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再愛 19

形山由紀乃の両親は由紀乃が3才の頃、離婚していて、父親の記憶がかすかにしかない。

そのせいか、年上の男性に憧れを抱いてしまう。

今の高井隆弘に対しては、まさに、父親を慕う気持ちに近いものがあった。

ただ、同時に、別れた恋人、越智大好を忘れる為に、隆弘に男を求めているところがある。

それは、まだ、由紀乃自身には分かっていない。




由紀乃は夕方まで保育園で働き、夜は隆弘にバンコク市内のタイレストランや有名な観光スポットに連れて行って貰った。

休日はアユタヤやパタヤなどの観光地に行った。


隆弘がそうすることで、由紀乃はタイのことを知り、由紀乃の友達がいつ、タイに来ても案内できるようになる。

隆弘の下心の優しさである。

そういう日々が1ヶ月続いたが由紀乃は保育園の仕事が忙しくなった。

どうも近いうちに、園児の発表会があり、その準備の為、アパートに帰ってからも、飾り付けや衣装を作っていた。

夕食もインスタントですますほどで、隆弘とも会えていない。

しかし、メールや電話で必ず1日1回以上は連絡を取りあっていた。



ある朝、由紀乃は疲れ過ぎたせいか、朝寝坊をしてしまった。

いつもは保育園バスで通勤するのだが、そのバスはすでに発車したあとだった。

昨日、園長に今日、打ち合わせがあるから絶対、遅刻や欠席をするなと言われていた。


アパートを出ると、バイクタクシーがいた。
このバイクタクシーを使うと保育園の時間に間に合う。

しかし、隆弘から、「バイクタクシーは危ないから、絶対、乗るな。」と釘を刺されていた。


由紀乃はタクシーを探した。
大きな通りまで出て探したけど、空車のタクシーがいない。

さっきまで、雨が降ってたせいだろう。

由紀乃は悩んだ。

怖い園長の顔が浮かんだ。




結局、由紀乃はバイクタクシーを捕まえた。

バイクタクシーは渋滞をスルスルと抜けて行った。

゛これだったら、時間に間に合う゛

とバイクの後部座席で安心しながら乗っていた。

゛あの角を曲がったら、保育園だ゛

と思った瞬間、水溜まりが光り、その水溜まりでバイクがスリップして、

大きな音を立て、バイクは転倒した。

由紀乃のバッグは宙を飛び、由紀乃はバイクの下敷きになった。


続く