１９５６（昭和３１）年制作 原作芝木好子「州崎の女」から
溝口健二監督 撮影宮川一夫 モノクロ
キャスト
ゆめ子：三益愛子 より江：町田博子
ハナエ：小暮実千代 やすみ：若尾文子
ミッキー：京 マチ子 しづ子：川上康子
進藤英太郎 沢村貞子 浦辺粂子 十朱久雄
菅原謙二 加東大介 多々良純
この映画はいつか観たいと思っていた映画
でしたが、内容的にリバイバル上映などは
少なかったように思いますが・・・・
舞台は浅草吉原の一角にある「夢の里」
と言う売春宿で、働く女達が主役の一種
群像劇のようでした。
田舎に預けてある一人息子といつか一緒に
暮らすのが夢のかなり年増のゆめ子
普通の主婦に憧れ、所帯道具をひそかに
あつめているより江
病気の夫と乳児を抱えて一家を支える
ハナエ、客を次々にだまし、せっせと
お金を貯めるやすみ、神戸の資産家の
娘でありながら、父親の女遊びに反抗
して、グレて、夢の里に堕ちてきたミッキー、
九州の炭鉱町から、上京して、下働きとして、
雇われている、しづ子・・・
この女達の雇い主が、進藤英太郎と
沢村貞子さんなんですが、もう、実生活も
そうではないかと思うくらい、夢の里の
主に収まり、溝口監督の意向だと
思いますが、物語は、「売春防止法」が
議会で論議されて、通過すれば、女達の
借金は、ゼロになると、ちょっとインテリの
ハナエが、皆にヒソヒソ教えていると、
ラジオが、この議案が流れたと放送すると
勝ち誇ったように「俺達は社会事業してるんだ！」と
大声で、怒鳴り、物語の進行と平行して
「売春防止法案」が、今国会で、どのような
状況かが分かるようになって、溝口監督は、
売春はダメだけれども、そうせざるを得ない
女達にはやさしく、ここは、ジレンマだったのかな
とも、思いました、
ゆめ子は、息子が働いている工場に会いに行き
息子から、縁を切るから、もう会いに来ないでくれと
言われて、精神に異常をきたし、やすみに貢いで、
夜逃げした男や、やすみと結婚できると思って
会社の金を使い込み、結婚なんかしないと言われて
思わず、やすみの首を絞めてしまう男
神戸から、妹が結婚するからと迎えに来た
父親に向かって「ショートで、１５００円でどう？」と
誘う京マチ子さん！圧倒されました、したたかに
生きて行く女もいれば、結婚してやると言われて
婚家に行ったら、牛馬以下の扱い受けて、
夢の里に逃げ帰ってきたより江
夢子が、精神病院に入院したために
下働きのしづ子が急遽店に出ることに
なってしまったのです、このシーンは、
ほんとに哀しかったです、
けばけばしい化粧に、人目を惹くように
真っ赤な口紅、自ら客を引く姿が、
恐怖に満ちて、でも、稼がなくては、という
気持ちが溢れ、なんと残酷な時代
だったんだろうと、終戦まだ、まもない頃
売春防止法案が、通過するまで、日本中の
あちこちにこの様な場所があり、いったい
どの位の女達がこの様な苦界にいたのだろうか、
防止法案は、２年後位に通過したそうですが
そこにいた女達の行く末は、どうなったのかと
思う、傑作な映画でした。
溝口健二監督は、この映画が公開された
２ヶ月後亡くなり、遺作になってしまいました。