6つのサッチャー元首相  | ジョン・ワトソンのブログ

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今思えば、シャーロックをクリスマスの買い出しに連れ出したのが、そもそも間違いだった。サンタクロースに向かって、「退屈だ!」と叫んだかと思えば、「クリスマスプレゼントは、血みどろの殺人事件がいい!」と、子供やその親たちの前でお願いする始末。警察にアパートに連れ戻されると、僕たちの帰りを大学生が待っていた。彼女の名前は、サリー・バーニコット。シャーロックに顔や服について酷くけなされた後、サリーは大学で起きた殺人事件について話し始めた。

友人だった美術生のピエトロ・ベヌッチが、陶芸室で刺されて死んでいるのが発見された。発見当時、遺体の傍にいた恋人のベッポ・ロヴィートは、自分も今来たばかりだと主張。窓ガラスが割られていただけでなく、ベッポがナイフを所持しておらず、部屋からも見つからなかったことから、何者かが部屋に侵入し犯行に及んだに違いないと、証拠不十分でベッポは釈放された。だが、ベッポとピエトロは喧嘩が絶えない仲だったらしく、サリーはベッポがピエトロを殺したに違いないと言い張った。彼女がピエトロに思いを寄せていたことは、シャーロックに言われなくとも一目瞭然だ。すぐさまネットで何かを調べ始めたシャーロックは、被害者の友人や教授が強盗の被害に遭っていたことを知ると、とても嬉しそうだった。そう、もう事件の真相が分かってしまったのだ。

僕はシャーロックに、ヒックマン・ギャラリーの館長になりすまし、被害者が通っていた大学へ行ってくれないかとお願いされた。いや、命令だ。学生たちの作品を、主に彫像をギャラリーで展示したいと、美術科のホーレス・ハーカー講師に話した。もちろん、例の殺人のことに話が触れた時は、殺害された学生への追悼の気持ちを込め追悼展示を企画したいとも提案し、ピエトロが生前、何か製作中ではなかったかと尋ねてみた。すると、ハーカー講師は、彼が陶器でできた6つのマーガレット・サッチャー元首相の像を作っていたことを教えてくれた。雑誌でよく見かけるダイアナ妃の彫像と同じようなものらしいが、陶器でできたマーガレット・サッチャー元首相にはデビルの角がついていたとか。風刺作品だったらしい。だが、作品はもう手元にないと、ハーカー講師は残念そうに教えてくれた。

僕たちは、強盗の被害者たちに会いに行った。すると皆、同じマーガレット・サッチャー元首相の像を買っていたことが判明した。シャーロックの推測通り、強盗に盗まれたものは他にない。僕たちは、残り2つの像の持ち主を探し出し、それぞれに連絡を取った。その夜、僕は1人の家へ、シャーロックはもう1人の家へと向かった。

暗闇の中でじっと待っていると、突然、窓ガラスが割れる音がしたので、僕は身を隠した。ベッポが家に押し入り、暖炉の上に飾ってあった像に手を伸ばす姿が見えた。僕は彼の後を追い、シャーロックに合流するよう連絡をした。僕たちは、ベッポが橋の上で像を地面に叩きつける姿を確認した。割れた像の中に入っていた何かを取り出し、川に投げ捨てるつもりだったらしいが、僕たちは彼をその場で捕まえた。その手には、彼のイニシャルが入ったナイフがあった。逃げられないと観念したのか、ベッポは犯行をすんなり認めた。ピエトロと口論になり、もみあっている際中にナイフで刺してしまったらしい。陶芸室に置かれていた窯で焼かれる前の彫像の中に、ナイフを隠した。窓ガラスを割ったのは、あたかも強盗に襲われたと見せかけるためだった。

僕は、彼の賢い手口に感心してしまったが、シャーロックにとっては「がっかりするぐらい単純だった」とか。翌日、「自分だったら、絶対捕まらなかった」と延々と話すシャーロックの相手を冷凍の七面鳥に任せ、僕はパブに避難。

そうそう。シャーロックの所に、未だにメールが送られてくる。