●昨年の同時期と比べると、不動産鑑定士業界も随分進展したように思います。
 
「ホームページからの鑑定依頼なんか来ませんよ」という声がほぼ全体を占めていました。
 
今では数事務所が戦略的ホームページ作りに取り組み、成果を上げたり手ごたえをつかんでいるようです。
 
他士業のように月10~150万のWEB広告費は予算の関係上かけることができませんが、たかだか1万弱でも相応以上のページビュー数や問い合わせ数、受注数が得られています。
 
 
●特に零細事務所にとって、業績は所長の人脈と営業力次第です。
 
「営業が苦手」と考えるのは、得手不得手もあるものでしょうが、事務所の拡大、特に維持は「営業」以外に成り立たないということをより真剣味をもって考えてもらいたいです。
 
最近相談に応じた事務所様は、「デューデリジェンスがゼロになった」と憂いてらっしゃいました。
 
はっきりと言いますと、
 
・仕事の入り口が3つ以下しかない事務所
 
・仕事の入り口を増やす行動がとれていない事務所

 
のトップは今からでも取り組みを始めてください。
 
やれば必ず成果がでます。
 
必ずしも営業は「飛び込み」型だけではありませんから。
 

●ビジネスの営業段階では、「モノ」ではなく、「コト」を売れ!と言われています。
 
もはや言い古されている言葉なので、あえて説明は省いて差しさわりないのではないかと思いますが、簡単に言及すると。
 
ある製品Aを売りたいと思うならば、Aそのものがもつ機能やスペックをセールスするのではなく、Aを使用することにより実現される事象を訴求しなさい、ということです。
 
例えば、エアコンであれば、
 
「このエアコンは○分間で設定温度になります」「従来品の○%省エネです」という説明よりも、
 
「夏の猛暑でも、スイッチをつければ○分でスッと汗が引いて快適な住空間が創り出せます」「○%の電力をカットできますので、真夏・真冬に掛かっていた電気代が節約できて、余った分はそっくり家計に回すことができます」
 
「モノ」ばかりを訴求しても、価値を感じてもらえないと押し売りになりますから、「快適に夏を過ごせること」「電気代がかさまないこと」を提案して、「それが実現できのがこの商品Aです」の方が消費者は価値を感じます。
 
 
●これが製造業に限った話と捉えるのは間違いで、Aという商品を単発契約で売りさばけば良いという話ではありません。
 
当然サービス業においても同じことが言えます。
 
当然、サービス業では継続利用をしてもらわないと経営は厳しくなります。 
 
実は、サービス業こそ、「モノ」より「コト」を売ることが重要になるのです。
 
それこそ、「(サービスという)モノ」ではなく、「(サービスを利用することによってもたらされる)コト」を売り込まなければならないものです。
 
具体的に、不動産鑑定業ではどのようなことが言えるのでしょうか。
 
それは、不動産の鑑定や調査報告書を発行するだけでは、「モノ」売りレベルから脱却できません。
 
本当に必要なことは、当事務所に依頼してもらえるといつでも不動産に関わる疑問や問題に対してアドバイスを受けることができる、そのことによって無駄な投資を防ぐことができ、また最も理想的な不動産活用ができるなどの「コト」を売るべきなのです。
 
目指すべきは、「企業や個人などのお客様にとってひとつの機能を担うこと」が最も重要になるのです。

機能として入ると、「○○鑑定事務所がいなければ業務が進まない」体制となり、切ってもも切れない存在となるのです。
 
継続受注してくれる先は、そういう関係ができた先に他なりません。
 

●会社というものは、大きくなればなるほど自社の情報が形になっていくものです。
 
以前はなかったものでも、徐々にその数や量は増えていきます。
 
立ち上げ当初は名刺と会社案内程度ですが、徐々に拡大するに従い、商品案内パンフレットや、料金表、ホームページ、スケジュール管理表、業務契約書、就業規則、給与体系、業務マニュアル、評価基準などなど、情報は形を帯びたものに還元されていきます。
 
 
●なぜこのようになっていくかというと、ひとえに「人が見えるものを信用する」という原理が根底にあるからです。
 
英語では「Seeing is Believing」日本語では「百聞は一見に如かず」とあるように、口頭で100の説明を受けるよりも、1のアウトプットを見る方が分かりやすいからです。
 
ビジネスでは、「言った」「言わない」「聞いてない」などのコミュニケーションミスによるトラブルがつき物です。
 
これらのことは、そもそも、「言葉や口頭だけでは正確に物事は伝えられない」ものだからです。
 
たった一つの表や図、数字やグラフ、カタログ、サンプルが間にあるだけで、見る側はそれが何の表や図かを理解しようとします。説明する側は、それに沿って話をするので、コミュニケーションミスを最小化することができます。
 
上手に視覚に訴えることができたら、お客様に「分かりやすい説明をしてくれる」と思い、そうでない場合よりも好意を抱きます。
 
ミネソタ大学のリサーチセンターによると、説得力というものは視覚物を用いると43%高くなるというデータを出しています。
 
 
●このブログを読んでいただいている方ならば、既に私が何を言いたいかお分かりになると思いますが、
 
不動産鑑定士事務所でも、お客様に何かを伝える際には、相応の視覚物を準備しておいてくださいと言いたい訳です。
 
お客様に事務所を案内する場合には、(カンパニープレゼンテーションと言いますが)事務所案内パンフレットを用意してください。
 
サービスの説明をするのであれば、商品パンフレットを。
 
報酬体系を説明するならば、料金表を。
 
より多くの人に知ってもらいたいならば、今ならホームページを。
 
従業員に給与を説明するならば、給与体系と評価軸を。
 
従業員のスケジュールを管理したいのであれば、スケジュール表を。
 
 
●自分が思っている程、情報とはなかなか相手に伝わらないものです。
 
「情報」とは、自分が「伝えたこと」ではなく、相手に「伝わったこと」が「情報」なのですから。
 
自分以外の者に、伝えたいことがあるのならば、このような視覚物を利用するととても効果的ですので、少しずつで構わないので、自社の情報を形にしていってください。
 
もし、作り方が分からないようであればいつでも聞いてください。
 

●昨日は15億の設計事務所、今日は3億の会計事務所にお邪魔しましたが、どちらも似た課題を持っています。
 
従業員は20名~30名規模で、関与先も多く仕事はたくさんあるのですが、一方で内部体制が極端に遅れています。
 
資格業では、事務所があるレベルまで成長すると、マネジメント(組織)の問題が浮上してきます。
 
所長の片腕がいない=所長一人が頑張るのみ
 
担当者によりサービスが異なる=事務所サービスにバラツキが生じる
 
人が定着しない=せっかく教えても、また一から採用そして育成
 
クレームが増え始める=信じられない凡ミスが発生
 
などなど人に関わる問題が浮上します

 
 
●実務に追われるあまり、「組織」を考えてこなかった「成れの果て」とでも言うのでしょうか。
 
私はいつも、士業の経営者に「実務と経営のバランス」の重要性をしつこい程に伝えます。
 
零細事務所の場合はマネジメントよりもマーケティング中心でいいのです。

 

とにかく売上を向上させ、軌道に乗せることに命をかけます。
 
しかし、6~10名の段階に差し掛かったくらいから、経営は「マーケティング7:マネジメント3」で考えていくのが理想です。
 
この段階をマネジメント1程度で成長を続けると、先程の事務所のようになります。
 
このようになってから、ある段階でいざ改善!となっても、ゼロからのスタートなので、想像以上に骨が折れます。
 
 
●所長の顔が見えて、所長の声が社員に届き、所長の思いをみな知っている小集団での経営をよく、インディアンの部落に喩えて、インディアン経営と言います。
 
士業では6名~10名まではこれでいけます。
 
しかし、これを越えた時点で事態は一遍します。
 
つまり、トップがどんなに大きな声を張り上げても、全社員に声が届くかなくなる瞬間。

 

しゃべっている最中に、遠い方ではよそ見をしたり、聞いてなかったり・・・・。インディアン経営の終焉です。
 
それにも気付かずにどんどん売上だけを見て拡大を続けてしまっては、本当に大事にしなければならない「ウチらしさ」がなくなってしまうのです。
 
 
もし、あなたの事務所がこの6名~10名事務所であれば、今日からでも組織に意識を向け、組織論の勉強を始めてください。
 
この段階から手をつけていれば、一気に拡大ができます。

●先日、ご支援している某不動産鑑定事務所の経営会議にお邪魔してきました。
 
昨年暮れからのお付き合いで、当時の売上は6千万くらいだったでしょうか。
 
今期は開業以来、初めて1億円を突破します。
 
着地は1億2千万くらいで、経営会議も活気が満ちています。
 
その代表が何をやったのかをお伝えすると、
 
その答えは簡単で、
 
営業に力を入れた成果です。
 
 
●こと資格業の資格者は「営業」を全力で嫌う傾向があります。
 
こんなことをしたら同業からなんて言われるか・・・
 
もともと営業は私の性に会わないんで・・・
 
経費がかかりますからできません・・・
 
とかくこのような後ろ向き意見が多いようです。
 
このような発言をする方の多くは、
 
「品質に自信をもっているんです」
 
ということを口にします。
 
「良い鑑定評価書を書いていたら売上は後から付いてくるんです」
 
とも。
 
これは全くその通りですし、私もどちらかというと同じ意見を持っています。
 
しかし、ちょっと考えてみてください。
 
私はそのような話を聞いた、次の瞬間にこのように思います。
 
「そんなに良い商品だったら、もっと多くのお客様に広めればいいのに・・・」
 
と。
 
 
●飲食業では、「隠れた名店」なんてものがあります。
 
ことBtoC(個人向けビジネス)では、通用しますが、
 
BtoB(法人向けビジネス)では、これは全く通用しません。
 
はっきり言えば、市場の見る目は、単なる実績のない零細事務所、に過ぎません。
 
「隠れた名店」どころか「知られることのない迷店」です。
 
このような事態を避けるには、2つしかありません。
 
ひとつは、企業をつぶすか、売上がゼロになるまで我慢する。
 
もうひとつは、露出度を上げることです。
 
 
●私はこの後者のことを「営業」と呼びます。
 
決して売り込みにいく、飛び込みをする、わけではありません。
 
より多くの人の「目に触れてもらう」、その次に資格業者が最も得意とする「専門性」を見せるのです。
 
「売りに行く」のではありません、「客を呼ぶ」という発想です。

 
 
●公園にたくさんいる鳩を捕まえようと思ったら、あなたはどうしますか?
 
追っかけても逃げるだけですね。
 
ひとつには、豆を一旦蒔いてこちらにおびき寄せておいて、鳩が手の届く範囲まで来た段階で捕まえます。
 
士業のマーケティングを効果的にやりたいのであれば、まさにこの手法が適しています。
 
ここで重要なポイントである「豆」が意味するものが、まさに「広告」です。
 
またそれは、ただの広告ではなく広い「知識」や高い「専門性」がセットになったお客様を魅了するものでもあるのです。
 
これらの行為が、いわゆる私が言う「営業」です。