「Jちゃん!あーたは旅人でいっとこにいねえ。で。あーたがそれをしてもおまんまに響くわけじゃねえんだから

 やっとくれよ。それが先行く者の役割じゃねえか?それがここいらの文化を守ることになるんだからここは一肌脱いでもらって。

 おーっと。ぐっと行きな!ぐっと!」

板人はエゴの塊 その排泄行為が芸であろう。

「ああ。わかったよ。何を言えばいいんだい?」「おっ!やってくれるかい?ありがたいねえ。じつは・・・」で始まる

御神楽を何度担いだろう。

結局それは文化を盛り上げるんじゃなくてその無風安定の窟を守りたいだけでね。

悪者になるのは旅人ってぇ寸法で。それも「ケースワーク収集」には役立つからやってきたけどね。

もう次の世代に渡すよ・・・って。今の世代でそれをやる奴はそういないわな。

みんな。アザラシで在ることが得だしねえ。ん?アザラシって?

ああ。近すぎるとお互いの固い毛で気づ付けあう 遠ければ寒さに耐えきれない 御互いのWin Winの距離でいることで

生きながらえるってえね。それが安定で誰も排除せず波風立てないことなんだわね。

あたしらの世代は仕事も芸も波風立てて生き残っていくサバイバルゲームで勝てば官軍。その超えてきた荒波が芸や数字に出るよなんて育ったんでそこはいい悪いなしで方法論が違うだけで。その優しい窟の中からチョイスされそこを抜けるときはやはり波風立つもんでね。

そろそろ種明かしをしようじゃないか。

あたしら旅人にそれを依頼していたのはいったい誰だい?

あたしら旅人は「そこ」には何の利害関係もないし自分からそれを言えるほどその窟の内情はわからねえ。

察しのいいおまいさんならもうわかるだろう?

そこでリーダーシップをとって「どうしたの?言ってごらんなさい。あたしはあなたの味方よ。」

みんなのためを思ってと言う印籠ぶらさげ涙を流しあたしらに依頼してきたのは

そういう人たちだったよ。

窟の中の仲良しこよしを選ぶも良し

己だけを信じ孤高でいることも良し

あれも欲しい これも欲しいもよし

欲しがれば必ず提供する者がいる

それだけはあたしらも大事にしてきたつもりだ。

あとは自分を信じて進めばいい

芸や仕事の数字を分析して方向を修正していけばいい。

その道の匠はそれを繰り返してそこに在る

おっと!今 そこに立つ先人はあたしらの世代 それはそれは

微笑みが柔らかいほど冷酷を持って壁を乗り越えてきたからこそ手に入れた柔らかさ 物腰のスマートさだと

最後に言っておこうか

 

 

 

「あんちゃん。うちは学生証あれば貸すがね。といちだよ。学生さんだって容赦はしないよ。」

渋谷の薄暗い雑居ビルのなかの金貸しは言った。

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「J!もう見れないかもしれないぜ。行きたいよな。でも金がな・・」友人のKが言う。

「解った。二人で16000円だ。オレが何とかする。」

音曲の道に入った玉ねぎ野郎二人。食うにも困窮しているのに当時で16000円はきついよな。

Kと別れて東横線の駅に向かうすがら「誰にでも貸します!」の看板にふらふらと金融屋に入ったんだな。

恰幅のいいそれでいて眼だけは笑っていないそこの親父は続けた。

「何に使おうが勝手だが。何をするんだい?」

オレはどうしても聞きたいアメリカのアーティストが来日して。オレらは学生という身分で音曲屋の下働きをしているんだが

聞かないと絶対に後悔すると思うんだが知りあいに借りるのは違うと思って。どうにかオレの責任で金を作って友人と二人で

行きたいのだと言った。

「まあ。せいぜい気張るといい。いいかい。といちだというのは忘れるんじゃないよ。」と16000円を手渡した。

四日後、会場の隅に二人で陣取りその最初のペットの音を聞いた時 来て良かったと心のそこから思ったよ。

どうにか金を手を工面し一週間後 金融屋のドアを開けた。

親氏は言った。

「まだ一週間だけどどうした泣き言は聞かないよ。」

「金が出来たので返しに来ました。」

親父はじっとオレの目を見て言った。

「そのコンサートはどうだったい?」

「ええ。ここでお金を作っていただいて感謝しています。きっと生涯忘れられない音に触れたと思います。返しますから利息を入れていくらですか?」

「一週間だ。オレはね。そんなちまちました商売はしてないんだ。一週間の計算も面倒だ。貸した額だけ置いていきな。」

16000円を置いて親父は学生証のコピーを破いて捨てた。

還ろうとしたときに親父は言った。

「ちょっと。待ちな。おまいさんの言ったように生涯忘れられない物を見たと言うなら貸したかいがあったってもんだそういう時は祝儀がいるわけだ。オレもそういう性根は好きだよ」と返した金から5000円をほおってよこした。

「祝儀だ。これでその友達とガード下あたりでやってきな。一人3杯は飲めるだろ。そうしてもうこういうとこで金を作るのは辞めるこった。夢をかなえるチャンスはいつどこで転がってくるかわからねえ。だからこそその時のためにちょっとは懐に残しておくことを憶えな。たとえ食えない身分でもだ。その道理を違えてまたここに来たらその時 おまえさんは(といち)に追われる身分に落ちているとオレは思うよ。さあ。帰んな。」

そんな大人たちがいた時代でありました。

 

 

Boy 品評会は終わったかい?

承認欲求の見せかけの穏やかは去ったかい?

今年は明けからこういう状況さ

出来ることを

見栄を張らず

誠実にベストを尽くす

それに尽きるだろう?

全てに