近所にあわずさんというお家がありまして、そこには娘さんが二人いるという。
ところがその娘さんたちはお互いに顔を合わせたことがないのだとか。
なにしろ「あわずじまい」と言いまして…


と、野田秀樹さんのこんな地口でもって、チャイコフスキーとパトロンのフォン・メック夫人の間に

「決して逢わない」取り決めがあったことに結びつけ、チャイコフスキーの音楽紹介に入っていく

というようなラジオ番組が、1984~85年頃にFM東京(現・TOKYO-FM)で放送されていた

「セイコー スイッチオンクラシック」(要するに服部セイコーがスポンサー)であります。


この野田さんの語りと紹介される音楽の取り合わせに妙味を感じて、

贔屓にしたりすることの稀なたちとしては珍しく聴き続けていた番組なんですが、
このたびのテープのおかたしではこの放送録音(つまりエアチェックしてたわけで)が

たくさん出てきたのですね。


他にも「サントリー・サウンドマーケット」でポール・マッカートニーにインタビューしたのだとか

「小室等の音楽夜話」だとか、「翔べ、光の中へ」という番組では

「おしゃべりは夏目雅子です」なんつう声が聴こえてきたり、「ひるの歌謡曲」では
歌う女優シリーズの中の宮崎美子の回があったり、渡辺貞夫と世良譲の掛けあいがあったり、

ネイティブ・サンのニューヨークライブが入っていたり…おそらくはどれも

音源を手に入れがたいものばかりなのではと思ってしまうような。


この他にクラシックの海外ライブが山のようにありますが、

ともあれ全くもってタイムカプセルのようでありました。


ですから、レコードをダビングして入れたものでCDでも手に入りそうな音源は

取り敢えず放り出して、上に挙げたようなFM放送からエアチェックしたものを中心に

取り込んでいった次第であります。


それにしても、ラジオ放送を録音するとして

何故FMばかりなのかとお思いの方がおいでになるかも。

近しい世代の方にはおそらく言わでもがなと思いますが、

今でこそAM放送もステレオ化してますけれど、かつてはモノラル放送であったわけで、

その点FMはステレオ放送であったというのがひとつ。


そして、AM放送がわりとトークを中心にした番組作りで、音楽を紹介するにしても

途中でフェイドアウトしたり、司会の声がかぶってくることが多いのに対して、

FMは音楽を全曲流す方にポイントが置かれているというのがふたつめ。


さらには、番組そのものの作りの点で、

AMよりもFMの方が断然スタイリッシュであったことでしょうかね。
この点では、間に挟まれるCMまでFMは「かっちょええ」のがたくさんあったように思います。


先に触れた「スイッチオンクラシック」の服部セイコーのCMなんかはかなりお気に入りで、
番組内容同様に楽しみにしていたくらい(友人にはYoutubeにUPすればと言われたですよ)。


これに対してAM放送のCMと言えば(もちろん当時のものですが)、

「つんつんつのだのテーユー号」(自転車のCM)とか「ちろぉりあ~ん!」とか

「けいせい~、けいせい~、けぇいせぇい~!」(京成電鉄の歌)とか

懐かしくもありますが、「うむむ」なものばかりですものねえ。


ところで、先程こんなもような録音が残ってましたとさらりと流しましたけれど、
ちと注釈を施そうかなと思いますのは、まず夏目雅子さんの声が云々というあれ。


内容がポール・モーリア特集だったので録音したわけで、

夏目雅子さんに入れ込んでいたわけではない…(笑)。


ただ、20代で亡くなられた夏目さんの瑞々しい声が聴こえてきたときには、

ファンではなくとも「おお!」と思ったものではありますが。


それともう一つは、宮崎美子さんですかねえ(笑)。
これまたファンだったとかいうことはおよそ無いのでして、

だいたい「歌う女優」なのか?と思いますですね。


ですが、ミノルタX7(一眼レフカメラですね)のCMでアイドル的に扱われてたと思いますので、

レコードを出すという企画も普通に回ってきたのでしょう。


こういっては何ですが、宮崎さんの歌唱力がどうのこうのということはともかくとして、

(というと失礼かもですが、浅田美代子さんよりは上手いとは思う…)
この番組で紹介されたファーストアルバム「Mellow」は、

作詞・作曲で曲の提供している方達が当時としてはなかなかの布陣でありまして。


Mellow(紙ジャケット仕様)/宮崎美子


松任谷由実、渡部真知子、八神純子、矢野顕子、坂本龍一、吉田拓郎、来生えつ子、

南佳孝…というぐあいでして、なんかプロモーションに力が入ってるじゃなかろうかと。
たぶん今では手に入らない、そうでなくても入手困難は音源でありましょうねえ。


と書いてきますと、大変だ大変だと言ってるカセットテープのデータ化も
それなりに楽しんでいるということにもなりましょうかね。