思えてくるところでして、
こちらもまた訪ねてみたのでありましたよ。


受付で「たった今、生演奏(もちろんオルゴールの、ですが)が始まったところです」と
2階を指し示されて行ってみますと、内装を時節柄ハロウィーンっぽく飾り付けた中に
たくさんの年代物と思われるオルゴールが展示されてました。


その内のどれかが実演のさなかなのでしょう、大がかりなオルゴールらしく

メロディーに伴って和音も伴奏も妙なる調べを形づくっていましたけれど、

電気ではなくゼンマイ駆動というのが凄いですなぁ。


と、そうした心地よい音色の漂う空間に「え?!」と一瞬思わず引いてしまう姿が。
これもハロウィーンだからでしょうけれど、例の黒いとんがり帽子に黒装束の女性が
要するに魔女になりきって、曲の合間に何やら説明を始めたのでありますよ。


しかし、このガイドさん、役に徹しておりましたですなあ。

何せ魔女ですから二コリともせずに、

冷静に考えればくすぐりと思われるセリフ(例えば「いつ?今でしょ!」みたいな)を織り交ぜて、
(時折詰りつつも)全てを暗唱しておられました。

(返す返すも笑いのタイミングを図りづらく申し訳なし…)


しかも語られた内容というのが、当然にオルゴールの説明かと思いきや、
何と!今年生誕200年である作曲家ヴェルディ の生涯の物語。


そして、折々古風なオルゴールが奏でるのも「椿姫」、「イル・トロヴァトーレ」、「アイーダ」と
ヴェルディ名曲選でもあろうかというプログラムでありました。
(複数のオルゴールを順に掛けていったので、ちょこっとだけ何年にどこで製作されたものと触れてはいましたが)


たぶんいつもヴェルディばっかりとは思われませんから(今年いっぱいはヴェルディ押しかも)、
別の語りもまた聴いてみたいものだと、

このガイドさんを見に行く(聴きに?)だけも価値ありかもですよ。


そうそう、1階では録音された音色でいろいろ聴き比べができるようになっており、

壁面にはいろいろと解説が掲示されてましたですが、

恥ずかしながらその解説で初めて知ったのですけれど、

「オルゴール」というのは和製外来語だったのですねえ。


江戸期に交易を許されたオランダからいろんなものが日本にもたらされますけれど、
どうやらオランダ語で「オルガン」を意味する「Orgel」(ドイツ語でも同じ綴りですが)が元で、
それを通詞の勘違いか何かのせいでしょうか、

英語では「music box」である音楽が鳴る箱のことを「オルゴール」としてしまったようです。


ちなみにですが、オルゴールのことをドイツ語で何というのかを調べてみたところ、
「Musikdose」(音楽の筒)というのだそうです。
筒というからにはシリンダー状のイメージですので、

ディスク状の大きなものはまた別の呼び名があるのかどうか…。

英語の「music Box」だったら、シリンダーでもディスクでもどちらにも対応できそうですが。


いやあ、それにしても下諏訪ではずいぶんいろいろと勉強になりましたです。