悲劇 | インスタントジョンソン じゃいオフィシャルブログ『マルいアタマをぐちゃぐちゃにする』powered by Ameba

悲劇

僕の友達が二度と歩けない体になった。



車に轢かれ、生存は不可能とまで言われたが、



奇跡的に一命は取り留めた。



まだ人生の半分もいっていない、若い可愛い女性だ。


僕自身が友人の事故の現実を受け入れられないのだから、



本人はもっとだろう。



「死にたい」というメールが来た。



僕は「嫌だ!」としか返せなかった。



彼女を笑わせたいが、今はそんな自信はない。



「じゃいが明日から歩けなくなったらどうする?」



彼女からの質問に



「ネタでも書くかな」



と答えた。



本心だろうか?



いや、軽はずみな答えだ。


体験してないから、



自分の身に降り懸かってないから、



100%の答えは出来るはずはない。



でも、なるべくリアルに考えてみよう!



100%じゃないにしろ、



出来る限りリアルに。





昨日、僕は車に跳ねられた。



奇跡的に一命は取り留めたものの、一生歩けない体になってしまった。



車椅子生活を余儀なくされる。



その事実を手術後に親に聞かされたとき、



目の前が真っ白になった。


思考が再開するまでにどれくらいの時間を要しただろう?



この身体になってみて、今までの生活を考えてみた。


恐ろしいほど何も出来ないと思った。



車椅子に乗って舞台に上がれるのか?



コント番組に出れるのか?


恐らく、今までのネタは出来ないだろう。



第一、車椅子の男のやっていることを笑ってくれるのか?



同情は笑いにならない。



憐れみは笑いにならない。


考えれば、考えるほど、自分を轢いた男への憎しみが膨れ上がる。



許せない!



お前も同じ目に合わせてやろうか!



そんな邪心が生まれる。



前向きに生きよう!



ポジティブに考えよう!



そう自分に言い聞かせても、どっかで卑屈が顔を出してくる。



不思議と死のうという選択肢はなかった。




僕はインスタントジョンソンを辞めた。



二人は引き留めてくれたが、



さすがに足を引っ張るだろう。



座付き作家?



ははっ、確かに合ってるかもね。



ただ、僕は生で笑い声が聞きたいのだ!



一人で芸人を続けた。



みんなの励ましの声は僕に勇気をくれたが、こんなんじゃウケない。



応援してくれても、ウケない。



舞台に立っても、客席は重い空気が流れている。



可哀相だと思われてるだけだ。



芸人を辞めようかと思った。



一人の先輩に相談をしてみた。



その先輩はあっけらかんと


「ウケるわけないじゃん!」



「やっぱり、車椅子じゃ・・・」



「ちげーよ!お前が車椅子を特別だと思ってるからだよ」



「?」



「車椅子なんか、ハゲとかチビと変わらねぇ!って言ってんだよ!」



「・・・・」



「ハンデをハンデと思ってる奴のことなんか誰も笑ってくれねぇよ!」



涙が出た。



考えてみれば、足が使えないだけじゃん!



脳みそも正常だし、声も出る。



目も見えるし、耳も聞こえる。



お笑いに何の支障もない!


今思えば、俺のこと轢いた奴に同情する。



他人の人生をめちゃくちゃにしたという罪悪感を背負って生きていかないといけないのだ。



慰謝料だってハンパない。


車椅子芸人として、俺は吹っ切れた。



「苦手なスポーツはサッカーです」



と言うと、客が笑った。



「こないだ、お年寄りに席を譲りました!」



と言うと、客が笑った。



笑ってくれたんじゃない。


笑わせたんだ。



車椅子芸人として認知されるようになった。



そりゃあそうだ、他にいないんだから。



アンビリーバボーなどドキュメント番組の依頼もあったが、断った。



泣かせるつもりはない。



車椅子の方や、障害者の方から



「勇気付けられました」



「応援してます」



「僕らの代表です」



などの手紙が事務所に送られてくる。



いやいや、こんなのハンデじゃないから。



そりゃあたまに、足が使えたらなぁって思うこともある。



でも、足が使えてたら今の自分はいないとも思う。



神様がいるのか?いないのか?は分からないが、



試練なのか?プレゼントなのか?分からないが、



全てを受け入れて前に進まなきゃいけないのだ。



車椅子の人に限らず、全ての人がそうなんだ。





・・・・・





これも想像でしかない。



都合のいい想像かもしれない。



でも悲劇なんて劇なんだから



自分でハッピーエンドに



コメディーに



シナリオを変えちゃえばいいのさ。