新聞特殊指定問題に関して、論点のすり替えが行われている顕著な事例です。

NIKKEI NETの3月24日付の記事です。


新聞特殊指定見直し「宅配制度維持を」・官房長官

 安倍晋三官房長官は24日午前の参院予算委員会で、同一価格での新聞販売を定め、宅配制度を支えている「特殊指定」の見直しを公正取引委員会が検討している問題について「宅配制度は今後とも維持されることが望ましい」と述べ、公取委に慎重な検討を求めた。自民党の末松信介氏への答弁。

 安倍氏は宅配制度について「文化振興、国民の知る権利の観点からも重要。東京でも離島でも世の中で何が起き、どんな論評があるかを知ることができる社会を維持していくのは当然だ」と指摘。公取委へ「国民の利益を確保、向上していく観点から検討してもらいたい」と要請した。

 一方、参考人出席した公取委の竹島一彦委員長は見直しの狙いについて「公正な競争の正当な手段である価格競争を使うと独占禁止法違反になるのは法的論拠がない。定価販売が必要ならば別の手段でやるしかない」と強調。「宅配制度は消費者ニーズがあるから成立しており、特殊指定を見直しても崩壊はしない」と語った。 (12:01)


http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060324AT3S2400824032006.html



この見出しの書き方だと、読者はあたかも官房長官が新聞特殊指定見直しに反対しているかのように誤解しかねません。しかしよく読むと、官房長官は「新聞の宅配制度は維持された方が良い」と思っているのであって、特殊指定見直し是非については述べていないようであることがわかります。実に巧妙に論点のすり替えが行われているのがお分かりいただけると思います。


「新聞は宅配された方が良いと思いますか?」と聞かれれば、ほとんどの人が「はい」と答えますよね。新聞各社が特殊指定と宅配制度を結びつけた論理展開をしている真意がここにあります。


特殊指定が廃止されれば、宅配が出来なくなる新聞社が出てくるかもしれません。しかしながら、値段は安いけどコンビニに買いに行かなければならない新聞を選ぶのか、値段は高いけど宅配してくれる新聞を選ぶのか、それは消費者の選択に委ねられる問題です。通常の企業活動と同じ様に、新聞社は消費者に選ばれるための努力をし、消費者は自分のニーズにあった新聞を選ぶというのが、あるべき姿であるのは言うまでもありません。