第十八話

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わっ!!!えっ!!何!?




パッカリ開いたきよえのスーツケースには松菱UMA銀行の帯封がされている札束がびっしりと敷き詰められていた。




決平は目を丸くしたまま動かず、せつ子は開いた口からよだれを垂らしていた。要子ももちろんびっくりしたが、まずは冷静な銀行員の目で札束をざっと見てそこに4000万円あると確信した。




やっぱりきよえは銀行のお金を持ちだしていた。4000万円という大金を。今まではもしかしたらきよえではなく他の誰かがやったのではないだろうか・・・などとと淡い期待を抱いていたのだが、それもあっさりと崩れてしまった。この目の前の現実を受け止めければならない。




「要子ちゃん。。。やっぱり。。。残念だけど、きよえちゃんは銀行からお金を持ちだしていたんだね。このくらいの大金は僕にとっては大したことないんけど、一般ピープルにしては凄い金額だもんなぁ。いやー、びっくりだ。いやー、いやー、ありゃー」




「決平さん、このお金はべロスでの小学校設立のための資金なんです。これは事実です。横領したお金ではないんです。いいですね!!そこでよだれ垂らしているせつ子さんもいいですね!!これまでのことは忘れて下さい。変なこと途中で言ったりしないでくださいね。きよえと私は資金を運ぶためにべロスに来たんです!!とにかくそういうことです!!」




きよえは毅然とした態度で言い切った。そしてそそくさとスーツケースを閉じ、念の為透明のビニールテープでグルグルと巻いておいた。




「チーカムさんにはこのスーツケースの中のことは絶対知られてはいけません。とにかく普通にふるまいましょう」




「はい、要子ちゃん」


決平はやっと落ち着きを取り戻した。




要子たちが通された建物は2階にいくつか部屋があり、階段を少し降りた一階には小さなソファーと冷蔵庫があった。部屋にいても落ち着かないので3人はソファーに座ってチーカムが来るのを待つことにした。決平は冷蔵庫を勝手に開け、ビアベロを発見した。




「おっ、ビアベロがえーーっと20本は入っているね♪これはお客様用にどーぞってことなんだろうね。では早速頂こうかなっ!!」


要子が止める間もなく決平は缶を開け美味しそうにビールを飲んだ。あっという間に2本目にに突入した時にチーカムがやってきて決平を怪訝そうな顔で見た。




「お待たせしたわね。今ちょっと工房の方でいろいろやってたもんで。日本のアパレルブランドから刺繍を頼まれているものがあっててんやわんやなの。その会社はとにかく細かいことにうるさくて何度もチェックをするのよ。そのくせ、この工房にはめったに来ない。まったくヒドイ話ね」




チーカムは絞りたてのオレンジジュースをお手伝いの若い女の子に持ってくるように言った。




「えっと、何から話しましょうか」




「きよえさん、彼女はうちの工房の従業員のフィアンセなのよ。どこでどう知り合ったかまでは知らないんだけど。そういう約束をしたみたいね」




「私はきよえと同じ会社で働いていてとても仲良しなんですが、彼女がべロスに魅せられたこと・フィアンセがいたことまでは知りませんでした。ここ最近のことだとは思うのですけど」




「愛を深めるには1日あれば十分よ。ま、異国の地にいると余計盛り上がるのかもしれないけど。私も若いころはそういうこともあったわ」


チーカムは遠い目をしてオレンジジュースを飲んだ。決平は3本目のビールを冷蔵庫から出して飲んだ。珍しくおとなしくしていたせつ子だったが、落ちつきを取り戻した途端にお腹が空いてイライラしているようだった。




「私達はいきなり日本からいなくなってしまったきよえを探しにここまでやってきたのです」




「ほー、きよえさんは誰にも言わずに急にべロスに来たってわけなのね。そんなにアダモに会いたかったのね。あの必死さを考えるとそれも頷けるわ。あ、アダモっていうのがうちの従業員の名前ね」




「きよえのフィアンセはアダモさんというのですか。お年はおいくつなんですか?」




「たしか33歳だったと思う。見た目はもっと若く見えるけど」




「そうですか。それで、きよえはなぜガラナホテルからこちらの工房に来て、またさらにどこかに出かけてしまったのでしょうか?もうすぐ帰ってきますか?アダモさんはどこにいらっしゃいますか?」


要子はオレンジジュースを一気に飲み、まくしたてるように質問した。




「話すと長くなるから省略するけどいろいろあってきよえさんは出かけていったのよ。愛するアダモともう一人の日本人の男を助けるためにね。きよえさんは本当にいい人だわ。愛の為に命をかけてくれた」




「え???命をかける??そんな危険なところにきよえは行ったのですか?どこですか?私達も追いかけた方がいいのでしょうか?」




「いや、彼女にしかできない大仕事よ。危ないというより私もよく知らないところに向かってる。うちの召使が二人一緒だから安全だとは思うわ。あなたたちが行っても仕方ないからここで待つのが一番ね。そのうちきっと帰ってくる」




「はあ。。。。とにかく心配です。きよえの元気な姿を見るまでは落ち着きません。。。」




「きっと大丈夫よ。そう信じましょう」




「ところでアダモさんはどうしてるのですか?きよえがアダモさんを助ける為に、ということはアダモさんはどうしちゃったんですか??」




「別の部屋で眠っているのよ。後で連れていくけど、今すぐ行きたいかしら??」






グルグル~~、キュ~~~、キュキュ~~!!


せつ子のお腹の音が鳴った。轟音に近いものがあった。




「もういっぱい歩かされてお腹空いちゃったわよ。これじゃガリガリになっちゃうぅぅ。満さま、何か食べに行きましょう~~」




「決平さん、もしなんでしたらせつ子さんと二人でどこか行ってもらっても構わないですよ。私はせつ子さんほどはお腹空いてませんし」




「この近くにはお店はないよ。そんなにお腹空いているなら、今料理を作らせるからちょっと待ってて。アダモともう一人の男がいる部屋には食べ終わった後に連れていくよ」




「ありがとうございます。これでうるさいせつ子さんがおとなしくなります」




「せつ子、ホントは満様と景色がいいレストランでお食事したかったけど、我慢するわ~~。お料理何が出てくるのかしら~。せつ子の口に合うといいんだけど」




チーカムはキッチンへ行き、要子たちはそのままソファーでビアベロを飲みながら待つことにした。




「要子ちゃん、きよえちゃんはなかなかチャレンジャーな人なんだね。びっくりしたよ。アダモだか何だかの為に危険を顧みず助けようとしているなんてね。そもそも誰にも何も言わずにべロスに行っちゃうってのがびっくりなんだけどね~」




「きよえはおとなしいタイプではあったんですけど、いざという時は行動力があるんです。そう考えると今回の一連の行動も納得できます。お金のことに関して以外ですけど。あ、お金は小学校設立の資金でした」




「危険を冒してまで助けたいと思うってことは、アダモ君ともう一人の男はよっぽど大変な状態にあるってことだよね。っていうか、もう一人は朝密彦だよね!!」




「どう考えてもそうでしょうね。朝密彦さんもとんだ災難に遭ってしまったんですね」




「朝密彦は僕のライバルにはならないけど、知り合いではあるから心配だなー。後で部屋に連れて行ってくれるっていうから顔を確認できるけど。でもどうして巻き込まれたんだろう。取材で来ているだけのはずなんだけど。ま、そこが何にでも首を突っ込む朝密彦の悪いところ!というか、自分が大変な目に遭っちゃったら事件の解決も何もないんだけどね。やっぱり僕の出番ってことか~」




「ここで朝密彦さんに会えて、あとはきよえが無事に帰ってくれば私達がべロスに来た意味がありますね。きよえと私は小学校設立のための資金を無事に渡せばお役御免です」




「でもさ~、きよえちゃんってアダモ君と一緒になるんだよね??そうなるときよえちゃんはそのままこっちに残るのかなぁぁ」




「出来れば一緒に帰りたいですけど、二人の仲をさくわけにはいかないし。。。あとでアダモさんに会ったらよく聞いてみましょう。眠ってるって言ってましたけど、病気で眠っているんですかねぇ」




「きよえちゃんが命を懸けて助けたいと思うほど重病なのかねぇぇ。眠ってるってだけじゃわからないよね」


決平は10本目のビールに手を伸ばした。






数十分してチーカムがやってきて、その後若い女の子が料理を運んできた。生春巻きに揚げ春巻き、スープ、炒め物、焼き魚、いろいろな料理が並んだ。




せつ子は突然元気になって


「早く頂きましょう!!」


と箸を持って食べる体勢を整えた。




「これは普通の家庭料理よ。どーぞ好きなだけ食べてちょうだい」


チーカムはそう言った。




チーカムは少食なのか料理にはほとんど手を付けず、ビアべロを飲むこともなく、果物ばかり食べていた。料理は前日にガラナホテルて食べたものとほとんど変わらない、というよりむしろ美味しいと要子は感じた。ただ、泥水のような色のスープだけはどうにも口に合わずほとんど手をつけなかったのだが、せつ子はとても気に入ったようで器ごと持ち上げて一人でガブガブと飲んでいた。




食事が終わり、ベロコーヒーが出された。




「おねーさん、シュガーね~。よろしく~~。シュガーシュガー。たっぷりね~」


と決平は言ったのだが全く通じず、ふてくされながら通常のコーヒーを飲んだ。




「で、チーカムさん。アダモさんともう一人の男性のところに連れて行って下さい。もう一人の男性はこちらの決平さんのお知り合いだと思われます。日本では有名なルポライターで探偵としても活躍されている方なんです。顔をみればわかると思います。アダモさんにはきよえとのことをちゃんと聞きたいと思ってます」




「うーん、それはちょっと無理だと思うわ。何故だかは行ってみればわかる。さ、行きましょうか」




小さいチーカムに続いて要子たちは歩いた。せつ子はゲフッと言いながらしぶしぶ付いてきた。




アダモたちが眠っているという部屋は今まで要子たちが食事をしていた建物と別のところにあった。この工房は5つの棟からなっているようだった。かなり広い。チーカムが住む棟、刺繍工房、ゲストルームのある棟、住み込みの従業員たちの棟、事務所の棟。




チーカムは自分が住んでいる棟に要子たちを案内した。一階の一番奥の部屋でアダモと朝密彦は眠っていた。




「要子さん、今から部屋に入るけどびっくりしないでね。心の準備をしてから入ってちょうだい」




「はい、でもただ眠っているだけなのではないのですか?起こしちゃダメなんですか?」




「もうずっと眠り続けているのよ。そして見た目が変わってしまっている。。。。」




「見た目??」




「ここで話していても仕方がない。さぁ行こう」


チーカムは部屋のドアを開けた。




要子はおそるおそる部屋の中を覗いたがアダモたちは布団をかけているのでよくわからなかった。部屋の奥までゆっくりと入っていくと、チーカムはアダモと朝密彦の布団をはがした。




「あ!!!」


要子も決平もせつ子も一斉に声を上げた。アダモの顔には口ばしが生えていた。朝密彦の口は何となく尖っていた。人間なのに人間じゃない。とても冷静には見ていられない状況だった。




「きよえさんはこの二人を元の状態に戻したい一心で出かけて行ったんだよ。彼女がうまくやってくれて帰ってくればちゃんと元通りになるはずなんだ。二人がこのままじゃあまりにもかわいそうだ」




要子はきよえの愛の大きさを感じた。たしかに自分のフィアンセがこんなことになってしまったらいてもたっていられないはずだ。きっと同じような行動に出たと思う。




「ところでチーカムさん、一つ質問があるのですが。。。」




「何だい??」






「アダモさんの顔というか口が大変なことになってしまったのはよくわかりました。ただ、体全体から考えると顔が大きすぎるような気がするのですが。。。それと上半身の大きさに対して足が短すぎます。。。。いったいこれは・・・・」








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第十七話

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きよえは一体どれくらい待ったのだろうか。
また少し居眠りをしてしまったようだった。

すっかり雨も止んだようだが、外はまだ真っ暗で車も泥濘にはまったまま立ち往生してした。チーカムの召使い達が何度かトライしたものの、相変わらず車はびくともせずブー族の助けを借りるほか今のところ手だてはなさそうだった。
気温が だんだん下がっているのか、寒さと共に思っていた以上に体力も消耗している気がした。

「ブー族に会うのはスムーズにいったからよしとしなくちゃ」
この状況の中でこれ以上前向きな言葉を言うのは難しかった。

召使い達もとりあえず今は寝るしかないと言わんばかりに大いびきをかいて寝ているが、目が覚めてしまったきよえはこれ以上眠る事ができそうもなかった。

しかし、寒すぎて外に出る気にもならず、運転席からみえる真っ暗な景色をぼーっと見ていた。

すると、一瞬遠くで何かが光った気がした。
きよえは気のせいかと思ったが目を凝らして見ていると遥か遠くに小さな光が見える。

鞄に入れていた折り畳み式の双眼鏡を急いで取り出し目を凝らして見た。
双眼鏡は昔同僚の要子に誘われて行ったザ・セイフティエリアのコンサート会場で、懐かしい歌のオンパレードを聞いて盛り上がった勢いでTシャツと共に買ってしまったものだ。
ファンでもなかったきよえが突然目覚めたかのようにザ・セイフティエリアのコンサートグッズを買おうとしているのを冷静な要子が静止したが、リーダーのミスター・タマッキーのサインとシリアル入り100個限定の双眼鏡が無性に欲しくなり思わず買ってしまったのだった。
「要子、これやっぱり買っといてよかったわ。サンキュー、ミスター・タマッッキー。」


思い出にふけりながら、双眼鏡を覗きよく見ていると、その光はだんだん大きくなりきよえ達のいる方向に向かって動いているように思えた。

「えっ、火の玉?」一瞬頭によぎるとなんとも薄気味悪くなり、隣でいびきをかいている召使いの体をゆすって起こそうと試みたが、いびきは一向に止まず、まったく目を覚ましてくれそうな気配がなかった。

そんな事をしている間にも数個に増えた光がどんどんきよえ達のいる方向に近づいているようだった。さっきよりも若干はっきりした光は上に下にいったりきたりしながらゆらゆらと近づいてきている。

なんだあれはと思ったが、逃げる訳にもいかず、ただただきよえはその光を見守っていた。
光の玉はすでに大小さまざまな大きさで、何十個にも増えていた。
きよえはふと自分が小さな頃、母が昔田舎で見たという狐の嫁入りの話をしてくれたのを思い出した。
「ベロスでもそんな話があるのかしら。。。」

相変わらず光の玉は上下しながらきよえ達のいる方向に向かって近づいていた。

まだまだ遠くではあったが、目も慣れてきたのか双眼鏡を覗き込み、じーっと見ていると、だんだん人の輪郭が浮かび上がってきた。

双眼鏡の拡大ボタンをマックスにし、もう一度よく見てみるときよえは一瞬だじろいだ。
小さな子供がいると思い込んでいた行列の先頭にいたのは人ではなかった。

なんと猿がいた。
行列の先頭は金色の神輿で、その上には立派な大きな金の台があり、その上には顔が真っ赤で鼻が豚の様に大きい猿が立ち上がり両手でハーモニカを空に向かって掲げていた。

神輿をかついでいるのは人間のようだが、先頭の神輿の上にいるのは明らかに猿だった。
金の台の周りにも4匹の猿がいて、盆踊りのような踊りをしながら台のまわりをぐるぐるまわっていた。

猿の乗った神輿の後ろには、金色の台車の上に、これまた金のゴージャスな椅子が置かれ、その椅子にふてぶてしい顔をした大男がどっかり座っていた。男の顔は先頭の猿と同じで、何かを塗りたくり赤く染めていた。


集団の先頭がきよえの車まであと100メートル程の距離まで近づいた時、行列の動きが突然止まった。止まると同時にドーンという音とともにのろしが上がった。すると行列から忍者のような黒い服を着た数名の男が小走りで行列の先頭に立った。
その男の中に一人カラスのくちばしのような仮面をかぶった男がいた。カラス仮面の男が手でサインを送り、他の忍者男に合図を送っているようだった。

忍者男達がサインにあわせ華麗なフォーメーションを組みながらきよえ達の車へ近づいてきた。
あと10メートルという所まで忍者男が近づいて来た時、きよえのまわりでいびきをかいて寝ていた召使い達が次々と目を覚まし、奇声をあげ始めた。

忍者男達はきよえ達の乗る車を囲むとグルグル回り出し、カラス仮面の男が合図をすると車のドアを無理矢理こじ開けた。ものすごい怪力だった。

さすがにきよえもどうしてよいかわからず固まっていると、カラス仮面の男が召使いの一人を車の外に連れ出し、何かを言っていた。

連れ出された召使いは話が終わると物凄い勢いできよえの元に駆けつけると、きよえを車の外に連れ出した。召使いはカラス仮面の男と話した内容をきよえへ伝えた。


召使いの話によると、あのふてぶてしい男はブー族の酋長であった。先頭にいた猿はブー族の住む山にだけ住んでいる珍しい猿で、守り神として大切にされてきており、その中でも選ばれた猿達は、ブー族の専門の調教師により訓練を受け、酋長と共に生活をする事を許されているのであった。

召使いはブー族の住む山に生える草がどうしても必要だという事を伝えると、カラス仮面の男は急に物凄い早さで酋長の下まで後ずさりし内容を伝え、酋長からのメッセージを召使いに伝える為に、まるで昔流行ったジャイケルマクソンのダンスの様な動きをしながら召使いの下に戻って来た。

カラス仮面の男によると、酋長はハーモニカが本物である事を確認しているが、持ち主としてふさわしい人間であるのか確認しない限り、これ以上ブー族の住む山に足を踏み入らせる訳にはいかないと言っているそうだ。


きよえはカラス仮面の男に酋長と直接話がしたいと伝えた。
またもや物凄い早さで酋長の下へカラス仮面の男は後ずさりすると耳打ちし、ジャイケルマクソンのステップできよえの下に戻ると手招きをした。

きよえは深呼吸をし、カラス仮面の男の後を追いかけた。

行列がいる場所に戻ると、きよえ用に新しい赤い台車が用意され、忍者男達が台車の周りを囲み立て膝をしながら待機していた。
きよえはカラス仮面の男に促されるまま台車にのると、忍者男達がきよえの乗る台車をそっと押し始めた。

ついにきよえは酋長の下にたどり着いた。

「◎×☆★※△◎◎☆・・・」

酋長が何かをきよえに向かって言っているが何を言っているかさっぱりわからず困った顔をしていると、行列の先頭にいた猿が紙とペンを持って来た。

きよえは紙に「?」と書いてみた。

すると酋長はハーモニカを手に持ちハーモニカを吹くようなジェスチャーをした。

きよえは唯一知っている「きらきらぼし」を吹いてみた。
酋長の反応を見ていたが、ふてぶてしい顔つきがあまりにも変わらないので、咄嗟に思いついた振り付けをつけながらもう一度吹いてみた。
すると、酋長の反応は変わらないが、赤い顔の豚鼻の猿達がきよえの周りできよえにあわせて踊り出した。

すると酋長の顔つきが変わった。
目で何か合図すると、カラス仮面の男が酋長の下へ走り寄った。

カラス仮面の男は酋長に2つの旗を渡し、きよえと一緒にやってきた召使いに耳打ちした。

酋長が「◎」の旗を掲げると召使いが言った。

「GO~KAKU~~!!!!」(合格)





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第十六話

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どれくらい走ったのだろうか・・・何度も吐き気に襲われそして吐き続けたきよえは、ついに吐き疲れ、そして眠ってしまったようだった。


まわりは真っ暗、ただ車のヘッドライトだけが舗装されていないでこぼこ道を照らしていた。


車内では、チーカムの召使も隣で寝息を立てていた。


きよえは車の窓を開けた。すると冷たい空気が車内に入ってきて、きよえの意識をはっきりさせた。


かなり山を登ってきたのだろうか、外はかなり寒そうだ。




「あとどれくらいでブー族の集落に到着するんでしょうか」


チーカムの召使に聞いてみたが、首をかしげるだけだった。どうやら召使もどれくらいかかるのかがわからないようだった。




窓の外を見ても真っ暗、思い浮かぶのはアダモのことばかり。勢いでチーカムの工房を出てきたけれど、本当にクニタブなんていう草を見つけらるのかしら・・・


そんなことを考えていたきよえの頬に、ぽつりぽつりと雨があたった。そしていきなりバケツをひっくり返したような大雨が降り始めた。


きよえは急いで窓を閉めたが、すでに車内は雨でかなり濡れていた。


これがスコールね・・などと思っていたら、車がドスンと何かにぶつかり、そして止まった。


「どうしたの?」きよえは運転していた召使に聞いた


「水たまりにはまってしまったようです」
召使はハンドルを回したりアクセルを踏んだりといろいろと試しているようだったが、タイヤは空回りしており、びくともしなかった。

外は闇、大雨はまだ続いている。360度どこを見渡しても闇だった。
きよえは急に不安になった。このままずっと夜で、朝がこなかったら…そんな考えが頭をよぎっては消え、よぎっては消え、そしていつの間にか眠ってしまった。


ドンドンドン!! ドンドンドン!!
車の窓を勢いよく叩く音できよえは目が覚めた。
すっかり夜が明けていた。
外に目をやると、カラフルな布を頭に巻いた現地の男性が窓にぴったり顔をつけて何かを言っていた。
「○&%#$*??」
きよえには何を言っているのかさっぱりわからなかった。
召使の一人がドアを開け、外に出た。スコールのせいだろうか、湿気を含んだむっとした空気がどっと車内に流れ込んだ。
「$&#$%*@%…」召使が話しているのもべロス語なのか何なのか、きよえにはそれさえもわからなかった。
すると、急に召使がきよえを見て、そしてドアを開けた。
「どうやら、この辺り一帯がブー族の集落だということです。こちらの男性もブー族の人間です。」
暗闇の中走り続けた車は、途中大雨に遭いぬかるみにはまった。結局ぬかるみからは出ることはできず夜が明けたのだが、そこは何とブー族の住む集落であった。
しかし、布を頭に巻いた男と召使の間は、スムーズに話が進んでいないようだった。その男は何かを召使に向かって言ったかと思うと、向きを変えて歩き始めた。

きよえはチーカムの言葉を思い出した。確かブー族は周りから距離をおいて生活をしていると。そして、彼らに受け入れられるのは、オマダ王国の末裔か、オマダの紋章が入っているハーモニカを持っている者だけだということを。

きよえはハーモニカを手にして車を飛び出し、男を追った。男に追いつくと、目の前にハーモニカを差し出した。
すると男の顔色が明らかに変わった。きよえの手からハーモニカを奪い、きよえに向かって何かを言っている。しかし、きよえには彼が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
召使はすぐにきよえの後を追ってきた。召使と男はふたたび何かを話し始めた。
「このハーモニカが本物なのかどうか、ブー族の長老に見てもらって確認したいと彼は言っています」
召使がきよえに言った。ブー族の村は目の前、そしてアダモと朝密彦を助けるクニタブももう目の前にある。
しかし、この男の言っていることも100%信用することはできない。
ハーモニカを託してもいいのだろうか…。

きよえは腹をくくった。彼にハーモニカを託すことにし、きよえと召使はこの男が再びここに戻ってくるのを待つことにした。
もうこれしか方法はない。致し方なかった。



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要子は朝食をとるためにホテル1階のレストランに来ていた。
決平もせつ子もまだ起きていないのか、レストランにはいなかった。

コーヒーを頼み、レストランの中を見渡してみた。西洋人も多く、アジアの観光地にあるホテルの朝食、という風景だ。
しかし、要子はその風景になじむことはできない。今日はこれからきよえを探しに、市内の工房をしらみつぶしにあたっていかなければならない。
竹細工に刺繍に織物…この街には一体いくつ工房があるのだろうか。

「おっはよー!要子ちゃん!昨日はよく眠れた?いやぁ、このホテルのベッド、思いのほかよくて、朝までぐっすりだよ、、あ、お姉さん、コーヒーくれる?シュガーポットとミルクも一緒ね」
朝早くから相変わらずのテンションの決平であった。
「要子ちゃん、朝ごはん一緒にいいかな?」
一応は言ってはみている決平だが、すでにしっかり要子の前に座り込んでいるのだった。
「今日は長い一日になりそうだね。昨日美木さんがくれた地図、見た?あの丸印を全部回るのはかなりの体力勝負だけど、大丈夫かな?ま、僕は名探偵決平、それくらいのことは日常茶飯事だからね…」
「満さまぁぁぁぁぁ~~!!おはようございます!!朝ごはん、食べましょーー!!!
あれ、何であんたがそこに座ってるのよ!!満様のペアと言ったら私、せつ子と決まっているのは重々承知でしょ!なのにどうしてこれ見よがしに座っているのよ!さっさとどきなさいよ!!」
せつ子も決平に負けず劣らずのテンションの高さであった。
「いや、私が決平さんのところに来たのではなくて、決平さんが後でいらしたんですけど…」
「ぶつぶつ言ってないで、どきなさいよ!!」
そういうとせつ子は要子を押しのけ、決平の前に陣取った。
「さ、満様、ブレックファーストの時間ですよ!朝ごはんは一日の活力、たーんと召し上がれ!!」
まるで自分で朝ごはんを準備したかのような言い草のせつ子であった。要子は一瞬にしてせつ子に生気を吸い取られたような気分になった。
「せつ子ちゃん、昨日言ったけど、今日は要子ちゃんの友達を探さなければならないんだよ。その打ち合わせを朝ごはん食べながらと思ってたのに・・・あ、お姉さん、シュガーポットもうひとつ持ってきてよ。こんなんじゃ足りないからさぁ」
決平は誰に何を言っているのか、要子にはさっぱりわからなかった。
「満様、せつ子ガイドブックで調べたんですよ~今日はちょっと離れたブッチャーパークへ行ってみましょう!ブッチャーパークにはべロス中から集められた仮面が所狭しと飾られているそうで、一見の価値ありです!」
「せつ子さん、昨日も言いましたけど、私たちは遊びに来ているのではなくて、私の友人を探しにべロスまで来ているんです。決平さんは探偵として私が仕事を依頼したのであって、一緒に旅しようというのではありません。何度言ったらわかってくださるんですか?」
「…ったく、朝からうるさいわね、この女。いくらせつ子と満様が仲良しだからって、そういう僻みはないんじゃない?」
せつ子には何を言っても暖簾に腕押しのようだった。
「決平さん、では一時間後にロビーでお願いします。せつ子さん、お先に」
そう言って、要子は部屋に戻った。せつ子がいては、進む話もちっとも進まない。頭を切り替えて、今日の準備をしようと考えたのだ。

一時間後、ロビーで要子は決平を待っていた。エレベーターの扉が開くと決平が出てきたが、その隣にはせつ子がしっかりと決平の腕に自分の腕を絡めて付いてきた。
「要子さん、今日は私も一緒に行ってあげます。満様のお仕事をあなたが邪魔するのを放っておけませんからね!」
どう見ても邪魔しているのはせつ子であったが、ここで何を言ってもせつ子が聞く耳を持たないのはわかったいたので、そのまま知らんふりをすることに要子は決めた。

「しかし、相当数だね、工房っていうのも。べロス語がわからない僕たちには限界があるかもしれないね」
すでに及び腰になっている決平に、要子が言った。
「大丈夫です。きよえの写真を持ってきましたから、それを見せれば何か反応があるのではないかと…」
「さすが要子ちゃん!名探偵の助手、本領発揮だね!」
いつ決平の助手になったのか、要子には全く記憶にはなかった。


一軒、そしてまた一軒、美木がくれた地図についている丸印の上にバツ印が増えていく。べロスの太陽は容赦なく照り続け、3人の体力もどんどん消耗していった。
「満様、せつ子喉も渇いたしおなかも空きました。どこかに入ってちょっと休憩しませんか?」
「せつ子ちゃんがそういうなら仕方ないね。僕はまだまだ大丈夫だけど、レディーの申し出だもん、休まないとね。あ、パンケーキの店があるから、あそこでいいかな?」
見るからに一番バテテいた決平の足取りが急に軽くなり、パンケーキの店に向かって行った。

三人それぞれにパンケーキとビアベロを注文した。決平はここでも砂糖をポットごと頼み、さらにパンケーキにかけるシロップも瓶ごと頼んでいた。

運ばれてきたパンケーキは、お腹が空いていた要子にはとてもおいしそうに見えた。普段甘いものをあまり食べない要子だったが、このときばかりはすぐにパンケーキを口に頬張った。
「…」要子はパンケーキを口に入れたが、すぐにその味に辟易した。空腹は最高の調味料とはいうけれど、それも時と場所と、そしてメニューにもよるんだろうな、なんてことが頭をよぎった。
あまりの不味さに要子は我慢できず、そのままトイレに走って行った。
トイレは店の外にあり、要子は口に入れていたものをすべて出した。胸や胃がまだムカムカするが、トイレに籠るのも二人に迷惑がかかるので、すぐに出てきた。
すると、店の前の道を歩いていた小さなおばさんが、要子に話しかけてきた。
「あなた、ずいぶんと顔色が悪いけど、大丈夫?ツーリストよね、あなた?私、車を待たせているから、ホテルまで送るわよ」
「あ、ありがとうございます。でも大丈夫です。連れもいますし。」
「あら、そうなの?でも心配ね。あなたは日本人かしら?この前会った日本人も控えめで素敵な女性だったけど、日本人ってみんなそうなのかしら?」
「え?日本人に会ったんですが?」
「えぇ、うちで働いている従業員のフィアンセなのよ。」
要子は体に震えが出はじめた。もしかしたら、この小さい女性は探している工房の女性なのだろうか?
「その日本人はどんな方ですか?べロスで日本人を見かけることなんてあまりないものですから…」
「そうよね。彼女は『きよえ』という名前なんだけど、今事情があってうちの召使と一緒に出かけているのよ」
「きよえですか?きよえ!!実は私、きよえを探しにべロスに来たんです!!もっと詳しくお話聞かせていただけませんか?」
「んー、話すとかなり長くなるのだけど…もしよかったら、やはりうちの工房へ来て、そこでゆっくりお話しましょうか」
「はい、お願いします!他の二人も連れていってもいいでしょうか?」
「もちろんよ。そこの車で待っているから、連れていらっしゃい」

要子はパンケーキの不味さに感謝した。パンケーキがまずくなかったら、トイレに駆け込むこともなかっただろうし、道を行く小さいおばさんに会うこともなかっただろう。
「決平さん、緊急事態です!きよえが行った工房のちいさいおばさんに会ったんです!一緒に工房まで連れていってくださるそうなので、早く来てください!!」
「ちょっと、要子ちゃん、急にそんなこと言われてもまだパンケーキが…」
決平は残っていたパンケーキをすべて口の中に放り込み、シュガーポットを口の上で逆さにして砂糖を流し込み、、そしてシロップもごくごくと飲み干して店を出た。
せつ子もしめ縄のようなみつあみを振りまわしながらパンケーキを平らげ、決平に続いた。

小さいおばさんは、四輪駆動の大きい車の後部座席で待っていた。
「あなた名前は何というの?私はチーカム、刺繍工房をやっているのよ」
「要子といいます。きよえとは同じ会社で働いています。こちらは決平さんとせつ子さんです」
「初めまして、私が有名な名探偵、決平満です。以後、お見知りおきを」
そう言うと決平は名刺をチーカムに差し出したが、日本語で書かれた名刺をチーカムが読めるはずがなく、そのまま座席前のポケットにしまわれてしまった。

10分ほど車で行くと、「Marmeid」という看板が見えてきた。どうやらそこがチーカムの工房らしい。

「Marmeidもようこそ!ここで私は20年位刺繍工房をやっているの。奥の部屋にきよえの荷物が置いてあるから、そこでちょっと待っててもらえるかしら。すぐに行くから」
要子と決平、そしてせつ子の三人は、工房の一番奥にある建物に通され、そこでチーカムが来るのを待った。
建物にはいくつか部屋があるようで、部屋にはベッドもあった。要子は部屋のドアを開けて中を見回すと、見たことのあるスーツケースが目に入った。
きよえのものだった。
「決平さん!!このスーツケース、きよえのです!!確かにきよえはこの工房に来たんです!!」
要子は興奮し、きよえのスーツケースに近づき、そして手にした。
スーツケースは思いがけなく重く、その重さに要子はバランスを崩し、スーツケースに向かって倒れこんでしまった。
その衝撃でスーツケースが開いた。

中は、松菱UMA銀行の帯封がされている札束で埋めつくされていた。





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第十五話

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チーカムの工房から200キロのところにあるブー族が暮らす山。いったいどれくらいの時間で着くのだろうか。。日本の高速道路なら数時間で着くだろうが、ここはべロス。そういうわけにはいかない。


愛するアダモとの生活を夢見て銀行のお金を持ちだし、はっきり言って今までの人生を全て放り出してべロスにやってきたのに、今私はブー族とかいう人たちのいる山へ向かっている。思い描いていたものとは全く違う方向に向かっている。


ただ、運がよかったことに日本人の美木夫妻や朝密彦にはとてもよくしてもらい、いろいろ助かった。それだけでもよしとしなきゃ、ときよえは思うことにした。


それにしてもべロスの道路は田舎に向かえば向かうほどガタガタがひどくなっていった。工房から1時間もしないうちにほとんどジェットコースターに乗っているような状態になり、きよえの体はポンポンと飛び上がった。その度に吐き気が込み上げ我慢できなくなってしまった。


プリーズ、ストップ!!


と必死に声をだして車を止めてもらった。召使いたちはきよえの真っ青な顔に気付き一緒に車を降り、そのあたりに吐くように言った。きよえはトイレで吐きたいと思ったが、どう考えてもこの先トイレがあるような場所はないのでそのあたりに吐きまくった。


その後30分に一回は車を止め、吐き、を繰り返した。吐いた跡がずっと続けばブー族の山までの道筋

が出来るんだと、ボーっとした頭で考えた。


見渡す限り、草と土の光景の中を車は走って行く。途中チーカムが持たせてくれた蒸したお米と鶏を焼いたものをみんなで食べたのだが、それを食べては吐きを繰り返して挫折寸前だった。でも、それを思い留まらせたのはアダモと朝密彦を助けたいという気持ちだけたっだ。


きよえは常に車の中で飛び上がり天井に頭をぶつけてたんこぶが出来てしまい、満身創痍の状態だったが、不思議なことに召使いの二人はほぼ動くこともなく涼しげな顔をしていた。




ガラナホテルのロビーで話をしていた要子たちだったが、せつ子がお腹が空いたと騒ぎ出した。


「あ~~、もうお腹空いて死にそう!!ガリガリになっちゃうわよーー」


美木はせつ子の騒ぎぶりを見て

「みなさん、そういえば夜ご飯食べていないんですよね??べロスにもいろいろ美味しいお店があるのですが、今日はもう遅いのでここのホテルのレストランに行きましょう。こちらも結構いけますよ」


「そうだね~~。僕喉渇いちゃったし~。米焼酎飲みたいな~~。でもないかぁ」

決平は一番先にレストランへ歩き出した。


美木はメニューを見てから少し考え、ウエイトレスにべロス語で何やら相談をした。

「みなさん、べロスは初めてなんですよね??それなら万遍なくべロス料理を楽しめるようにいろいろなメニューを少しずつ盛り付けてもらうようにお願いしたんですが、それでいいですか?」


「女の子ってぇ~~、いろいろちょこちょこと食べたいもんだから~それでおねがいしまーす」

とせつ子は機嫌が直ってきた。


「あ、美木さん。せつ子ちゃんは大食いだから大盛りでお願いします。夜中に腹が減って大騒ぎされても困るから」


「わかりました。大盛りですね。基本的にべロス人はあまり食べないし、観光客に多いヨーロッパ人もこのご時世ダイエットに関心があるのでそんなに食べないんですよね~。だからせつ子さんは貴重かもしれません。お店にとっては嬉しい限りですけど。あ、あと飲み物はビアべロでよいですか?さっかく決平さんもTシャツ着ていることですしね。ここのホテルではアルコールはビアベロかあとはワイン、カクテル、ウイスキーですので」


テーブルへさまざまな料理が運ばれ、ビアベロと大量の氷も置かれた。


「では、カンパーイ!!これからいろいろ大変でしょうけど、今夜はとりあえずしっかり食べてゆっくり寝て明日から動きましょう」


せつ子はガツガツと食べまくり、決平は相変わらず大量お砂糖をビアベロに入れて飲み、要子は料理より氷入りのビアベロを堪能した。


美木は夜は18時以降は食べ物を口にしないと決めているので、最初のビアベロを一口飲んだ後は水だけにしていた。美木の妻胡弓はその日は別のホテルでのダイエットイベントの講師をしていてそのままそのホテルに泊まるということだったので、要子たちと会うことはなかった。


「ところで、美木さん。きよえたちが行ったという工房って何なのでしょうか??」


「うーん、私もその場にいたわけじゃないからわからないんですよね。工房と言ってもたとえば織物の工房なのか、竹細工の工房なのか。。。織物の工房はたくさんあるんですよね。小さいおばさんもたくさんいるし。。要子さん、きよえさんから何か聞いたりしたことありませんか?」


「いやぁぁ、ないんですよね。きよえがべロスに興味を持っていたということも今回初めて知ったばかりなんです。そういえば、あのお土産はべロスのものだったんだな、という程度で」


「そうなると、片っ端からあたっていくしかないですね。もう少し早くこちらにいらしていたらこのホテルで会えたのに残念です」


「そうなんですよね~~~。探偵業界においてそこが重要なんですよ!!ちょっとの時間差があとで何倍もの手間や失敗につながるんです。ですから、私のモットーはスピードと情報。これに尽きるわけです。あ、おねーさーん、プリーズ・シュガーね~~。たっぷりね~~」

決平はビアベロをまたおかわりした。


美木は一度部屋に戻り、地図を持って来た。


「要子さん、これはこのあたりの地図です。工房に丸印をつけておいたのでこれを見ながら明日行かれてはどうでしょう」


「ありがとうございます。今日お会いしたばかりなのにこんなにいろいろ親切にして頂いて。初めてのべロスで日本人の方に、というかこんな有名な方に親切にして頂けるとは思いもしませんでした」


「いやいや、気にしないでください。同じ日本人同士なんですから」


「ところで~、明日私は満様といろいろ観光に行きたいんだけどぉぉ」

大盛りを平らげて満腹になったせつ子が割り込んできた。


「せつ子ちゃん、観光するなら一人で行ってよ。僕は探偵としてきよえちゃんを探しにきたんだから明日は工房めぐりをするに決まってるでしょ!!」


「ええええ、そうなんですか~~~。せつ子満様とのバカンスを楽しみにしていたのにぃぃ」


「じゃあ、イケメンの美木さん。私をどこかに連れて行ってくれませんか~~?」


「スミマセン、明日はダイエットイベントがあるので一日中かかりきりなんです。もしよかったらせつ子さんもいらしてみたらどうですか?と言っても私は忙しいのでお世話はできませんが」


「せつ子は太ってないから結構です!!仕方がないので満様と一緒に工房めぐりをします」


「せつ子さん、私と決平さんはきよえを探しにここまで来たんです。その邪魔だけはしないで下さいね。今夜決平さんとどうしようが構いませんが、とにかく決平さんの仕事の迷惑になるようなことだけはしないで下さい。私からのお願いはそれだけです」


「ま、今日は遅いですし、これでお開きにしましょう。明日すぐにきよえさんが見つかればいいですけど、そうもいかないでしょうからしっかり体力を蓄えておかないと。とにかくべロスは暑くて湿気がまとわりつくような感じで、体力の消耗は日本より激しいと思いますよ」


要子たちはレストランを出て部屋に戻った。

決平はせつ子を振り切り、自分の部屋のカギを閉めた。


要子はベッドに横になっていろいろと考えていた。

きよえたちが行った工房さえ見つかれば、すぐに会える。そしてどうしてきよえが誰にも何も言わずべロスに来たのかを知ることが出来る。


横領疑惑のこともはっきりする。


さっき食べたべロス料理のスープがどうにも口に合わず、ビアベロを飲みなおした。そして日本から持ってきた味付け海苔をパリパリと食べた。


やっぱり日本がいいなと思う。まだ数時間しかべロスにいないのに日本が恋しくなった。仕事のことも気になる。帰りはきよえと一緒に日本に戻りたいと思った。





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第十四話

テーマ:
いびきをかき眠り続けている朝密彦をきよえとホテルのスタッフがチーカムの車まで運び、汗だくのきよえも車に乗り込むと、チーカムは運転手に車を出す様に目で合図した。

「きよえ、密彦の鼻にこれをつめてあげてちょうだい。」

チーカムはハーブの様な独特の香りがする草をきよえに渡すと、人差し指と親指で草を揉む仕草をした。

きよえが不思議そうな顔をしていると、チーカムが草をちぎり、指で揉み朝密彦の鼻の穴へ強引に詰め込んだ。

「毒をぬくのよ。でもこの草では効果があまりないみたいなの。」
チーカムは悲しそうな顔をした。

そんな話をしている内にチーカムの工房に着いた。


工房に車が到着すると、チーカムの召使と思われる男性達がとても手際よく眠っている朝密彦やきよえの荷物を部屋に運んだ。

「きよえ、この工房の奥にゲストルームがあるからそこを使ってね。アダモは離れにいるから後で案内するわ。」

チーカムはそう言うと工房と別の棟へ消えていった。


きよえが案内された部屋は、刺繍工房の奥にあった。

工房では遅い時間にもかかわらず、たくさんの若い女性達が刺繍をしていた。
とても鮮やかな糸を使い、それはそれは素晴らしい刺繍だった。

この刺繍に魅せられてベロスに来たのがすべての始まりだったんだときよえは思った。


きよえが横の通路を通るのを全く気にする様子もなく、女性達は一心不乱に刺繍を続けていた。

その中でもリーダー格と思われる女性がチーカムに呼ばれ、きよえを部屋へ案内した。


案内された部屋にはテレビもなく、音の大きさの割に全く涼しくならないクーラーと大きなベットがあるだけだった。
きよえは動きやすい服に着替え蚊取り線香に火をつけると、部屋でチーカムが来るのを待った。


アダモのそばにいられると思うととても嬉しかったが、彼と会話をする事すらできないのかと思うと逆にとても虚しくなった。きよえは急いで彼からハーモニカをもらった日のことを思い出し、不安をかき消した。


しばらくするとチーカムが部屋へきよえを迎えに来た。
彼女はきよえの手を掴むと無言で離れに向かった。


離れの前に来るとチーカムは立ち止まり、なかなか部屋に入ろうとはしなかった。
思いつめた様にきよえを見つめると、とても悲しそうな顔で話し始めた。

「きよえ、今のアダモはあなたの知っている昔のアダモじゃないの。なかなか言えなくてごめんなさいね。彼を見ても決して悲しまないで。きっと毒がぬければ彼も目覚めて元に戻る事ができると思うの。」
そう言うとチーカムはきよえをアダモの部屋へ入れた。

最初きよえにはチーカムの言っている意味がよくわからなかったが、アダモの顔を見て納得した。


アダモの顔には鳥のようなくちばしが生えていた。
寝息も小さな音だが鳥の様にピーピー言っている。


きよえは予想外な展開に言葉を失った。
噛み付かれて眠っているという事だけでも映画の中の話の様で信じる事ができなかったのに、愛する人にくちばしが生えているこの現実を見て絶句してしまった。

ベロスに来てから経験した事のないような不思議な体験をしてきたが、こんな事が自分の身に起こるとは未だに信じられなかった。夢でも見ている気分であった。

チーカムは心配そうにきよえを見つめていた。

「3日前から急に生えだしたの。もう私も驚いてしまって。どうにもならなくてあなたを探したのよ。」

チーカムは一体私にどうしろと言うのだろう。

「きっとこのままだと密彦にも同じ事が起きると思うわ。噛み付かれた毒がこの様な事を引き起こしているんだと思うの。」

密彦にもくちばしが生えてしまう?

「色々手を尽くしてやっとわかったのは、ここから200キロ北へ向かった所に昔オマダ王国が所有していた山があって、そこにはブー族という民族が住んでいるらしいの。」

「ブー族?」

「そう、ブー族よ。ベロスに住む私も知らなかったの。彼らが山から私達が住んでいるこの土地へ下りてくる事は決してないそうよ。」


チーカムはアダモが眠り始めてから、自分の知っているあらゆる医者を呼び診察させた。しかし彼を目覚めさせる事は誰もできなかった。

チーカムが途方にくれていると、工房で働く女性の一人がチーカムに自分の祖母に彼を一度見せたらどうかと言ってきた。彼女の祖母は祈祷師だという。
病院で治療ができないと言われた人たちをたくさん助けてきたという。
チーカムはスピリチュアルな事は基本的に信じるタイプではなかったが、藁をもつかむ思いで彼女の祖母に会う事を決め、自分の工房に呼び寄せた。

アダモがあの状態になったのはやはり体中にまわってしまった毒のせいだが、それは毒というよりはオマダ王国の末裔にふりかかる呪いそのものであり、噛み付いた男も人の形をしているが、この世のものではないという。

山で暮らすブー族は彼ら特有の独特な文化を持ち、ひっそりと暮らしてきたようだ。彼らの生活は自給自足を基本としていて、病院もなく医者もいない。病気も全て自分達で治すのだ。彼らは治療に薬草を使う。不思議とその薬草は他の土地では決して育たず、たとえ育ったとしても彼らの山で育ったものと同じ効力を発揮しないそうだ。

彼女曰く、アダモの体にまわった毒を抜く為にはブー族の山で育つ薬草の一つであるクニタブという草の赤い実を鼻につめ、葉を煎じて飲ませる意外方法はないそうだ。
密彦の鼻につめた草は、本物のクニタブを手に入れるまで少しでも毒の進行を遅らせる為に使えと祈祷師である彼女からチーカムへ渡されたものだった。


「ただ、その草が生えている場所はブー族の山にある崖の上でとても危険な所だそうよ。おまけにブー族は他の民族が山に立ち入るのを許さないから彼らの山に入って崖に辿り着くのも至難の技らしいのよ。とても危険だわ。」

チーカムはきよえの手を握り、話を続けた。

「唯一彼らに受け入れてもらえるのはオマダ王国の末裔か、彼らに代々伝わるハーモニカを持っている人物らしいの。そう、きよえ、あなたよ。」

きよえは自分がもらったハーモニカは一体何なのか、この国は何故こんなに何かとハーモニカなのかと驚いたが、乗りかかった船はやはり途中で降りる事はできないのだと痛感した。


「わかった。チーカム、私行くわ。」

「でも、きよえ、本当にこの方法が効くのか確信はないのよ。だって今まで経験した人を知らないんだもの。本当に行ってくれるの?あなたの持つハーモニカでブー族が受け入れてくれるかもわからないのよ。」

「でもチーカム、眠っている彼らを放っておくわけにいかないもの。私やってみるわ。」

チーカムはきよえに車の鍵を渡した。
「きよえ、私の召使い達を連れて行きなさい。車も使っていいわよ。」

「チーカム、ありがとう。」



きよえは一度部屋に戻り急いで支度をし、運転手としてチーカムの召使を2人連れブー族の住む山に向かい出発した。



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