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My sweet honey
今日も攘夷活動の一環として、朝から夜遅くまで江戸中を走り回っていた。
まぁ、大半は真選組に追われていたのだが・・・
そんな日が続いたせいで、ここ数日家には帰れず。
「はぁ・・・」
疲労からくるため息ではない。
俺の気持ちがこんなにも沈んでいるのは・・・
この携帯電話が原因だ。
「家に帰らないと、携帯が充電出来ないではないか・・・」
そんな言葉を掻き消すかのように、空からは大粒の雨が降り注いでいた。
「今日は雨か。」
天気予報も日付も時計も表示されない電池の切れた携帯を、恨めしそうに見た。
「はぁ・・・」
そんな事をしたところで、電源がつく訳でもない。
雨宿りがてら、集会所へ向かう事にした。
少し雨に濡れてしまった髪を拭きながら、誰もいない部屋で一人パソコンの電源を入れる。
外は更に雨脚が強くなり、雷も鳴り始めた。
雨は嫌いではない。
たまには濡れて歩くのもオツなものだ。
雷に至っては、嫌いどころか大がつくほど好きで・・・
土砂降りの雨が降る夜。
雷の鳴り響く中、彼女と2人で過ごすのは、まさに至福の時。
雑音は一切聞こえず・・・聞こえるのは彼女の声だけ。
まるでこの世界に2人しかいないかのような感覚にとらわれる。
寒い部屋で、お互いの体温だけを感じながら・・・
なんて事を考えていると、数日連絡のとれていない彼女を思い出す。
「ハニー・・・」
周りからはよく変な目で見られるが、俺は彼女の事を「ハニー」と呼ぶ。
彼女は俺のハニーなのだから普通ではないか。
(♪~♪~♪)
起動したパソコンから、新着メールを知らせる音が聞こえた。
「誰だ・・・?」
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To:ダーリン
2ヶ月おめでとう
これからもずっと一緒にいようね
大好き
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ハニーからのメールだった。
「2ヶ月・・・」
日付を確認すると・・・3月22日。
また出遅れてしまった。
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To:ハニー
2ヶ月おめでとう。
遅くなってすまない。
これからもずっと一緒だ・・・
愛している。
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「はぁ・・・」
今日何度目かわからないため息が出た。
記念日だと言うのに、ハニーに会う事も出来ない。
いや・・・今日だけじゃない。
これからしばらくは色々と忙しくなって、なかなか会う事は出来ないのだ。
(♪~♪~♪)
落ち込んでいた俺の元に、また1通の新着メールが届いた。
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To:ダーリン
会えないのは寂しいけど・・・
『心が繋がっているから』
ハニーは幸せです
それに、恋愛成就のお守りも買っちゃった
今度会った時に渡すね
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「・・・・・・」
そうだったな。
どんなに離れていても、心は繋がっている・・・
そう思うと、さっきまでの沈んだ気持ちもどこかに吹き飛んでしまった。
「ありがとう・・・ハニー・・・」
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To:ハニー
そうだな・・・
俺も幸せだぞ、ハニー。
次に会える日を楽しみに待ってる。
【追伸】
次に会う時は、翌日も休みを取っておくといい。
優しくする余裕はなさそうだからな。
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冗談交じりで書いてみたが・・・
どうやら冗談だとは言い切れなさそうだ。
このメールを見て、きっとハニーは頬を赤らめていることだろう。
だが・・・俺たちの考えている事は同じなのだ。
ハニーも同じ気持ちでいるにちがいない。
とりあえず今は・・・
ハニーを想って暴れだす直前の、俺のんまい棒を落ち着かせる術を考えるとしよう・・・。
雷も鳴り止み、雨脚の弱まった外を見つめ
今度は掻き消されないように少し大きな声で言う。
「ハニー、愛しているぞ」
~END~