テーマは地域が元気になること 世の中を経済効果で斬る
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経済波及効果の試算で、地域活性化につなげたいと話す宮本教授(渡守麻衣撮影)(写真:産経新聞)
【新・関西笑談】世の中を経済効果で斬る(1)関西大学大学院教授宮本勝浩さん

 阪神タイガース優勝の経済波及効果でおなじみになった関西大大学院の宮本勝浩教授。最近はタイガースにとどまらず、くいだおれ太郎、プロゴルファーの石川遼選手、斎藤佑樹投手の日本ハム入団-など世の中のあらゆる話題を経済波及効果で斬っている。発表される数字と分析対象のユニークさが独り歩きするが、そこには綿密なデータ収集、経済理論に基づいた詳細な分析、そして「地域を元気に」という熱いこだわりがあった。(聞き手 内山智彦)

 --昨シーズンのタイガースは残念でした

 宮本 巨人と首位争いしていた8月中旬ぐらいから、タイガース優勝の経済波及効果を計算していました。(タレントの)板東英二さんから「今年は大丈夫」といわれ、安心して計算し7~8割はできあがっていたのに。残念です…。

 --どれくらいの効果を見込まれていましたか

 宮本 (リーグ制覇した)平成17年の643億円を上回る、700~800億円ぐらいになっていたと思います。ファンも優勝に飢えていましたし、消費意欲が刺激されていたでしょう。関西の活力になったでしょうね。

 --過去に発表された分析をみると、星野仙一監督のもとでフィーバーとなった15年の阪神優勝(1481億円)に始まり、東国原英夫・前宮崎県知事の就任効果(20年、492億円)、シャープ堺工場の進出効果(19年、1兆2413億円)、星野氏の楽天監督就任効果(22年、187億円)など30近く。ジャンルを問わず算出しています

 宮本 発表していない試算も含めるともっとたくさんになります。年間5~6テーマは計算していますから。テーマは、私が興味や関心のあるものを選びます。最近はこういう発表をしているせいか、マスコミからの依頼で行う試算も増えました。

 --テーマ選びの基準は

 宮本 スタンスは2つです。一つは地域が元気になるもの、もう一つ『マイナスの経済効果』はやらないということ。芸能人やスポーツ選手の不祥事でイベントが中止になった、CDが売れなくなった、などマイナスの効果を試算してくれと頼まれることがありますが、すべてお断りしています。本人は反省しているのに追い打ちをかけるようなことはしたくない。唯一の例外は、21年に行った新型インフルエンザの関西に与えるマイナスの経済効果(753億円)。予防を注意喚起する趣旨で試算しました。基本は地域や国が元気になること、楽しいことが好きです。

 --そもそも経済波及効果って、どのように算出するのですか

 宮本 分析方法はいろいろありますが、最もオーソドックスなのが「産業連関分析」と呼ばれる手法の応用です。消費が増加すると推測されるさまざまな項目と売上額をリストアップし、数学でいう「行列」をつくり、逆行列計算をして算出します。何よりも計算の元になるデータ収集がすべての鍵を握ります。

 --産業連関分析、逆行列計算…。難しいです。次回で詳しく教えてください

【プロフィル】宮本勝浩

 みやもと・かつひろ 関西大大学院会計研究科教授。大阪府立大経済学部卒。昭和45年大阪大大学院経済学研究科修士課程修了。大阪府立大経済学部教授、同大副学長などを経て平成18年4月から現職。阪神優勝、バンクーバー冬季五輪などの経済波及効果の分析で話題を呼ぶ。昨年は遷都1300年にわく奈良・東大寺の大仏の建造費用推定にも挑んだ。66歳。和歌山県出身。

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