NPO JCPのブログ

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人類共通の遺産を護り、育み、次世代に伝えていくために組織されたNPO法人 文化財保存支援機構の活動をお伝えするブログです。

今年度もNPO法人文化財保存支援機構をよろしくお願い申し上げます

私たちは、皆様とともに
文化財を通した社会貢献の使命を果たすべく、
被災地支援の活動を行ってまいります。



HPは→http://www.jcpnpo.org/ / 2011年4月以前のブログは→http://blog.canpan.info/jcpnpo/

一年半ぶりの投稿です!

マスク着用も個人の判断となり、各地ではコロナ禍前のようにお祭りも開催され、明るいニュースが増えてきました。

 

そんな4月下旬、新しくなった陸前高田市立博物館へ行ってまいりました。

2011年の東日本大震災から11年、海と貝のミュージアムと一緒になって新設されました。

開館は2022年11月でしたが、タイミングがとれず念願かなっての訪問となりました。

 

あいにくの大雨のため外観の撮影は断念…。

受付を済ませ、展示室へ向かう途中まず目に入ったのは修復室です。

ガラス越しに安定化処理の様子を見学できます。

 

展示室へいざなうのは「せき坊」と「どんこ博士」。

扉の向こうに見えるのは、海を渡った≪実習船かもめ≫と、自衛隊によって瓦礫から救出された≪岩頭の女≫です。

 

博物館再生のシンボルである書置きから展示室がはじまります。

 

被災した博物館に残されていた書置き。誰が置いたのかも不明なままですが、レスキュー作業や博物館再生に向けて心の拠り所となったのは間違いないと思います。

 

先へ進むと地質学からみた陸前高田市の成り立ちや、豊かな三陸の海と山々が培った様々な生き物が展示されています。

また陸前高田市出身の博物学者 鳥羽源蔵と千葉蘭児の貴重なコレクションも魅力がいっぱいです。

今期の朝ドラ主人公 牧野富太郎との交流も展示されています。

地理はもとより植物・生物に疎いスタッフは、まるで小学生の自由研究のごとく見入ってしまいました。

自然ってすごい!

 

そしてつい最近、国の重要有形民俗文化財に指定された陸前高田の漁撈用具!

陸前高田市の漁撈用具は、JCPでも実測図作製で関わってきたため、感慨もひとしおです。

 

こうした民俗資料は地域産業の特色と密接に関わっているため、郷土史を紐解く重要な情報です。

「こんな風に採っていたんだ!」「こんな使い方、道具が…」など思わず声に出してしまいそうです。

ホヤにウニにタコ…わかりやすい!

 

「貝たちの部屋」では貴重な貝類の標本がずらり。美しく展示され見とれてしまいます。

天井には修復されたツチクジラの剥製≪つっちぃ≫が見守っています。

大きさに圧倒されますので、ぜひ博物館で現物をご覧ください。

 

「よみがえる博物館」では被災した文化財の救出と全国の機関の協力によって進められている安定化処理や修復の技術が紹介されています。

テン箱の中には発災時の状況が再現されているのでしょうか、胸にグッとくるものがあります。

JCPでは現在も継続して様々な分野で安定化処理や修復を進めています。

こうして展示をみると、11年の月日の中で本当にたくさんの機関が関り、再生へのバトンを渡してきたのだなと実感しました。

 

展示室内には図書コーナーや学びのコーナーもあり、とても居心地のいい博物館です。

周辺には道の駅や津波伝承館など観光スポットが様々です。

ぜひ現地へ足をお運びください!

 

最後は、せき坊…?で締めくくり。

 

 

陸前高田市立博物館

https://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/soshiki/kanrika/hakubutsukan/index.html

 

ひたすら作業についていった研修もいよいよ最終日。この日はニホンアブラギリの計測を行いました。

 

ニホンアブラギリは漆器や金属製品の研磨に使われる「駿河炭」の原木です。

軽くて柔らかいことから、曲面など砥石などで研磨しづらい箇所に適しています。

研磨炭の原木として使えるまでには樹齢およそ20年から30年が適しているといわれていますが、その収穫量は年々減少傾向にあります。こちらの団体さんでは関係機関と連携し、炭づくりの他、ニホンアブラキリの植樹を行いその成長を見守っています。

 

 

 


植樹したニホンアブラキリの生育場所は3日目・4日目の研修先だった窯から車で10分ほどの場所にあります。

2016年に植樹し、毎年11月中旬頃に計測を行い、成長を記録しているそうです。

計測は「胸高直径」[1]「根本の直径」「樹高」の3箇所行いました。研修生3人で手分けし計測。植樹したものにはピンクのリボンがついていて、それぞれ番号が割り当てられています。

これがけっこうな斜面にあり、目線より低いため見つけるのも一苦労。生い茂る草、倒れた木、朝露でぬかるんでいる地面でおぼつかない足取りのスタッフはしっかり記録をとることに注力しました。

 


[1] 胸高とは成人の旨の高さで約130㎝の位置を指す。

 

順調に育った木の樹高はおおよそ180㎝から2mほどで、根本の直径は3㎝程度でした。

もっと大木をイメージしていたため、想像より華奢な大きさに驚きつつも、炭になるまでにはまだまだ時間がかかるのか、と思いました。記録用紙の備考欄には昨年までの木の状態に

 

もっと大木をイメージしていたため、想像より華奢な大きさに驚きつつも、炭になるまでにはまだまだ時間がかかるのか、と思いました。

記録用紙の備考欄には昨年までの木の状態に関して記載があり、よく読んでみると「確認できず」や「枯れ」などの記述がチラホラ。伺ってみると植樹した周辺は台風の影響で倒木が発生し、多量の雨水でせっかくの苗が流されてしまった年があったとのこと。その他は獣害(鹿など)によって食べられてしまうケースも多く、傷がついたことで腐ってしまうこともあるようで、「順調に育った木」というのが過過酷な状況を乗り越えて育ったことがよく分かりました。

上の写真はニホンアブラキリの種の殻。

悲しいことに根付く前に鹿かなにかに食べられてしまったようです。

ここに行くまでは、木は植えたら育つと勝手な思い込みがあったので、こんなにも周りの環境に左右されるとは想像しませんでした。木が育つには年月も必要です。原木が枯渇しつつある状況の中で炭焼きの生産者も減少している側面もあり、一方を解決しても、また一方で他の課題が顔をだす現状を垣間見ることができました。

植えれば解決、というわけではないのですね。

 

さて、5日間に及ぶ研修も無事に終了しました。

文化財をとりまく材料や道具は他にも様々なものが消滅の危機に瀕しています。

研修を受けた炭・炭焼きもその内の一つです。原材料を「育てる」だけでは問題の解決にはつながらず、必ず「使い手」と「担い手」が必要となります。

いずれも短期間で成しえることは困難です。こちらの団体さんのように技術や材料の現状を危惧し、並行して活動を続けることが日本の文化を支える柱になっていくと思いました。

JCPでもセミナーなどで微力ながら人材の育成を行っていますが、受講生の方々はそれぞれのバックボーンや経験年数の幅も広く、常に問題をリサーチし重要な情報をキャッチしようとされている方が数多くいらっしゃいます。

この記事が皆様の目にとまり興味の一端となることを期待しつつ、様々な情報を発信・啓発していきたいと思います。

 

途中に生えていたススキに霜が…とてもきれいでした。

 

完!!

 

朝起きて一番に感じたのは全身を走る筋肉痛…

特に薪割りで普段使わない脇の下の筋や手の平の筋肉、背中の筋を酷使したようです…

これは普段の運動不足は関係なしだよね!みんな一緒だよね!と謎の呪文をかけながら窯出しへ向かいます。

到着するとまだ煙突からは煙がのぼっていました。

前日から疑問に感じていたのは、窯の入口を蓋してから、炭になったと判断するポイントは何かということです。伺ったところ煙突で計測した温度を参考にしながら、煙の色・においで判断するそうです。

例えば「約100℃~200℃で白煙」「約300℃~330度で青色」と温度によって煙の色に差異があり、更に煙の量を見極めて蓋を開けるタイミングを判断するようです。

前日に着火した窯も目に沁みて息がしづらいほどでしたが、それを皆さん「辛い!辛い!」と言っていたのが印象的でした。まさに辛い!がピッタリくるほど喉が痛かったです。窯を開けるタイミングは、点火した時間や状況によって前後するため、朝早くスタンバイする日もあるようです。この日も近くの方が煙の色を確認して見守ります。

  

頃合いがよくなったところでいよいよ窯オープン!粘土をパカっと開けると…

火が見えてきました!窯の口から炎がでているのがわかるでしょうか。

ここから熱々の炭を取り出していきます!!

まずはお手本を…ちょうど窯の前に釣輪があり、そこに道具をひっかけ重心を定めます。

昨日の練習を思い出しながら…縦に重なった炭を上から順にこの道具にひっかけ、倒して崩さないように、優しくスピーディーに行います。実際に持つと分かるですが、とにかくこの道具、長くて重いのです。

 

  

つづいて窯から出した炭に灰をかけ冷却します。これが黒炭と大きく異なる工程です。

しかし燃え盛る窯からの熱気がすごい。この日は火が爆ぜたりするので木綿の服でといわれていました。よく考えると刀鍛冶さんが作務衣など木綿の服なのは意味があったのですね。

 

  

さぁ見ているだけではなくレッツ・トライ。

このどこに力を入れていいかわからないスタッフの姿勢!

  

倒したら商品にならないかも…とか考えすぎてガチガチに力んでおります。

 

そしてこの道具、窯の中で熱せられて金属の部分が柔らかくなってしまうのです。

その場合は一度窯から出し外気で冷やしながら矯正し、次の道具を使う手順になります。

炭は崩れすぎてしまっても商品にはならないので、掻き出せばいいという具合でもありません。

保存会スタッフの皆さんと研修生とで交代で作業を続けました。

 

   

このようにどんどん炭を出しては灰をかけ、出しては灰をかける手順を繰り返し、窯の中身を空にします。

 

窯出の次の工程は炭が冷えてからでなければ作業できないので、しばし休憩。

 

難しいなと感じたのは窯から出した時点で良い炭か悪い炭かの判別がつかないところでした。

大きさや形が良くても、実際に研磨用として使えるかは試してみないとわからないとのこと。

品質に関わる要因として木の乾燥具合や窯の温度、火の循環の仕方などがあります。

これら一連の工程を、試行錯誤を繰り返しながら生産されていると伺いました。

恐らく原木の育った環境など自分たちで管理しきれない部分が、均一な製品を生産し続ける難しさを含んでいるのではないか、と思います。このように国内で一定の品質と技術を保持しながら生産を続けていくには、原材料である木材が枯渇していることと、品質がいい炭を作るには高度な技術が求められるという現状をまずは知ってもらうことが重要と思いました。

 

さて、炭が冷えた次は選定の作業です。

  
灰の山に埋もれた炭を取り出しますが、うっかり冷える前に手を入れるとやけどします。ここでも「エブリ」という道具で丁寧に出していきます。

左の写真のように窯から出した炭を保存会スタッフの方により1回目の選定を行います。

右の写真は選定が終わった山です。左は一次審査を通過した山で、右の山は再度再検品となります。

 

 左の写真は一次審査を通過した炭です。

横割れもなく均一に見えますね。縦に穴が入っている部分は切り落とし、試しに研磨をして二次・三次と審査を通ったものが晴れて研磨用の炭として出荷できるそうです。

 

  

左の写真は空洞が多くスカスカしているのでNG。右は一見よさそうですが、横方向にヒビのように見える傷がわかるでしょうか。これは研磨している最中にモノを傷つけてしまう可能性があるのでこちらも審査は通らず…

このような理由から焼きあがった状態だけでは判断できないそうです。保存会スタッフさんの厳しい審査には理由があります。使う人(金属や漆の方々)やモノに良い仕事をしてもらいたいという熱い思いが込められているのです。

 

そんなこんなで黒炭からスタートした木炭生産現場での研修は終了!

作業についていくだけで必死な三日間でしたが、想像より過酷な作業で、これほどたくさんの人の手と時間をかけて作られていたとは知りませんでした。

スタッフのお茶の先生が「炭がどんどん値上がりしていく…」と嘆いていましたが、研修することでその理由に納得しました。特に研磨炭の場合は原木全てが炭になるわけではありません。先に述べたように木材自体が枯渇していること、炭焼き生産者さんの減少などなど…現状を「知らない」ことが問題で、そこに「知る」ことをプラスすることで生産者と使用者で共通認識を持つことができます。このことで最初の垣根は超えられるのではないかなと思いました。

 

まるで研修終了のような締め様ですが、次回5日目が最終日です!!

 

 

 

3日目は岡山県鏡野町にある白炭の窯へやってきました。

前日の黒炭の作業で身体はバキバキ。普段デスクワークしかしていないスタッフ、研修後半の作業についていけるか少々不安になってきました。

この日から2日間かけて白炭を研修します。

 

ホウの木

 

「藤元窯」と名付けられたこちらの窯は、保存会さんと笑楽窯さんと共同で白炭練習用の窯として作られたそうです。(笑楽窯さんについては後述)

炭材は朴(ホウ)の木で研磨用の炭になります。

昨日同様に窯詰めからスタートですが…窯の口が小さく、スタッフは入れなかったので外から炭材を受け渡す作業に没頭。

詰め終わったところで着火!こちらも最終的に入口をふさぎます。

 

この藤元窯の隣には笑楽窯という地元の方々でつくった炭焼き窯があります。

 

ちょうど予熱で温まっている窯の中に入って、窯を作った時のお話しを直接伺いました。

窯の内部を見上げると製作時に被せた木や、成形したときの跡などが見えました。

百聞は一見に如かずで、聞くと見るでは理解度が違います。窯内を見た後は、窯詰めが完了したところで着火。午前中の作業はここまでです。

 

お昼をみんなで食べながら、近くの山で採れたビッグしいたけやヒラタケも炙って美味しくいただきました!

  

 

午後からは翌日の窯出しに備え、燃え盛る窯の中から炭を取り出す道具で、練習をします。

 

窯から炭を取り出す専門の道具があります。一見、シンプルなこの道具たち。

  

が、しかし!!熱くて窯に近づけない分、柄がとても長いのです!長い故に重くてコントロールをとるのが難しく、先端部分を引掛けたくても上手く動かない…。

今日初めて触った素人に上手くできる訳ありませんね。練習も程よくなってきたところで、次は薪割り。

振り返ると介助のない薪割りは人生初でした。

絵に描いたこのへっぴり腰!!翌日の筋肉痛などまだ知る由もないスタッフです。

 

その後は、作業の合間に近くにある「白賀渓谷」というところに連れて行っていただきました。

残念ながら紅葉シーズンが終わった後でしたが、空気が澄んでいて、美しい渓流が続く渓谷でした。

春と秋には桜と紅葉を観ににぎわうようです!オンシーズンにもう一度訪問したいです。

 


さてさて話しは変わり、旅(研修)の楽しみは食事でもあり…。

窯場での食事は地元の方々お手製のお弁当をいただきました。

自然に囲まれながら、皆で頂くお昼は普段と違い更に美味しい食事でした。

夜は宿泊先の山荘で、四川料理…?!

こちらのオーナーさんの奥様が中国の方で、まさかの本格四川料理をいただくことができました。レストランとしても営業しているようです。

  

この水餃子が絶品でした!山椒の効いた麻婆茄子も、全て美味しくいただきました。

しかし辛くない料理でもそこそこ辛かったので、これ以上はちょっと勇気が出ないスタッフでした。

 

次回はいよいよ燃え盛る窯から炭を出します!!

 

 

二日目は岡山県美咲町の松炭製作現場へ。

都内では見かけない朝靄に煙る道を進み、山間へと向かっていきます。

 

ここで前回の記事にあった製炭方法について説明します。

2つの製炭方法があり、それぞれ黒炭(くろずみ)、白炭(しろずみ)と呼ばれます。

木材を炭化させるという点で一緒ですが、大きな違いとして消化の方法が挙げられます。

黒炭は窯の中で密閉して焼き上げ、自然と冷却するまで待つのに対し、白炭は燃え盛る窯の中から真っ赤な炭を取り出し、灰をかけて一気に冷却させます。

黒炭は柔らかく、着火しやすいためBBQではおなじみの炭です。刀鍛冶さんはこちらの製法で作られた炭を使い、その中でも瞬間的に火力が高く(強く)なる「松炭」」を使われます。

 

一方、白炭は固く叩くとキンキン!と金属音がします。着火すると燃焼時間が長いのが特徴で、焼き鳥屋さんなどでおなじみの備長炭は白炭に分類されます。

 

初日の炭切は黒炭をカットし、真鍮プレートの研磨には白炭を使いましたね。

 

今日は焼成後の黒炭を窯から出すところからスタートです。「真っ黒になるので、シャカシャカした素材の服でタオルか帽子があると良いですよ」と案内があったので完全に汚れても良い服でスタンバイ。既に冷却が終わった窯から炭を出します。

  

炭がいっぱい立ってる!ほのかに温い窯の中。ここからどんどん炭を出していきます。

 

   

担架のような道具に窯から出した炭を乗せ、どんどん運びだしてテントの中で積み上げていくチーム。

 

   

テントの中では仕分け作業と、出荷用に炭を切りそろえる作業を並行して行います。

出荷用サイズに切り揃えられる台を使って、右の写真のようにどんどん切り揃えていきます。

切り揃えた炭。キレイ! こちらは日本刀製作や金属の焼き入れに使用され、

更に細かくなった炭(粉炭)は近くの種苗農家さんへいくとのこと。捨てるところはなにもない…

 

袋詰めが終わったらキレイに片付け、午前はここまで。みんなでお昼をいただきます。

色々な地元の方々が手伝っていましたが、お話しを伺うと県外から移住してきた方も多かったことに驚きました。中には都会の生活に疲れたという方も。確かにあの通勤ラッシュの電車はストレスでしかない…

さて、午後からは窯詰めの作業です。こちらではアカマツの原木を薪割りして、1辺9㎝程度の太さに揃えます。この割った原木を「炭材」といいます。炭の焼き上がりにも影響があるので、均一に割る技術が重要です。

   

原木と薪割り機

 

続いて窯の中に入って炭材を詰めていきます。重要なのは、炭材を隙間なく立てていくこと。

隙間があると空気が入り完全に燃焼してしまい、灰になって炭の収量が減ってしまいます。

ななめにならないように、皮目を気にしながら頭を使って立てていきます。

  

立てた炭材の上には短い材を詰め、窯の入口までひたすら詰める…

生木は重いのでこの詰める作業でもけっこう体力を使います。

  

詰め終わったら着火剤になる雑木と炭を入れ、レンガとブロックで封をしていきます。

 

大きな隙間ができないように細かいレンガも入れ、最終的に粘土で封!

レンガとレンガの継ぎ目や隙間には手で付けずにベチっ!と粘土を投げつけます。その方がしっかりと隙間に入り、手に残る粘土も少なくて済むそうです。

 

そしていよいよ着火!火が付いたら扇風機で風を送りこみ、燃焼を進めます。

窯の奥の方には煙突があり白い煙がモクモクと出ていきます。

この煙の色の変化や、においの差で炭化の進行具合がわかるそうです。

窯の中の排気口の位置も燃焼と炭化の鍵となるほど重要で、窯詰めの際に排気口の部分を塞がないように注意が必要です。

着火して、午前中のように窯から出せるまでなんと約14日!着火後、炭材が完全に炭になるのに約4日間温度を上げ、その後冷却までが約10日間。

その後ようやく、午前中に行った窯出しの作業になります。その時の気候や周辺の環境によっても左右されるため、一定の品質を保った炭を焼くことの難しさたるや…昨今の日本の気候変動は少なからず影響を与えているのではないでしょうか。

 

伝統工芸木炭生産技術保存会さんでは、原木であるアカマツを購入し炭焼きを行っているそうです。もちろん窯に詰めた炭材が全て製品になることはなく、天候による影響も鑑みると、炭そのものの値段が安くないのは当然のことと思いました。

 

原木のアカマツそのものも、松くい虫による松枯れの問題もあり、炭焼き技術以前の課題が多いことは確かです。

 

文化や伝統を守るといっても実際は多種多様な要因が複雑に絡み、一個解決しても次の課題が現れるのかな…と、考え込む2日目でした。