杉大門通りの奥の方、「継ぐ鮨政」のご近所という立地。
かねてから良い評判は聞いていたものの、あまりに普通すぎる外観ゆえにこれまで敬遠しておりました。
雑居ビルの2階。店内もなんてことのない平凡かつ安普請なしつらえで、テーブルなどは悲しいほどにチープです。
しかし、出てくる料理は、思いがけずちゃんとしていました。
最初の前菜盛り合わせは、種類こそ多いものの、1人分の量は極少で不満大。
おいしいと思っても、2口目がないのです。
甘辛い鰻の煮物、酔っぱらい鶏など、もっと食べたくなる味わいでした。
分厚いフカヒレは、白濁したスープが印象的。
クコの実や朝鮮人参が入り、味も香りも薬膳系です。
まろやかなとろみスープにフカヒレの繊維を含ませて食べると、なかなか滋味深い。
四川らしい辛味料理としては、豚と生姜の青とうがらし炒めがずば抜けて辛かったです。
おぞましいくらいに青とうがらしが入っているのです。
豚三枚肉と甘酢で煮た薄切りの生姜だけを食べれば良かったのに、間違って青唐まで口にイン。
数本食ってしまいましたが、悶絶の辛さでした。
口中が溶融するくらい熱くなり、かわりに背筋が寒くなる感じ。参りました。
魚料理は、イシモチの揚げ物。甘辛い野菜の餡がまぶされていました。
タイ料理の場合、よくマナガツオでやりますね。あんな感じの料理です。
韓国人などはこのイシモチが大好きだそうですが、私には今3つ、理解できかねる魚です。
ご自慢料理は、汁なし坦々麺と麻婆豆腐。
どちらも食しましたが、汁なし坦々麺には特に感慨なし。
麻婆豆腐は、まずまずのおいしさでした。
都ホテルの「四川」よりもはるかにマシ。花椒の香りがしっかり効いていて、後口がスッとします。
締めのスープもまあまあ。
すっぽんなどが入った豪華版でしたが、肝心のスープがちょっと甘かった。
ただ、良い材料で出汁をとっているのは伝わってきます。
どういう経緯か知りませんが、ワインは「マキコレワイン」一本背負い。品ぞろえは微妙で、値段も安くありません。
四川料理屋ですから、フランスワインだけである必要性はありません。
力強さのあるニューワールドなどを入れるべきでしょう。
オーナーシェフは銀座の「趙楊」で修業されたそうですが、果たしてこれから高級路線を歩むのか、それとも庶民派でいくのか。
価格帯や狙う客層などを定めないと、中途半端な店に終わります。
少なくとも今の立地や内装では、高級化は無理でしょうが・・・。
四川料理 蜀郷香 (四川料理 / 四谷三丁目駅、曙橋駅、四ツ谷駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.5