唄3

テーマ:

「ジンタ」

 

そのなりは自ら望んで叶へしか
そのそぶりは自ら望んで身につけしか

嗚呼ジンタが聞こえる

その果てにどこに行きつく自分を見てゐる
操られしなら親方はいづこ?

哀しき角兵衞獅子か

何を選び どこを歩き行くべきか やがて待つてゐる地はいづこか
それはすべて
己が決める人の道

嗚呼ジンタが聞こえる

AD

寓話1

テーマ:
「蟋蟀の欺瞞」
 
一度しかないこの時間 一生さうして耳掻きで砂を運ぶやうなことをするなんて
と蟋蟀はいつも笑つてゐた。

少したつてふと周りの者を見渡すと
耳掻きで運んだ砂山はバケツ一杯くらゐに成つてゐた。
嗚呼 情けなくて嗤つちやふね。あんなに時間をかけてそんなもんだ。その間澤山もつと樂しいこともあらうに

幾たび季節は巡りゆき蟋蟀も昔ほど跳べなくなり聲も小さくなり さう老いたのだ
ある時から周りを見なくてすむやうに
うえいうえいとその場しのぎの宴に身を置き 
ひゆうひゆうと上邊だけの熱狂に身をやつした。

やがて最後と成らう冬を迎へた
吹雪の中 見やれば 砂山は大きな山に成つてゐた。

凍える風のなか
蟋蟀は聲を振り絞つた
「これが私の望んだ生き方なのだ」
然しその聲はつもりゆく雪に吸ひ込まれ
蟋蟀は己に放つた最後の欺瞞の行方さへ見屆けることは出來なかつた



AD

唄2

テーマ:

「青春という時間に立つ君へ」

 

初春の薄日差す部屋にて
ガラス細工の心を持て餘す君よ
ほほに傳はりし涙は何のため

それは何のための試煉だつたのだらう
その物語は君の思ひに沿はない結末だつたとしても
その過程は君にたしかな證をのこしたのである

遠きの己を想像するのだ
生きるとは今だけではない
今日の積み重ねがやがて未來の君を作る

歩むのだ 前を向ひて 歩むのだ
櫻咲く道をその香りに心躍らせ歩むのだ

ふと立ち止まり後ろを振り返るとき
そこにかつての君たちが見えるであらう

歩むのだ 前を向ひて歩むのだ

君のその背中をみてかつての君たちは標とするだらう

君は君が監督で 主演で 脚本家のシネマを必死に撮るのだ
やがて
エンドロールが流れる中 拍手が聞こえるに違ひないから

AD