今回は三稜石をご紹介します。


石さまざま 石さまざま
三稜石(Dreikanter or Ventifact)

静岡県御前崎市白羽


三稜石については地学研究第22巻第11、12号に記述があります。

石さまざま 石さまざま

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「雲根志で三稜石(みつかどいし)というのは美濃国赤坂山から産する犬牙状方解石のことであった。現在三稜石(さんりょうせき)というのは Dreikanter , 即ち砂漠地方または風の烈しい地方で飛砂によって表面に2面ないし3面が生じ、したがって2個ないし3個の稜が生じた岩塊または礫をいい、風食礫の一種である。

石さまざま 雲根志三編、卷之六、像形類の項に記載されています。


~(中略)~


 日本で現世のものとしては小笠原村硫黄島千鳥ヶ原の安山岩礫、伊豆大島三原山の南西麓の灰青色安山岩礫(標本は現在大島町元町港の資料館に陳列公開)。これは1950~1951年の三原山の噴火で一部埋没。三宅島茨城県磯崎付近(小笠原義勝)。静岡県御前崎町白羽(辻村太郎)。静岡県小笠郡池新田区海岸より1.5㎞ほど内陸(栗林沢一)。浜松市中田島砂丘(塚本勝彦)。愛知県伊良湖岬(岡田鎮太・野村松光)等の産地が知られている。

 御前崎町白羽のものはこれら日本のもののうちで最も数が多く、完全なものが多く昭和18年天然記念物に指定されている。」とあります。


また、その成因については

「産地は冬の西風が卓越する。三稜石はこの西風による飛砂で琢かれて形成されたものと思われる。もちろん現在形成されているのではなく、砂浜の砂丘が次第に隆起し、現在の高さになるまでのある時期に礫を吹き飛ばさない程度の冬の西風が連日この台地状の砂丘表面に飛砂を吹き上げ永い年月の間に形成されたものである。このとき半ば砂に埋もれた円礫があり、長年これが移動しない程度の卓越風(御前崎の場合は冬の西風)が飛砂を吹きつけると、円礫は次第に磨耗して先づ三稜石となり最後には一稜石となる。最初の礫の原形や、途中で礫が移動した場合には、四稜あるものや、奇形を生ずると考えられる。小さいものには米粒大から大きいものは15cmに達する。径数cmのものが一番多いが、富貴角のように2mもある巨大なものは御前崎には存在しない。」とあります。


そして、この性質は「おそらく中生代三倉層群のものと思われる砂岩珪質細粒砂岩、領家変成帯などから由来したと思われる黒雲母片麻岩花崗岩など変化に富んでいるが、砂岩が最も美しい三稜石を形成する。」とあります。


今回参考にした文献
石さまざま
『地学研究』第22巻第11、12号(日本礦物趣味の会、1971)

『石之長者 木内石亭全集』卷五(中川泉三、下鄕共濟會、1936)

『口語訳 雲根志』(横江孚彦、雄山閣、2010)