2次審査講評 | JAMスタッフのブログ

JAMスタッフのブログ

日本最大級のアカペラストリートイベント、
Japan A cappella Movement(通称JAM)のスタッフによるブログです。
公式HP: http://jam-web.jp/jam/
Twitter: @JAM_Acappella


2次審査ゲスト審査員の幾見雅博様、引地洋輔様より総評をいただいております。
この場にてご紹介させていただきます。
ご一読ください!

幾見雅博様より
(ギタリスト、音楽プロデューサー)
http://homepage3.nifty.com/ikumi-masahiro/index.html

JAM2014 2次審査をおわって。

私が以前から言い続けてきた、オリジナリティーを感じさせるバンドが少ないと感じました。
例えばジャズ好きなグループが出てきてトライトーンのコピーを3曲やったり、VOX 1の楽曲を3曲フルコピーだったり、
ペンタトニックスのフルコピー3曲だったり、、、、、、、
うまければ良い、というのではなく、自分たちがやるとこうなる、とかこんな世界観の音楽がしたい、とか言う主張が見えてこないバンドが
多い。全く借り物のサウンドで果たして満足できるのか???
ちなみに私はギタリストでもあるが、私しかできない世界を生み出すために人生の大半を使ってきた。でもまだ完成できずに、模索している。

プロとアマチュアの差なのかもしれないが、お客さんを喜ばせる、という意識が薄い。
それは、例えばマイクを通して大きな音でピッチパイプを吹いたり、無駄に意味なく大きな声でカウントしたり、、、、、
ステージに出てくる時からエンターテイメントは始まっているのに、緊張して凍り付いたような雰囲気ではじまる。
そんなんじゃあお客さんが心から楽しめる訳が無い。
大笑いしながら手を振って出てくるような、こなれたグループは皆無だった。自分たちの緊張が聴衆に伝染してしまっている。
こんな事はすぐに直せる。短時間に効果的にパワーアップできるのだ。
確かに一寸前に比べたら全体が格別の進歩はしている。ピッチは良くなり、リズムも良くなってきた。


先日、全日本対ブラジルの試合を見ていて痛感した事がある。
ネイマール1人に4得点された。
考えると強いチームには、とてつもないスターが必ずいるのである。
ロナウド、メッシ、思いつくでしょう。
今の日本のアカペラグループはドングリの背比べであったり、気を使ってのリードの回し合いだったりばっかりだ。
やはり強力なリードがいないバンドは、そこそこの評価で終わってしまう。
周りを驚かせるくらい凄いリードヴォーカルを育てる事が勝利につながる。
というか、凄いリードがいないと勝ち残れない。
ハモるのが楽しい程度では、日本のアカペラはおいていかれる。

私が教えると、急に20-30%うまくなって聞こえる。
ちょっとした楽曲の解釈法を変えると急にうまくなって聞こえるのだ。
もっと自分たちで曲を研究し、強弱を研究する事も大事な解釈と言える。
そしてそれよりもまして、個人技を身につけうまくなる事。
個人技がうまくなれば、全員でのコーラス練など、あっという間に完成する。

そして第2、第3のネイマールを目指してください。
期待しております。         



引地洋輔様より

RAG FAIRオフィシャルサイトhttp://www.ragfair.jp/

Twitterアカウント @yosuke_hikichi

出演者の皆さん、スタッフの皆さんお疲れ様でした。

 

どのバンドも演奏レベルが高く、平均値は十分に高かったと思います。

衣装やフォーメーションなど、見せ方の工夫もされていて感心しました。

 

だからこそ審査する側には欲が出るもので、他との「差」を見せてくれるバンドの登場を期待したくなります。それは「圧倒的な演奏クオリティ」でもよし、「とにかく楽しくて派手」でもよし、「思わず泣ける」でもよし。

衣装や選曲からカラーが分かるバンドはいくつもありましたが、それをもっともっと突き詰めていって欲しいです。

今回は聴くことができませんでしたが、バンドカラーを表現するのに一番分かりやすいのはオリジナル曲を歌うことかもしれません。

次回、オリジナル曲で出演するバンドが登場することを強く望みます。

 

バンドの方針と相容れない部分があるかもしれませんが、以下に全体を通して気がついた点をいくつか述べさせていただきます。

 

1 トータルサウンド

 

ビートボックス、ボイスパーカッションの進化には驚かされるばかりです。

初めて聴く人の興味をひく上で大きな武器になることでしょう。

新しいサウンドが生まれていることは、とても素晴らしい!

 

しかしながら、その武器が「全体サウンドの中でどういう効果を与えるか」はもう少し考える余地がありそうです。ビートボックスに連れてベースにも言えることですが、低域のブースト感が強すぎて、元来アカペラが持っている和声の魅力が失われるのはもったいない。

5人、6人の声が塊になって響きを生んだときの感覚を大切にしてほしいと思いました。

もちろんすべて悪いというわけではなく、うまく使いこなすことが必要だということです。

それによって全体のサウンドにさらに幅を持たせることもできるでしょう。

 

 

2 アレンジ

 

同時に鳴らせる音数が決まっている、という点でアカペラのライブアレンジには限界があります。

その限界の中で考えるから面白い。

楽曲の持つストーリーを表現する上で、もっと引き算の発想をうまく取り入れて欲しいと感じました。

オールユニゾン、休符など、あえてハモらない部分を作ることで、曲の中でピークを生み出す手法もぜひ考えてみてください。自然と音量によるメリハリもつけられます。

 

また、曲のラストに顕著でしたが、ハーモニーを複雑化しないほうが良い場合もあります。

気持ちはよ~く分かりますが、今一度その楽曲にあった終わり方を考えてみてください。

ラストが違うだけで印象はガラッと変わります。

 

 

3 客席との距離感

 

これは少々難易度の高いことになりますが……。

 

今回のテーマ「結」から、客席とのコールアンドレスポンスや手拍子等を取り入れたバンドも多かったです。その意識はとても素晴らしい!

 

考えていただきたいのはそこへ至るまでの流れです。

 

いきなりお客さんに何かを要求するには、相応のエネルギーが必要になります。

無理矢理にならないようにするにはどうすればよいか。もしくは力で無理矢理持っていくのか。

そのエネルギーの源になるのは音楽であり、人だと思います。

 

今回、演奏そのもので自然と流れを作れていたバンドや、

その人の個性、人間力で客席をリードしていたバンドは高く評価しました。

 

 

4 ステージ構成、他

 

ここでは主に演奏以外のことについてです。

 

総じて衣装やフォーメーションに対する意識が高いので、

せっかくですから、それ以外のことにもぜひ気を配ってみてください。

参考になるかわかりませんが、私がその場でメモしたことを記しておきます。

「これをしたほうがよい!」ということではなく、意識、視点の話です。

 

 

○登場S.E.の意味は?バンドカラーを伝えるもの?

 S.E.を利用してピッチパイプを吹かずに一曲目を始めれば、どんな効果がある?

 

○曲も衣装もコンセプトがはっきりしているバンドは、曲の合間もそれを貫き通すとどうなる?

 

○コピー演奏に、自分たちならではのオリジナリティを足してみると?

 

○曲の中でソロ、コーラスの見せ場、その時お客さんの目線はどこに?  

 

○3曲あるならどういうメリハリ、流れを作る?リードチェンジ?曲調?アレンジ?

 3曲ともひとつの色で徹底するなら、どう飽きさせない?演奏力?歌詞の伝わり?高いテンション?

 

 

こういう要素が、果たしてJAMというステージに求められる要素か?

と問われれば、違っているのかもしれません。

しかし、二次審査を観て聴いて、

 

「今の演奏、今の皆さんのキャラクターそのままで、もっとお客さんに強い印象を残せる!」

 

と感じましたので、何かヒントになればと思い、書かせていただきました。

 

さて、長くなりましたが総評は以上です。

審査を通過したバンドの皆さん、おめでとうございます。

二次審査以上に良いパフォーマンスを期待しています!

 

最後になりますが、

「先輩方の作り上げたものを引き継ぎながら、新しいカタチのイベントを作ろう」

と第1回JAMの運営に携わり、出演者でもあった私にとって、

16回目を迎える今回の審査に関われたことはとても嬉しいことでした。

ここまで発展させてくださった歴代の出演者の皆様、スタッフの皆様にも感謝申し上げます。