昨日紹介したBoardwalk Empireの時代、お酒を飲む事はアメリカで違法だったし、逆に今のアメリカではマリファナ(大麻)が医療目的という条件付きで徐々に合法化される傾向が続いています。
そんなに昔じゃない日本でも、一般家庭の庭に芥子や麻が栽培されていました。
このように『薬物』の違法と合法のラインはきわどく、時代や国などによって随分と変わっていきます。

昨日のブログで俺がNo.1に選んだBreaking Bad。
このTVシリーズは、日本で俗にいう『しゃぶ』アメリカでは『Meth(メス)』とか『Crystal』とか呼ばれる『覚せい剤』に焦点があてられています。



80年代にコカインが流行しつつあるのを先取りしてScarfaceが上映されたのと同様に、Breaking Badも2000年代後半からアメリカで巻き起こる何度目かのMethブームを先取りするかのように2008年からシリーズが始まりました。
BEPのFergieなどセレブのMeth中毒のニュースも相まって、今Methは全米で注目され一大問題となっています。

覚せい剤は日本にとって縁が深く、覚せい剤の原料を抽出、合成、結晶化に成功させたのは全て日本人薬学者
20世紀前半~半ば、覚せい剤は近所の薬局で手軽に手に入る『滋養強壮剤』のように扱われていました。
世界が戦争に荒れ狂う中、兵隊は覚せい剤を常用し神経を覚醒させ恐怖感を鈍らせ士気を高めたといいます。
日本ももちろん例外ではなく、『ヒロポン』という商品名で広く流通していました。


法整備され規制対象になった後も、覚せい剤は市販の鼻水止め、風邪薬、アレルギー薬などから調合できるので、中々流通への歯止めがきかなかったらしいですね。
とくに80年代~のコカイン全盛期のあと、パブロエスカバルなど中南米の麻薬組織を牛耳っていた人達が次々に摘発されると、カーテルとアメリカ間で麻薬の輸送のリスクが高まり、アメリカ国内で簡単に材料が手に入り、同じくらいの中毒性がある覚せい剤にビジネスが移行していったんだと思います。

Hip Hopが暴力や犯罪を美化していると批判される様に、Breaking Badもドラッグをグラマライズ化し、Methの流行に油をそそいでいるといった批判をよく受けています。
そもそも、映画や音楽、TVなどの『フィクション』を『フィクション』として楽しめない大人にはうんざりですが、
Breaking Badは観てもらえばわかるけど、Methの恐ろしさを伝えようとしてます。
Season 2のエピソードPeekabooは必見。

Breaking Badは今のアメリカの世情を鋭く切った、
本当に素晴らしい作品です。


話、ちょっとそれて最後に音楽と薬の関係。

80年代には、GMF & Melle MelのWhite Lineの大ヒットでコカイン、
90年代には、Dr.Dreの不屈の名作The Cronicに代表されるようにマリファナ、
00年代には、Lil Wayneなどサウスのラッパーが流行らせたCough Syrup、
っといったよーに、時代時代に代表されるドラッグがあります。

去年くらいからHip HopのリリックによくでてくるMollyはMDMAの事ですが、
コカインやMethが混ざっている純度が高いものが流通していて、
更に中毒性が強いらしいです。
Mollyは女性の名前なので、Mary Janeのように擬人化されてリリックに登場することが多いです。
Kanye West "Mercy"
Nicki Minaj(2Chainz verse) "Beez In The Trap"  
2 Chainz / Tyga / Trinidad James他 "Molly"

MDMAはもともと80年代~のEDM全盛期にエクスタシーとして流通してました。
その辺の詳しい話は映画Limelightとかを参照↓
http://ameblo.jp/japanese-dee/entry-11019215738.html
音楽とドラックを関連づけて話すのは好きじゃないですけど、
エレクトロ/Trapなどの音楽と共にMollyも一緒に流行ってきたのは偶然じゃないでしょう。
(去年、MiamiのUltraでのMadonna『Mollyに会った?』発言、問題になりました。)

以上。

あくまでBreaking BadとHip Hopのリリックを理解するために
ちょっと知っておきたい薬物に関する知識でした~。