ゆっくりと振りかえって
ひとりの女性が僕を見たんだ
はっとさせられた
ウエストのくびれを強調させる濃紺のジャケット
白いひざ丈のスカート COACHのバック
ミッドランドスクエアシネマ
映画の上映が終わったのが夜の11:10
この時間になるとエスカレーターが使えず
エレベーター前は人でごったがえす
君は僕の目の前にいた
誰とも話してないから君はひとりで
映画を観てたんだ 僕と同じだね
10分ぐらい待ってエレベーターに乗りこんだ
君が僕の後ろにいる
僕が振りかえると また目があった
何処かであったかな
Facebookでつながってる人かな
声をかけようかどうしようか
僕はためらった
地下にエレベーターが着いて扉が開いた
地下から名鉄電車ホームにつながる通路が閉まっていた
だから階段で地上に上がろうとして
階段を5段あがったところで歩いている君を見た
君と目があった 三度目だった
もうためらわない
僕は足を止めて5段上がった階段を
ゆっくりと降りはじめる
君も歩くのをやめて
僕が近づいてくるのが見える
雨が降った後の夜の香りがする