ボーン・アルティメイタム
監督:ポール・グリーングラス

出演:マット・デイモン ジュリア・スタイルズ デヴィッド・ストラザーン

    スコット・グレン アルバート・フィニー

(米・111分)


~あらすじ~


CIAの極秘プロジェクト「トレッドストーン計画」によって暗殺者にされ、同時に記憶を失ったジェイソン・ボーン。そんな彼の写真がイギリスの新聞の一面に掲載された。記事を書いた記者のロスは「トレッドストーン計画」に代わる「ブラックブライアー計画」の取材を進めていたのだ。失った秘密の鍵を見つけるため秘密裏にロスへと接触を図るボーン。だが、ロスはすでにCIAによってマークされていた・・・。


~レビュー~


ボーンシリーズの完結となる3作目。

はっきり言っておもしろい!


ここ最近のシリーズものの出来の悪さに、

いい加減、辟易していた今日この頃、

このシリーズは最後まで楽しませてくれました。


手持ちカメラや細かいカット割りの多様で、

人によっては酔って見ていられなくなるかもしれない、

というところが難点ではありますが、

あの緊張感とスピード感がなかなかいい。


完璧なまでの強さと知性を持ち合わせたボーンの、

一挙手一投足に終始釘付けになってしまった。


今回で欠落した記憶の全貌が明かされ、

記憶を取り戻すわけですが、

見終わった後、なんだか寂しい気もしてしまった。


ボーンの魅力は完璧なのに、

記憶がないという不完全さを持ち合わせているところだと、

ぼくは思っているのですが、

その最後のピースが埋められてしまったわけです。


これでボーンが見れなくなってしまうという寂しさ。

でもだからといってさらなる続編なんぞ、

絶対に作って欲しくないという葛藤。


スパイ映画といえば何といっても007ですが、

007とはまた違った意味で、

とても好きなスパイ映画シリーズとなりました。


~評価~


映 像:★★★☆    爽 快:★★★★
役 者:★★★★    総 評:★★★★☆

テンポ:★★★★★

恋空
監督:今井夏木

出演:新垣結衣 三浦春馬 小出恵介 高橋ジョージ 浅野ゆう子

(日本:129分)


~あらすじ~


高校1年生の美嘉は、暖かい家庭で育った優しい女の子。夏休みに入る前、図書室に忘れた携帯を取りに戻ると、それまでのメールも電話帳も全て消されていた。そこに見知らぬ男の子から電話がかかる。「大事な友達なら連絡が取れるから大丈夫」。その日から、その少年からの電話が毎日来るようになった。最初は不審がっていた美嘉だったが、次第にその少年に好意を持つようになった。学校でその少年に出会った美嘉は恋に落ち…。


~レビュー~


携帯小説で話題となり、書籍化され中高生を中心に人気となり、

ベストセラーとなった本作。


高校生の淡い恋愛を描いたものかと思いきや、

序盤からレイプ、妊娠、流産など過激な描写もあり、

前半、正直かなりドン引きした。


後半、小出恵介演じる優の登場で、

なんとか持ち直し傾向にあったものの、

全体的に話のつくりがあまりにもベタで安易すぎる。


事実を元に描かれたとあったが、

女子高生の空想を元に描かれたのではないかと思うほど、

あまりにもツッコミ所が満載です。


常識ある大人であれば冷静に見ることができると思いますが、

これが中高生に支持されているという現実は、

ちょっと怖い気がしますね。


実際、日曜のせいもあってか、

映画館は中高生が大半をしめていました。

本編終了後、女の子は泣き、

男はなぜか肩で風をきるように歩いて出て行った(笑)

もうどっぷり感情移入してしまってる感じです。


なにも中高生は純粋無垢な恋愛をするべきだ!

なんて説教じみたことを言うつもりは毛頭ないですが、

少なくともこの映画を支持することはできないかな。


強いて言えば、この作品の救いは、

小出恵介演じる優の存在とガッキーのかわいさと、

ミスチルの歌でしょうかね。


まぁ自分もすっかりおじさんになったんだなぁ・・・

と実感させられた映画でした。


~評価~

映 像:★★★☆      切なさ:★★★
役 者:★★★☆      総 評:★★☆
テンポ:★★★☆

ブレイブ・ワン
監督:ニール・ジョーダン

出演:ジョディ・フォスター テレンス・ハワード

(アメリカ・オーストラリア:122分)


~あらすじ~


ニューヨークでラジオのパーソナリティを務めるエリカ・ベインは、婚約者のデイビッドと公園を散歩中、暴漢に襲われた。病院で意識を取り戻した彼女はデイビッドが死んだことを告げられ、悲しみに打ちひしがれる。自らの心にも傷を負い、満足に外出することもできなくなってしまった。そこでエリカが手にしたのは一挺の拳銃。そしてある日、偶然立ち寄ったコンビニで、強盗にその弾丸を発射するのだった……。


~レビュー~


ジョディ・フォスターが製作総指揮をつとめ、

脚本や設定部分にいたるまで手をくわえ、

かなり力を入れたと思われる作品。


最後の結末をまずは抜きで言わせてもらえば、

映像や演出、演技などすばらしくいい作品です。

ジョディ・フォスターの真骨頂とも呼べるほどに、

ここ近年の出演作の中では群を抜いてすごい。


恋人を殺され、自分自身も殺されかけ、

PTSD(心的外傷ストレス障害)に悩まされる女性。

そして銃を手にしたことで暗闇を堂々と歩き、

処刑人と化していく女性。

その心の変化をとてもうまく演じている。


もし自分が同じ目にあったなら、

その相手を憎み、復讐心に満ち溢れるかもしれない。

しかしそれを本当に実行するかどうかは別問題。


これはとても倫理感を問われる作品です。

そこで最初に一度抜いたラストの部分になるわけですが、

実際問題、あれは確かに多くの人の反感を買う。

あのラストは確かに最後の一線を越えたものだ。

どこを見ても大抵の人があのラストに対して批判する。

たぶん、それは製作した側もわかっていたはず。


もしそうだとしたならば、なぜ敢えてそうしたのか。

別観点から考えてみる。

これはあくまで僕自身の憶測でしかないのですが、

一種、あれはヒーロー主義のアメリカ社会を

皮肉ったものではないか?

アメリカ政府のやってることはこういうことなんだと。


勧善懲悪。

やられたらやり返せ。


イラク問題もそうですが、

そういったアメリカ政府のやり方を、

いまだかつてない衝撃的な演出をすることで、

痛烈な批判をあびせているのではないだろうか

深読みしすぎかもしれんけど。


気持ちは分かるけどね。

途中の処刑人行為も許されないことではあるけど、

それを正当化するようなラストにしてはいけませんね。


しかし、その行為を少なからずとも、

どこかで共感させてしまうというのは、

やはりジョディ・フォスターの存在ならではだと思います。

そういう意味でこの映画は、

ジョディー・フォスターでなければ成立し得ない映画、

といっても過言ではないと思いました。


~評価~


映 像:★★★☆      衝 撃:★★★★

役 者:★★★★★     切なさ:★★★☆

テンポ:★★★★      総 評:★★★☆

ALWAYS続・三丁目の夕日
監督・脚本:山崎貴

出演:吉岡秀隆 堤真一 薬師丸ひろ子 小雪

    堀北真希 須賀健太 小日向文世 三浦友和

(日本:146分)


~あらすじ~


昭和34年春。東京オリンピックの開催が決定し、日本は高度経済成長時代に足を踏み入れようとしていた。取引先も増え、軌道に乗ってきた鈴木オートに家族が増えた。事業に失敗した親戚の娘、美加を預かることにしたのだ。しかし、お嬢様育ちの美加と一平は喧嘩ばかり。一方、一度淳之介を諦めた川渕だが、再び茶川の所にやってくるようになっていた。淳之介を渡したくない茶川は、再び芥川賞に挑戦しようと決意する…。


~レビュー~


日本アカデミー賞を総なめにした前作の続きとなる今作。


初め、続編を作ると聞いた時は、

ハッキリ言って絶対失敗すると思ってました。

それだけ前回の出来がすばらしかったからです。


しかしフタを開けてみれば、

そんな不安は吹っ飛ばされてしまいました。

前作をきちんと踏まえた上で、丁寧な脚本と構成に仕上がっており、

うまい作りになっていました。


それでもやはり前作を超えることは出来ませんでしたが、

決して無駄な努力なんかではなく、

これはこれで、前後2部構成の映画として、

りっぱに成立できうる作品だと思いました。


話の内容は見え見えのベタ話ではあるんですが、

分かっていながらも楽しめてしまう。

それはすばらしいVFX技術で誕生した、

昭和30年代の街並や、

役者それぞれの演じる個性的な登場人物たち。

本当に細かいところまでこだわったセットや小道具。

そういったすべてのものによって、

画面に引き込まれてしまったからだと思います。


前作はテーマ曲がちょっと・・・て感じでしたが、

今回のBUMP OF CHICKENの「花」は作品とよく合っていました。

これも最初はどうかな・・・という不安があったのですが、

エンドロールの演出とともに、とてもよかったと思います。


今回、初登場となる一平のハトコの美加。

この子のエピソードはよかったですね。

美加はいわゆる現代っ子の象徴。

その彼女が三丁目の人々との触れ合いによって、

素直になり大切なものを学んでいくあたりは、

現代人が失ってしまった大切なものを、

今一度思い出させてくれるような感じでした。


この続編のテーマを考えると「お金で買えないもの」

というのがひとつのキーワードになると思います。

淳之介を金で取り返しにきた実父の川渕のみならず、

すべてのエピソードにそれは通じる。

この三丁目の人々になぜこんなにも、

人情や優しさや懐かしさを感じるのかといえば、

この人たちにこそ現代人が置き忘れてきてしまった、

人間の本質を感じるからではないでしょうか。


「今日も夕日がきれいだね」

そんなことを当たり前に言える世の中になってもらいたいものです。


~評価~


映 像:★★★★☆     泣 度:★★★☆

役 者:★★★☆       笑 い:★★★

テンポ:★★★★       総 評:★★★★

クワイエットルームにようこそ
監督・脚本:松尾スズキ

出演:内田有紀 宮藤官九郎 蒼井優

    りょう 妻夫木聡 大竹しのぶ

(日本:118分)


~あらすじ~


佐倉明日香は28歳のフリーライター。ようやく手にした署名コラムの執筆は行き詰まり、同棲相手ともすれ違いが続く微妙な状態。そんなある日、明日香は気がついたら、真っ白な部屋のベッドに拘束されていた。やってきたナースに「アルコールと睡眠薬の過剰摂取により、丸2日間昏睡状態だった」と説明されても、記憶があちこち欠如した明日香は戸惑うばかり。だが非日常的な空間で見知らぬ人々と出会ううち、明日香の中で何かが変わり始める…。


~レビュー~


フリーライターとして新たなスタートを切った一人の女性が、

気が付くと白い無機質な部屋に五点拘束されている。


廊下では女が叫び声をあげ、

ドアの隙間からは誰かが顔を半分のぞかせこう言う、

「クワイエットルームにようこそ」と。


まるで「ソウ」を思わせるような状況設定。

これはある意味、リングにも呪怨にもまけないくらいの、

とても恐ろしいリアルホラー映画といっても過言ではない。


舞台は精神病院の女性だけの隔離病棟。

なぜここに運ばれてきたのか記憶のない主人公明日香。

自分はまともだ、これは何かの手違いだと必死にもがくが、

話が進むにつれて、失った記憶の断片が蘇っていく。


普通って何?

どれが普通?どこからが異常?


本当は誰もが抱える現代の深い心の闇が、

松尾スズキの独特な笑いと絶妙な演出で描かれていく。

見事です。


また主人公明日香を演じる内田有紀がよかったですね。

とてもハマっていたし、うまかった。

それからクドカン。

この人、こんなに演技うまかったっけ!?と、

本当におどろくほどいい味を出してました。


脇を固める役者陣もすばらしかったですね。

またしても蒼井優は最高でした。

大竹しのぶはさすがです。

妻夫木も今までにない壊れた役を見事に演じてました。


それから本作には何と、

塚本晋也監督、それから庵野秀明監督も出演している。

2人ともひどい扱いでしたけどね(笑)


ともあれ、色んな面でとてもバランス感覚のすぐれた、

いい作品だったと思います。


~評価~


映 像:★★★☆      笑 い:★★★☆

役 者:★★★★      切なさ:★★★☆

テンポ:★★★☆      総 評:★★★★