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「死ぬときに貯金ゼロ」を目指す…お金のプロが教える一生困らない"絶妙な老後資金の取り崩し方"



老後を豊かに過ごすために、必死でお金を貯めている人は多い。「お金を残すより、思い出を残すほうが人生は豊かになります。老後は死ぬまで資産残高を一定に保つ必要はありません。むしろ、『死ぬときはゼロ』になることを目指して、資産を減らす戦略も必要」

富裕層の裾野が広がっている

 世界的に経済格差が拡大し、先進国でも貧困が大きな社会問題になっている。しかしその一方であまり指摘されないのが、新興国を含めて膨大な数の富裕層が誕生していることだ。

 日本が「失われた30年」で停滞しているあいだに、世界の富は大きく膨らんだ。これによって、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクのような、個人資産30兆円(約2000億ドル)を超える国家に匹敵する富をもつ者が登場したが、これは富のピラミッドの裾野が広がったことも意味している。

 クレディスイスのレポート(2023年)によると、世界には資産100万ドル≒1億5000万円を超えるミリオネアが6000万人もいる。その結果、かつての富裕層の基準はミリオネアだったが、いまや「スーパーリッチ」と呼ばれるのはビリオネア(資産10億ドル≒1500億円)以上だ。

 お金で幸せは買えないとされるが、同時に、お金があれば幸福になれるとも信じられている。これはどちらも正しく、今日の食費や来月の家賃を払えるかもわからない貧困層がまとまった収入を得れば幸福度は大きく上がるだろう。

 しかし、生きものとしての人間が物理的に使えるお金には限界がある(毎日、ミシュランの星付きレストランで食事をしていたら成人病になってしまう)。誰もがお城のような豪邸に住んだり、スーパーカーを乗り回したり、プライベートジェットやクルーザーを保有したいわけではないだろう。こうして富裕層の多くは、世間一般の「ゆたかな生活」をしていても口座にある資産を使い切れないと気づくことになる。

「口座に放置されているお金をどうとらえるか」が幸福度を左右する 

 だったら、そのお金をどうすればいいのだろうか。この疑問に答えたことで、ビル・パーキンスの『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』は世界的なベストセラーになった。

 原理的に考えるならば、お金とは国家が紙に印刷した信用状(紙幣)であり、金融機関のサーバーに格納されたデータでしかない。このようなかたちのないものは不安なので、富裕層はお金(紙あるいはデータ)を不動産や金(ゴールド)、あるいは高級ワインのような資産価値のある“モノ”に変えようとする。

しかしそうやって資産をどんどん増やしていっても、幸福になれるとは限らない。人間の脳は進化の過程で、よいことにも悪いことにもすぐに慣れてしまうよう「設計」されたからだ(経済学ではこれを「限界効用の逓減」として説明する)。

 脳のもうひとつの特徴は、得したときの喜びよりも、損したときの痛みをはるかに大きく感じることだ。これも考えてみれば当たり前で、重大な失敗(果実のなる茂みに近づいたらライオンに襲われた)は脳に刻み込んでおかなくてはならないが、ちょっとした喜び(お腹いっぱい食べられた)にいつまでも満足しているようでは、より大事なこと(たとえば生殖)に努力しなくなってしまうだろう。

 このふたつの“脳の仕様”から、多すぎる富は人生を幸福にするよりも、トラブルの原因になる。

 宝くじで数億円を当てた幸運なひとたちを追跡調査したアメリカの研究では、最初は幸福度が大きく上がったものの、やがてもとの水準に戻るか、逆に不幸になることがわかった。友人や親族がおこぼれに預かろうと集まってきて人間関係が破綻し、孤独になってしまうからだという。

 同じくアメリカの超富裕層を調べたレポートは、スーパーリッチたちが富によって面倒に巻き込まれていると感じていることを明らかにした。莫大な資産を管理するためにひとを雇うと、こんどはその管理者を管理しなければならない。恵まれすぎた子どもたちは努力する意味を見つけられず、どうすれば自分のアイデンティティを確立できるか迷ってしまう。


使い道のない金は“ムダ”である

 ウォール街のトレーダーとして成功し、ヘッジファンドのマネージャーを務めるパーキンスは、この矛盾に早くから気づき、「使い切れない富をもつ者は、どうすれば幸福になれるか」を考えるようになった。

 ここで「使い切れない」というのは、数百億円、数千億円の資産のことではない。日本人(大卒男性)の生涯収入は3億から4億円(退職金や定年後再雇用の収入は含まない)で、これで結婚して子どもを育て、マイホームを購入し、老後のための貯蓄をしている。そう考えれば、(むろん個人差はあるものの)数千万円、数億円の金融資産でもほとんどのひとは死ぬまでに使い切れないだろう。 

 伝統的な社会では、もっとも大事なのは「イエ」の繁栄で、資産を子どもや孫に継承することが「幸せ」とされた。儒教では祖先を祀る者がいなくなると、魂は天に昇ることができず永遠にさまよう。だが現代社会ではこうした宗教観は薄れ、子どもには生前贈与で必要な額を渡せばいいと考えるひとが増えてきた。

パーキンスの本が共感を呼んだのは、「使い道のないお金は無意味だ」という、誰もがうすうす感じていながら口に出すのをはばかられていた真実を明快に述べたからだ。

 パーキンスは、「お金は生きているうちに有効に使い、死ぬときにはゼロになっているのがもっとも有意義な人生だ」と語りかける。「ゼロで死ね」という主張は欧米の文化では異質なものかもしれないが、「諸行無常」や「すべては空である」という仏教の教えが社会に根づいた日本人には慣れ親しんだもので、だからこそ広く受け入れられたのだろう。





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