気まぐれ小説 | じゃすとどぅーいっと!

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ヨノナカニヒトノクルコソウレシケレトハイフモノノオマエデハナシ

※激しく捏造された内容となっておりますので、閲覧の際はお気をつけください



約束



「・・・よォ。」


わざわざ盆の時期を外したお蔭か、墓参りに来ている人の姿は疎らだ。

夕方ということもあって、来ていた人も帰路につくのがほとんどだった。


目の前の墓石には花や食いモンこそなかったが、綺麗に掃除されていることと線香の燃えカスからして、俺が来る数日前にでも誰かがこの墓に参ったのは明らかだった。


「・・・ババァ、来たんだな。」


持ってきたワンカップの酒を一つ供え、後ろに回って寄りかかるように座った。


「・・・悪かったな。ババァに怪我させちまってよォ・・・」


手に持っていたもう一つの酒を開けると、軽く墓石にぶつけてから口に運ぶ。


「あん時・・・・・・アンタの代わりに護ってやるって、ババァと・・・それからアンタとも約束したのにな。」


飲み込んだ酒が流れていくのを感じながら、天を仰ぎ見た。


「でもよ・・・信じらんねェかもしれねェが・・・・・・今度こそほんとに、アンタの大切なモンは俺が・・・俺たちが必ず護るからよ。もう少し、見守っててくれや。」


ゆるく吹き抜けた風が何かを言った気がした。


そんなことなんざ、ある訳はねェが・・・

少なくとも、今ここにいる俺の耳には。・・・いや、俺の心には。

しっかりと届いたぜ。 辰五郎さんよォ―――


残りの酒を一気に呷ると、しばしその風に包まれていようと目を閉じた。









「―――郎。・・・辰五郎!ねぇ、聞いてる?」


「あ・・・あぁ、何だ?」


「だから、また次郎長がね―――」



一目惚れなんざ柄にもねェが、初めて見た時から“いい女”だと思った。

そしてそれ以上に、あの次郎長に説教出来るこの女に興味が湧いた。


「・・・次郎長。お前の女か?」


「違げェよ。ただの口うるせェくされ縁ってヤツだ。」


「そうか・・・・・・いい、女だな。」


「・・・オメェ、あぁいう姦しいのが好みなのか。」


「いや、そういう訳じゃねェが・・・ま、気の強ェ女は嫌いじゃねェな。」


「・・・悪趣味だな。」


「はは。まぁ、そう言うな。」


次郎長の気持ちには薄々気が付いていた。

そもそも気に入らねェ人間を傍に置いておくなんざするはずがねェ。


「気になんなら、早めにツバつけといた方がいいぜ。あれでもそこそこモテるらしいからな。」


「だろうなァ。・・・でもま、俺はそんなことに現抜かしてるほど暇でもねェんだよ。第一、色恋なんざなるようにしかなんねェだろ。」


―――初めはそんな風に思ってた。


それが、いつの間にか一緒にいる時間が長くなり過ぎて・・・

どっかりと俺の中に根付いちまったモンだから、俺にもどうにも出来なくなった。


「・・・なァ、綾乃。」


「ん?どうかしたかい?」


「俺よォ・・・・・・お前が、好きだ。」


「え・・・」


「この街が好きだから、護りてェと思って岡引になったんだけどよ・・・・・・今の俺は、お前を護りてェからこの街を護ってんだ。」


「辰五郎・・・」


「・・・不純だって笑うか?」


「・・・そんな、こと・・・・・・そんなこと、ない。」


「・・・そうか。」


「私も・・・好きだよ、辰五郎。」


いつか俺をやめる時まで・・・俺はあと何度、綾乃に「好きだ」と言えるか。

そんな先のことなんざわかりゃしねェが。


それが出来る今この時と。

そこに生きていられていることに、俺は心から感謝したい。


「俺が、お前を幸せにしてやる。お前も、この街も・・・しっかりと護ってやるから。」



そうして、付き合うようになって二年。

今日、ようやく俺の妻として綾乃を迎え入れることが出来るように―――


「ちょっと、辰五郎!聞いてるの?」


「お・・・おぅ。聞いてるって。」


「じゃあ、後でちゃんと次郎長に・・・」


「なぁ、綾乃。」


「・・・ん?何?」


「あの、よ。やめねェか?今日くらい・・・」


「何を?」


「その・・・これから祝言挙げるって時によ、次郎長の説教の話なんざしなくても、な?」


「あ・・・そ、そうだよね。ごめん・・・」


嫉妬とか、そういうことじゃねェ。

コイツのこういう部分に俺は惚れちまった訳だから、いつでも“らしく”ある綾乃を見てるのは好きだ。


ただ、折角祝いに来てくれた次郎長の奴が、祝言の直前にまで俺たち二人で説教していたなんざ知っちまったら、居た堪れない気持ちになるんじゃねェかと思う訳で・・・


「いや、気にすんな。お前が次郎長のこと気にかけてんのはわかってるからよ。」


「・・・ありがとう、辰五郎。私、アンタと一緒になれて幸せだよ。」


きっと、俺の心臓が止まる頃には、この世を満喫し終わってるんじゃねェかと思う。

やり残したことなんざ一つもなくて、ただただ綾乃の隣で笑い続けてるんじゃねェかと思う。


俺の生きる理由が、コイツとこの街を護ることだったのだとしても、俺はそれでもかまわねェ。

むしろ、そうでありたいとさえ思う。


「・・・俺もだ。」


それだけ、俺は幸せだと思っているんだ。






「た・・・たつごろ・・・・・ッ辰五郎!オイ!しっかりしろよ、オメェ!何やってんだ!オメェ・・・ほんと・・・・・何、やってんだ・・・」


「じ、ろちょ・・・・・・無事・・・か・・・?」


「何で、こんなこと・・・・・・何で、俺みてェなの庇って・・・こんな・・・!」


「は、はは・・・・・・そん、な・・・耳元、で・・・さわ、ぐなよ・・・」


「・・・お、登勢・・・お登勢を置いて逝っちまう気なのか!?テメェが護るんじゃなかったのかよ!」


「アイ、ツは・・・だいじょ、ぶさ・・・・・・」


「何が大丈夫なんだよ・・・テメェが死んだら、誰がアイツを護んだよ!」


―――俺にとっては・・・な、次郎長。


お前も、大事な人間で、護りてェモンの中に入ってんだよ。

だから、お前を護れてよかったと思ってる。

それに、俺はちゃんとアイツのことも護ったんだ。


俺の代わりにアイツを護れる、お前を護ったんだから―――。


「じ・・・次郎長・・・・・・お登勢を・・・あの街を・・・・・・頼、む・・・」


「・・・た、つ・・・・・・?辰五郎ォォォォォ!!!」









「―――っ・・・!な、何だ今の・・・・・・夢、か・・・?」


軽く目を瞑っていただけのつもりだったが、気付けば辺りはすっかり暗くなっていた。


「今のって・・・ババァと・・・・・・はは。そうか。」


立ち上がって墓石の正面へと回ると、しゃがんで両手を合わせた。


「アンタがどれだけ大事にしてんのか、ちゃんとわかったつもりだからよ。安心してくれや。」




万事屋の階段を上りかけて、店にぼんやりと明かりが灯っていることに気付いた。


「・・・まだやってんのか?」


だが、暖簾は下げられていて、店の中も静かだ。

戸に鍵はかかっていないようで、引けばあっさりと開いた。


「・・・店はもうとっくに閉まってるよ。」


カウンターで紫煙を燻らせるババァの姿を見て、さっきの出来事を思い出す。


「・・・・・・なァ。」


「とりあえず、そんなとこ突っ立ってないで座んな。・・・営業時間外なんだ。ババァの晩酌にでも付き合ってもらうよ。」


促されるままに椅子に腰を下ろすと、お猪口と徳利が置かれた。


「・・・・・・・・・人って、化けるモンだよな。」


「・・・何が言いたいんだい。」


酒を口に運びながら、ポツリポツリと言葉を交わす。

ババァ相手のこんな時間も、たまにはいいんじゃねェかなんて思った。


「なァ、バーさん。アンタ、愛されてんだな。」


「何だい、急に。」


「いや・・・何となくそう思ったんだよ。」


「ふん。・・・でもまぁ、そうさね。愛し愛されてるから、幸せだと思えるんだろうねェ。」


「・・・いい年して惚気か?」


「テメェが振ったんだろ!・・・まぁ、旦那だけのこと言ってんじゃないよ。私らの家族みんな・・・ってことさね。」


数え切れねェほどたくさんのモンを取り零して。

何度も、もう背負い込まねェと思ったりしたが・・・結局俺は、その背負い込むモンがなくなっちまうと生きた心地がしねェんだ。


ったく、我ながら面倒臭ェ性分だぜ。

それを護ることが、俺の生きる理由になってる、なんてな。


俺も、アンタと似たタイプの人間なのかもしれねェな。


「バーさん、長生きしろよ。」


「・・・言われなくたってするよ。家賃もしっかり回収させてもらわないといけないんだから。」



                                          ―完―



―――――――――――――――――――――――――――――――――


―あとがき―


おふぅ・・・(´д`lll)

何かすいません、色々すいません。


話が飛びまくりでかなり読みにくかったりとか。

コミック読んでない方にはかなりネタバレな内容になっちゃってたりとか。

辰五郎さんを勝手にキャラ付けしてしまったりとか。


ほんとすいません。

何から何まですいません。



コレを書き始める数時間前に、ニコニコに行ってまして。

ランキング覗いてたら、やってみたのカテラン2位に蛇足さんの歌う『心拍数♯0822』という曲を見つけたんです。


別に、普段から蛇足さんの動画を見ている訳じゃないんですけど、どんな曲なのかなぁ・・・と興味を持ったんで、ついその動画をクリックしてしまったんです。


そしたら・・・何だか妙にハマってしまいまして。


ずっとずっとリピしてるうちにムラムラしてきて、この曲でナニか書きたくなってしまったんです。


・・・で、出来たのがコレ。←



人選は、歌詞を見てたら自然に浮かんだので、辰五郎さんとお登勢さんで。

ただ、辰五郎さんとかどんなキャラかよくわかんないんで、かなり好き放題書かせてもらっちゃいました・・・w


銀ちゃんはいなくてもよかったんですが、コミックの34・35巻を改めて読み返してたら、どうしても出張ってきてしまったんで、銀ちゃんを主軸にすることに。


色々と書くことはぽんぽん浮かんできてたんですけど、話が全くまとまらなくて、結局こんな感じの仕上がりになってしまいました・・・orz


一応、時期的にはかぶき町四天王篇の後日談のつもりです。


後日・・・と言っても、銀ちゃんもお登勢さんも怪我が治ってからなんで、数ヵ月後・・・って感じでしょうかね。



曲を聞きながらコミック読んでたら、何だかすごい泣けてしまって・・・

いつか絶対アニメでもやってほしいなぁ・・・とか思いましたです。


銀ちゃんがお登勢さんの元に向かうシーンも。

キャサリンが銀ちゃんに言い寄るシーンも。

新八と神楽が銀ちゃんに言い寄るシーンも。

かぶき町の皆が、皆でかぶき町を護ろうとするところも。


何かもう、押しつぶされそうな気持ちで読みました。

ほんとに、胸が痛かった。


・・・それなのに、こんな出来になってしまうノアクオリティ。

さすがとしか言いようがありません。


日々精進します・・・(;´Д`)ノ



そういや、コレ書いてる時に思ったんですが・・・

辰五郎さんも次郎長も、いつから綾乃さんのことを「お登勢」って呼ぶようになったんですかね?

源氏名ってコトは、今のお店やる前はなかった名前だろうし・・・


と言うか、辰五郎さんはお登勢って呼んでたんですかね?


次郎長にお登勢さんを頼んでいくシーンは、お登勢って書いて「アイツ」ってなってたから・・・もしかしたら、辰五郎さんは呼んでなかった・・・って線も無きにしも非ずだと思うんですが。


そしてそして、かぶき町の一大事だって時に、真選組の連中はナニしてるんでしょうか・・・?w

こういう時に仕事しないでどうすんの警察ぅぅぅぅぅ!


ヅラも、九ちゃんが出てこなかったんだからスタンバってないで出てくればよかったのにwww


ま、出てきてしまったらお登勢一家の勢力だけ抜きん出て強くなりますかねw


あんまり追求しちゃいけない部分かもしれないので、気にしないことにしときますwww



曲が気になった方は、コチラ からどうぞ。

蛇足さんの歌う『心拍数♯0822』へ飛びます。


ほんといい曲だと思うんで、ボカロとか聞いたことない方もゼヒ!