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Christmas Night (後編)
外に車を待たせていたようで、すぐに乗り込む。
辰馬が目的地を告げていないのに、車は走り出した。
「・・・ね、どこ行くの?」
「着いてからのお楽しみじゃ!あはははは!」
数十分後。
車は目的地に到着した。
着いた先は・・・
辰馬の乗ってきた小型船。
(うわ・・・船の中って初めて入った・・・)
物珍しそうに辺りを見渡していると、後ろから抱きすくめられる。
「辰・・・」
「すまんのう・・・もうこんな時間になってしまったのう・・・」
そう言われて、ハッと気付く。
(そうだ・・・あんな事になって忘れてたけど・・・辰馬が無事でよかった・・・会えてよかった・・・来てくれて・・・嬉しかった・・・)
でも・・・
(・・・じゃあ何で遅れてきたんだろ?さっきから理由も言わないし。それに、自分が電話しても出なかったのに、銀ちゃんが電話したら出てるし・・・)
そう思うと、今度は怒りがこみ上げてきた。
「・・・何で遅れたの?」
「すまんのう。急に仕事が入って・・・」
「だったら連絡くらいくれたっていいじゃん!」
「乃亜・・・」
「どれだけ心配したと思ってんの?人の気も知らないで!」
いつもは、“仕事”と言われると“仕方ない”と諦めていた。
働いてる辰馬は楽しそうで、そんな辰馬が好きだったから。
けど・・・今日は何故かそう思えない。
・・・いや、ほんとは普段から我慢していただけなのかもしれない。
「今日会えると思って、すっごい楽しみにしてたんだから!服だって新しいの買ったんだよ!?髪型だってちゃんとセットしてもらってきたのに!」
言ってることがすごく子供っぽいっていうのはわかってた。
でも、とまらない。
「寒い中、4時間も待ってたんだよ!?雪も降ってたし・・・周りに誰もいなくなっちゃうし・・・」
ついに涙まで零れてしまった。
ほんとに子供みたい。
「バカ!ほんとバカ!」
「・・・っはははは!」
突然笑い出す辰馬。
「ちょ、何笑ってんの!?怒ってるんだよ?ちゃんとわかってる?」
「ははっ・・・すまんすまん。おまんがそんな風に言うの初めてじゃき・・・可愛いなぁと思ってのう。」
「何言ってんの?ほんと、状況わかってないでしょ!」
「乃亜!」
「何!んんっ!」
振り向いたら・・・キスされた。
しかもいきなり深いのを。
「んんん・・・ん~、っはあ・・・はぁっ・・・なっ・・・!」
文句を言おうとした自分を抱きかかえ、辰馬は奥の部屋に歩き出す。
「ちょっと!下ろしてって!ねぇ、辰馬!」
「そんなに暴れたら落ちるぜよ?」
いつもは見せないような笑顔にドキッとしてしまう。
大人しくなった自分を満足そうに見つめ、部屋のドアを開けると・・・
そこは寝室。
ベッドの上にドサッと下ろされ、辰馬が覆いかぶさってくる。
「なっ!何してんの?離してって・・・!」
自分の言葉など聞く耳も持たず・・・
首元に顔をうずめられ、そっとキスされる。
「まっ・・・!辰・・・馬!今、そういう気分じゃないから!怒ってるってわかってる?」
辰馬が動きを止めることはなかった。
それどころか、どんどんきわどい場所に移動してくる。
「やっ・・・辰馬・・・ダメだ・・・って・・・」
服の中に手が入ってきて・・・冷たい手の感触に背中までゾクゾクする。
抵抗はしているものの、辰馬の力に敵うはずもなく・・・
まして、されているコトがコトだけに、力がほとんど入らない状態だった。
辰馬の手は冷たいのに、触れられた箇所はどんどん熱くなっていく。
そして、何度となく降り注がれるキスに、恥ずかしさで顔が火照る。
「暖かいのう・・・」
やっと動きがとまった。
覆いかぶさられた体勢は変わっていなかったけど・・・
身体が動かない分、言葉で必死に抗議する。
「た・・・つま。ねぇ、ちゃんと話聞いてよ・・・。ほんとに怒ってるんだよ・・・?連絡とれないし・・・どれだけ・・・心配したと思ってんの・・・?」
「聞いちょるぜよ。すまんかったのう。でも、おまんが心配してくれるのが嬉しいぜよ!あはははは!」
「いや、笑い事じゃなくて!ほんとに・・・ほんとに・・・って、ちょっと!だからダメだって言ってんじゃん!離し・・・あっ・・・」
また動き出す辰馬の手。
さっきよりも・・・もっと・・・きわどく・・・
「やっ・・・!」
全身を指でなぞられ、身体がそれに応えるよう脈打つ。
辰馬の顔を見ると・・・
サングラスをはずし、いつもの太陽のような笑顔ではなく・・・悪魔みたいな笑顔でこっちを見た。
まるで、自分の反応を楽しんでいるかのように・・・
辰馬の行為はどんどんエスカレートし・・・
身体だけでなく言葉まで自由が奪われる。
それでもなお抵抗を続けた声は・・・吐息へと変わっていく。
「やめ・・・・・・た・・・つ・・・んんっ・・・」
銀ちゃんに借りてきた服もいつの間にか脱がされていて・・・
身に着けているのは下着と・・・お揃いで作ったネックレスだけ。
敏感な部分に手が伸び・・・
(もう・・・何も考えられない・・・)
と思ったとき、ピタッと動きが止まった。
「嫌がることしてすまんかったのう。もうしないきに・・・」
そう言った辰馬の顔は・・・とても反省しているようには見えない。
きっと・・・自分を焦らすための作戦・・・
わかってはいたのだけれど・・・
熱を帯びた身体は言うことを聞かず・・・
ねだるような目で辰馬を見つめる。
「どうかしたがか?」
悪魔・・・いや、鬼畜な笑みとはこういう笑顔のことを言うんだろう。
(やっぱり・・・・・・わかってるクセに・・・)
それでも、辰馬の思惑通りに動くことしか出来なくて・・・
「・・・このままじゃ・・・ヤダ・・・」
なんて、自分から求めてしまっていた。
コトが終わり・・・辰馬に抱きしめられたまま寝転んでいると、胸元に手が伸びてきた。
そして、自作のネックレスを見て・・・
「可愛いのう。船がモチーフにされてるのなんて、はじめた見たぜよ。」
と。
「あ・・・」
その時やっとプレゼントがあることを思い出した。
「辰馬、ちょっと目瞑ってて?」
「お?」
「いいから。ね・・・?」
辰馬が目を瞑ったのを確認し、プレゼントを持ってくる。
箱を開け・・・辰馬の首に手を回す。
「もういいよ。」
「何じゃ?何か首のところに・・・」
「クリスマスプレゼント。」
「・・・・・・」
「何がいいか迷ったから、自分で作っちゃった・・・辰馬、船好きだし・・・」
「・・・・・・」
「でね、粘土余ったから自分の分も作ってみたんだ。何かお揃いって恥ずかしいけど・・・。・・・あ、下手でごめんね?」
「・・・・・・」
「辰馬・・・?」
「・・・わしゃ、世界一の幸せモンぜよ。」
「え?」
「クリスマスにおまんと過ごせて・・・手作りのプレゼントまでもらって・・・ありがとうのう・・・」
さっきまでの鬼畜な顔はどこへやら・・・すっかりいつもの辰馬に・・・
なんて思ったのも束の間。
今度は、笑った目から涙が零れ落ちた。
「ちょ、辰馬!?どうしたの・・・?」
「ははは・・・嬉しくてついつい泣いてしまったき!・・・はは・・・あはははは!」
「ぷっ・・・ほら、もう泣かない!」
子供みたいなところが可愛くて笑ってしまったけど・・・
こういう風に、素直に気持ちを伝えてくれる辰馬が大好きだった。
「今日は・・・ほんとにすまんかったのう・・・」
「ううん。もういいよ。こうして一緒に過ごせたんだし。」
「言い訳みたいで言いたくなかったんじゃが・・・」
「ん?」
「昨日の夜に、急に今日取引がしたいって連絡が入ってのう・・・。クリスマスじゃき、みんなに言うのも気が引けて・・・1人で仕事しちょったら、こんな時間になってしまったぜよ・・・はは・・・わしは要領悪いのう。」
「そうだったんだ・・・。でも・・・辰馬は、いい頭だね!だからみんなついてきてくれるんだよ!」
「陸奥にはよく怒られちょるけどのう。」
「それは辰馬が真面目に仕事しないからでしょ!」
「金時にも悪い事したぜよ。」
「あ、殴ったことちゃんと謝っとかないとダメだよ?」
「おう。おまんが取られるかと思ったら、気が気じゃなかったき・・・」
「・・・・・・」
「それにしても・・・今日のおまんは可愛かった!」
「・・・え?何で?折角買った服とか着てるとこ見てなかったよね?」
「そういうことじゃのうて・・・子供みたいに泣きじゃくるおまんが可愛かったんじゃ!」
「なっ・・・!」
「いっつもわしの都合に合わせて・・・文句も言わんと付き合ってくれてるおまんには感謝しちょった。でも・・・わしの前では無理せんでいいきに。もっと甘えてくれていいきに。」
「辰馬・・・」
辰馬に左手を掴まれ、手元を見る。
すると・・・
どこから取り出したのか、持っていた指輪をはめてくれた。
「これ・・・」
「わしじゃ頼りないかもしれんが・・・これからもずっと一緒にいてくれんかのう・・・?」
思いがけないプレゼントで、言葉が出てこない。
でも、今の気持ちを伝えたくて・・・辰馬に抱きついた。
「おお!?乃亜・・・今日は随分大胆だのう!」
「え!?違っ・・・ちょ!」
クリスマスの夜は・・・まだまだ続きそうだ・・・
~END~